小説『黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第二四話

 リンディ提督たちと別れ、一旦家に戻り食事と睡眠をとったのち再び公園を訪れた、

「この魔力反応。フェイトか?」

「さすがだね。葵」

「フェイト! お願いだ! もうやめよう! 葵が、葵が全てにけりをつけてくれる。だから!」

 アルフが必死にフェイトを説得する。これでこちら側についてくれれば楽なんだが。

「アルフ。ごめんね。私は、あの人の娘だから」

 悲しげな表情を浮かべながらアルフの願いをけったか。それだけの思いを持って母を愛するか。

「葵。いっしょに、私と一緒に来て」

「・・・何を言っている?」

 フェイトが言った言葉に私は驚愕した。

「母さんがいってた! 葵は管理局にこき使われているんだって! 葵をこのままほおっておくと、葵が死んじゃうんだって! 私は、私は葵がいないなんて嫌!」

「・・・・(人の一番弱い部分をつくか。どこまで卑劣で下衆なんだ)」

「だから葵。今度はわたしが助ける番。いっしょに来てくれれば私が護ってあげるから、だからお願い!」

 このまま乗り込めば作戦などを踏み倒して【不の者】を叩ける。だが、どうする・・・・

「ダメだよ!」

 すると、後ろからなのはとユーノが現れた。

「・・・なのは」

「葵君。ここはわたしが!」

 決意に満ちた目。吹っ切れたような、覚悟を決めたような。いい目をしている。

「分かった」

 そういって私は一歩下がった。

「・・・なのは、どういうつもり? 私は葵を助けるんだ」

 一瞬フェイトは悲しい表情を見せた。だがフェイトもフェイトで私を助けるという【不の者】によってふきこまれた情報を信用しているんだろう。だが、それでも決意をした眼だ。

「フェイトちゃん。少しお話しない?」

「話す必要なんてない。私は、葵を助けて、母さんの笑顔を取り戻すんだ。邪魔をしないで」

 そう言ってフェイトはバルディッシュを構えた。

「そんなのずるいよ! フェイトちゃんは葵君を連れて行こうとしてるんでしょ! わたしだって葵君とずっと一緒にいたいもん! そんなの許せないよ!」

 あれ? 論点だんだんずれてません?

「きっかけはジュエルシード。だから賭けよう。お互いが持っているジュエルシード全部を」

 全部のジュエルシードをかけるか。それだけ互いにk「そして葵君を!」・・・・はい?

「待てなのは。今私の耳が確かなら私をk「やっぱり戦うしかないんだね。いいよ。全部かけよう。お互いのジュエルシードと葵を!」・・・もういいです。好きにしてくれ」

 私がorzとなっているのをよそに彼女達は互いのデヴァイスを構えて互いの出方を探らあっていた。

「あんたも大変だね。でもフェイトを不幸にすんじゃないよ」

 犬型で私の肩にポンッと前足をのせてきたアルフ。その気持ちだけでも十分ありがたい。

 落ち込んでいると、二人は空へと飛びあがったようだ。

「ありがとうアルフ。もう大丈夫だ。それと無論だ、二人とも守り通すさ」

「そうかい」

 そう言って私とアルフ、ユーノは空を見上げる。

「いいの? なのはに任せて」

「いいさ。あの目を見ればな」

「でもいいのかい? フェイトは強いよ?」

「以前のなのはなら負けていただろう。だが、彼女には魔法の才能がある。あとはどれだけ経験を積むかが問題だった」

「そうか。だから君はなのはにつきっきりで訓練してたんだ!」

「鍛えるのはしんどかった。基礎体力から全てを底上げしたからな」

 なのはは運動が下手なんてものじゃない。運動音痴だ。だから基礎体力からの底上げが必須だったため短時間の底上げは無理だった。だから、アースラの訓練施設を使いその無理を無茶で押し通すしかなかったんだ。

「じゃあ今は?」

「正直分からない。これが答えだ」

「どっちが勝ってもおかしくない。ってことだね」

「あぁ」

 なのはが勝てばプレシアが何らかの形で介入してくるのは見えている。たとえフェイトが勝ってもフェイトを追跡するか、私が座標を教えればすべて済む。どっちにしろ決戦は近い。

空を見ると、黄色と桃色がぶつかり合っていた。

 決戦前の序章曲を奏でるように。


SIDEフェイト


「速い!?」

 最初の方こそ互角だった。いや、むしろこっちの方が有利だったのに今では形勢が逆転されていた。

 それに速度の方も私について来れるぐらい速くなってる。なんで!?

「ディバイン・シュート!」

「くっ」

 それに接近戦にも慣れている。これほどの魔導師なんて・・・いた。

 そう、身近にいた。なのはと私の近くにいる最高にして最強の魔導師が。

(葵だ。葵に教えてもらったんだ)

 教えると言うことはその人は少なくても教える人間よりレベルが上じゃないといけない。それも一段階ぐらいじゃない、二、三と最低でもそれぐらい。そんな人、なのはの魔力を考えると少ない。でも、葵ならやってのける。

(ずるい。私だって教えてもらったこと無いのに!)

 よく考えるとなのはは、いつも葵と一緒にいる。

(ずるい)

 それだけじゃない。学校というものも一緒だ。

(ずるいずるいずるい)

 そうだ。なのはのそばには葵がいる。いつでも、すぐに守ってもらえる。

「・・・ずるい」

「え?」

「ずるいよ、なのは!」

 そうだ、なのははずるい!


SIDE Out

SIDEなのは


「・・・い」

「え?」

フェイトちゃんが何か言ったけど、なんて言ったんだろう。

「ずるいよ、なのは!」

「な、何がずるいの!?」

 フェイトちゃん、なにいってるの!?

「いつもいつもいっつも、葵がなのはのそばにいる! いつも葵が護ってくれる! それに今なのはがここまで強くなったのだって葵のおかげなんでしょ!?」

「そ、それは・・・」

「私だって葵のそばにいたい。葵に護ってもらいたい! だから葵を連れて行くんだ! じゃまをしないで!!」

「・・・・ムッ」

 フェイトちゃん。それは自分勝手っていうんだよ?

「・・・・フェイトちゃんだって。フェイトちゃんだってずるいよ!」

「え?」

「フェイトちゃんは葵君に怪我を治してもらったり、ジュエルシードが暴走したときだって助けてもらったり、頭なでてもらったり、わたしだってしてもらったことないこといっぱいしてもらってるの!」

「そ、それは・・・」

「わたしから見たらフェイトちゃんの方がずるいの!」

 そういってわたしは砲撃を放つ。

 そしてまた、戦闘を開始しする。それは最初の時より白熱してたと思うの。

 すると、両手が金色のバインドで拘束された。

「え!?」


SIDE Out


「おや?」

 こちらから見ると、なのはが金色の何かによって両腕か拘束されて自由が利かなくなっている。

「あれは!?」

「知っているのか、アルフ?」

「ライトニングバインド。相手を拘束する魔法だ。つまりその後に来るのは・・・」

「フェイトの一撃必殺を確実に当てるための布石か。でも手を出しちゃだめだ」

「でも、あれじゃあなのはがやられちまうよ!」

「それでもだ。あれはなのはとフェイトの真剣勝負。神聖な一騎打ちだ。それを邪魔することは許されない」

 ユーノの方を見ると、ユーノも悔しそうに見ている。だが、この勝負がどういうものかを知っているから手を出さない。

「僕だって・・・・本当はなのはに手を貸したい。でも、それじゃあ意味がないんだ。今回はなのはとフェイトの真剣勝負なんだ」

「あぁ。それに言ったろ。なのはも成長しているんだ」

 おそらくここで手を出そうとしたらなのははそれをいらないと言うだろう。まだ負けたわけじゃない。なのはの眼を見ればそれがわかる。

「でも、あれはまずいんだよ!」

「アルカス、クルタス、エイギナス」

 フェイトの詠唱が始まると同時に今までとは比べ物にならないほどの大きさの魔法陣が展開される。

「疾風なりし天神、今導きの元へ撃ちなかれ」

 すると、いくつもの球体状のプラズマが現れた。その数はす十とも数百とも数えられる。

「バルエル、ザルエル、ブラウゼル」

 すると、さらにその魔力が強くなっていく。

「おいおい、あれってまさか・・・・」

「フェイトの最強魔法だよ」

 あれが、フェイトの・・・

「フォトンランサーファランクスシフト」

 そしてフェイトが命令を下した。

「撃ち砕け、ファイア!!!!」

 すると、いくつもの雷の矢がなのはに向け放たれた。

 なのはは抵抗できずにそれを喰らった。

「なのは!!」

 ユーノがそう叫ぶ。だが、フェイトの攻撃はまだ続く。いくつもの小規模の爆縁が広がり、さらに追い打ちをかけるようにまたいくつもの雷の矢が飛んでくる。

 そして、フェイトの攻撃がやむ。

 フェイトもフェイトでかなり魔力を消費したらしく肩で息をしていた。

「ん? フフフッ」

「なにがおかしいんだ!?」

「いや、フェイトの攻撃もすごかったが、それをまともに受けて、耐えきったなのはもすごいと思ってね」

「「え!?」」

 私が爆煙の上がっているところを見ると、アルフとユーノもそれにつられてみる。

 爆煙は次第に晴れて行き、そこからは、

「いたぁ〜〜〜い!!」

 多少ボロボロになっているなのはだが、みたところ、それほどダメージを喰らっていないようにも見えた。

「バインドって撃ち終わると解けちゃうんだね。今度はこっちの」

(divin)

 レイジングハートが砲撃のスタンバイに入り、

「番だよ!!」

(bastard)

 放たれる桃色の砲撃。

 フェイトも余ったランサーを集め魔力弾としてなのはの砲撃に対抗するが、一瞬にしてなのはの砲撃に飲み込まれる。

 急遽フェイトもバリアを張るがやはり、先ほどの攻撃で魔力を使い果たしたのか、押されている。

「くぅううう・・・(なのはも耐えきったんだ。私だって耐えて見せる!)」

 ディバインバスターを耐えきったフェイトだったが、その直後に、桃色のバインドによって両足両腕を拘束され固定された。

「バインド!? ッ!!」

「受けてみて、ディバインバスターのバリエーション!」

 なんとか抜け出そうと試みようとするフェイトだが、やはり、先ほどの魔力の消耗が激しいのか、抜け出すことができない。

「これがわたしの全力全開!」

 そして今まで見たことのない大きさの魔法陣とも力の収束が始まった。

「あ、あれって・・・・」

 かという私も驚いている。あれは、確実に今のフェイトにはきつい。

 それでもお構いなしにまだ増大し続け、攻撃準備を整える。そして、その時が来た。

「スターライト・ブレイカァアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 まばゆい桃色の光がフェイトめがけ一気に駆け抜けた。

「明らかにオーバーキルだろあれ・・・・」

 そのオーバーキルの魔法はフェイトを飲み込み、さらにフェイトを突き抜け海に直撃。

(ジャッジメントより・・・いえ、止めよう)

(ま、マスター! なのはちゃんのあの技、ギュリノース・ブレイカーの35%相当と一緒です!?)

「・・・・・あの子は将来破壊神でも目指すのか!?」

「そ、そんなにすごいのかい!?」

「35%もあれば一国の軍隊を壊滅状態に近いことができる・・・・」

「「・・・・・」」

 まぁ、そうなるよね。私も驚きを隠せない。それを放った子が若干9歳だ。私がこの意気にたどり着いたのは14だぞ。

 そして、砲撃が収まり、フェイトはそのまま海へと落下。だが、海に入る前になのはが救出した。

「・・・・あの子が20になる時、私を追いぬく確率が出てきたな」

(はい、マスター。それと)

(なのはちゃんを怒らせないようにしましょう)

「あぁ、怒らせたらあれが自分に来ると思ったら私でも怖いぞ・・・」

 あれって非殺傷設定だったよな。あれ解除すると・・・・止めやめ。今背中に変な汗が出てきた。


SIDEなのは


 ギリギリのところで、フェイトやんの救出に成功。

「フェイトちゃん! フェイトちゃん!」

「ん・・・・」

 すると、フェイトちゃんがうっすらとだけど、目を開けた。

「・・・・そっか、私、負けちゃったんだ・・・」

 でも、フェイトちゃんの顔はどこか満足そうだった。

「フェイトちゃん。葵君はね、わたしのこともそうだけど、フェイトちゃんのことも心配していたんだよ?」

「え?」

「ジュエルシードを六つ封印した時あったよね?」

「うん」

「あの時管理局の人はフェイトちゃんが弱ったところを捕まえればいいって考えてたの」

「そうなんだ。でも、作戦だったら正しいと思うよ。私は敵だったもん」

でも、あの時わたしは命令を無視してでもフェイトちゃんのところへ行きたかった。でも、心のどこかで戸惑っていた。ううん。あの場所にただ行くのが怖かったのかもしれない。

「でもね、葵君は迷わず行ったんだよ。友達を、大切な人を護るのに理由なんかいるのか? って言ってね」

 その時の葵君はかっこよかったな〜。

「葵が?」

「うん。そんな葵君の気持ちを分からないで自分勝手なこといったでしょ? だから、その、頭に来ちゃって」

 そう。葵君は自分と関係ある人なら自分のことなんてお構いなしでその人たちを護る。そんな人なんだよ。

「葵君にとってみれば、葵君は大切な人たちを護る。それだけの理由・・・でも、難しい理由で戦っているんだよ。それにわたしやフェイトちゃんなんて関係ない。葵君なら迷わず二人とも守るって言うんじゃないかな?」

「そうだね。葵なら絶対そう言うね」

 すると、フェイトちゃんが、

「ねぇ、なのは。葵は許してくれるかな?」

「ん〜。どうだろう。心配をかけさせたという点では起こると思うけど、それ以外は起こらないんじゃないかな?」

 葵君は大切な人が傷つくところを見たがらない。だから、その点では起こるかもしれない。けど、それ以外は、怒らないと思うな。

 そう思っていると、葵君はあの白い翼と黒い翼をはばたかせながら、ユーノ君、アルフさんがこちらに向かってくる。

「フェイト」

「・・・ごめんなさい!」

 そういってフェイトちゃんは頭を下げた。

「はぁ。まあ分かっているならいいが、あまり心配かけさせるな。あと、無事でよかった」

 そういって葵君はフェイトちゃんを抱きしめた・・・って

「えぇえええええええー!!!!」

「あ、葵!?」

「よかった。もう本当に心配かけさせるな。無茶をするな。いいな?」

「うん。ホントにごめんなさい」

 そういってフェイトちゃんは葵君の胸の中で泣き始めた。

 ぶ〜〜〜〜。こ、今回だけなの! でも、うらやましいな。


SIDE Out


 フェイトがある程度落ち着き、アースラへ向かおうとしたその時、

―ズカアァアアアアアアアン

 あの雷がこちらめがけて落ちてくる。

「(エクスは間に合わない)精霊結界発動!」

 精霊結界。精霊が使える結界の一種で、通称絶対防壁と呼ばれている。属性攻撃(火、水、雷などの自然系攻撃)であれば完全に防ぐことができる。ただ物理攻撃などにおいてかなり弱い。

 それをなのは達を護れるぐらいの大きさにして、雷を防ぐ。

「デヴァイスなしで障壁を!?」

 ユーノが驚くが、ユーノ。以前にわたしはこちらの人間ではないといったからそれで押し通せるか?

 それよりも!

「・・・・やられたか」

「え?」

「あれはおそらくただの目くらましだろう。目的はジュエルシードの確保。目的は達せられたようだ」

「葵。なんで、母さんはこんなことを・・・・」

「分からない。ただ、君は君の母親を信じろ。以前も言ったと思うが、たとえ母親にひどいことを言われても自分の意思を強くもて。いいな」

「うん」

 そういってフェイト達を連れアースラへと戻った。

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