第二三話
SIDEアースラ
アースラにはいつものアースラメンバー(フェイトは治療中)にリーゼロッテがいた。
リン「フェイトさんはリンカーコアにひどいダメージを受けているけど命に別条はないそうよ」
な「わたしの時と同じように闇の書に吸収されちゃったんですね」
ク「アースラの稼働中でよかった。なのはの時以上に救援が速かったから」
ロ「だね」
エイ「二人が出動してからしばらくして、駐屯上のシステムがクラッキングであらかたダウンして・・・。それで指揮や連絡が取れなくて。ごめんね。わたしの責任だ・・・」
ロ「んなことないよ。エイミィがすぐにシステムを復帰させたからアースラに連絡が取れたんだし」
そういってロッテはモニターを起動させた。そこに映っていたのは仮面の男がフェイトのリンカーコアを抜いている映像だった。
ロ「仮面の男の映像だって残せた」
リン「でもおかしいわね。向うの機材は管理局で使っていのと同じシステムなのに、それを外部からクラッキング出来る人間なんているのかしら?」
リンディは何かおかしいと考え込んでいると、
エイ「そうなんですよ! 防壁も警報も全部素通りでいきなりシステムをダウンさせるなんて・・・」
アレックスもあり得ないといい、二人とも何が起こったのか分からなかったらしい。
エイ「ユニットの切り替えはしてるけどもっと強力なブロックを考えなきゃ」
今後の対策を述べたエイミィはかなり意気込んでいるようにも見える。
な「それだけすごい技術者がいるってことですか?」
すると、ロッテは
ロ「うん。もしかしたら組織だってやってるのかもね」
ク「君の方から聞いた話でも状況や関係が分からないな」
クロノはアルフの方を見る。
アル「ああ、私が駆け付けた時にはもう仮面の男は居なかった。けど、アイツら・・・孤狐とシグナムが居て、シグナムがフェイトを抱き抱えてて「言い訳は出来ないが済まないと伝えてくれ」って。その後すぐだよ。孤狐が吐血をしたのは」
エ「そう。その後フェイトちゃんのバイタルが危険域までいったんだけど・・・あ、これこれ」
そういってエイミィは孤狐、もとい葵がフェイトを治療していた。その魔力量は半端なく使用している量からもかなりフェイトが危険な状態だったとわかる。
エイ「おそらく限界を超えたため吐血。でも、私たちは彼女たちから見たら敵なのに」
リン「それでも彼女たちがやっているのは犯罪。なら闇の書が完成する前に闇の書の捕獲、主の確保というわけになるわね」
その後、司令部をアースラに戻しなのはを一時帰宅させた。
SIDEOut
―八神家
現在蒐集メンバーを集め仮面の男に対する会議が開かれている。
シ「奴が闇の書の完成を望んでいるのは確かだな」
ザ「完成した闇の書を利用しているのかも知れんな・・・」
ヴィ「ありえねー! だって完成した闇の書を奪ったって、マスター以外には使えないじゃん!!」
葵「分からんぞヴィータ。相手が何もなのか分からない以上はな。脅迫、洗脳、方法はいくらでもある。それにはやては子供だ。いくらでも手段はあるはずだ」
あの後、ジェイルに頼んでいた闇の書の過去を探ってもらった。するといろいろと情報が出てきた。過去のことも、そして何者かによって改変されたのかも。まぁ、ちょっと考えれば済むことだ。あとは、クロノ達がその答えに行きつくかどうかだ。
シ「いや、そうもいかん。闇の書を完成させた時点で主は絶対的な力を得る。洗脳や脅迫も効果がないはずだ」
シャ「まぁ、家の周りには厳重なセキュリティを張っているし、万が一にもはやてちゃんに危害が及ぶことはないと思うけど」
シャマルはそう言ったことが得意だ。だが、あくまでも魔法のみ。家のあちこちを調べてみたら監視カメラがわんさか出てきた。まぁさっさと破壊しておいたがな。
ザ「念のためだ。シャマルとあと一人は確実に主のそばにいた方がいいな」
シャ「うん」
カメラのことを考えると直接攻撃ということもある。そうなると、どうするか考えておく必要が出てきたな。
ヴィ「・・・ねぇ」
葵「どうしたヴィータ?」
ヴィ「あのさ、闇の書を完成させてさ、本当のマスターになってさ、それではやては幸せになれるんだよね・・・」
シ「なんだいきなり?」
シャ「闇の書の主は大いなる力を得る。守護者である私たちは誰よりもそれを知ってるはずでしょ?」
ヴィ「そうなんだよ。そうなんだけどさ・・・あたしは、あたしはなんか大事なことを忘れてる気がするんだ・・・」
葵「話すべきなのか・・・・」
ヴィ「葵は何か知ってるのか!?」
葵「・・・知ってると言えば知っている。だが「ガシャン」なんだ!?」
二階から何かが倒れるような音が・・・二階!?
葵「はやてか!?」
ヴィ「はやて!!」
ヴィータは真っ先にはやての部屋に向かい、その後を追うように私たちも急ぐ。
その場には胸を抑え苦しんでいるはやての姿があった。
葵「シグナム! 救急車を呼べ!」
シ「あ、あぁ!」
葵「ヴィータそこをどけ」
急いでヴィータを後ろに下がらせ、
葵「月の石よ、汝の魔力を解き放ち、この者に癒しを与え痛みを抑えたまえ」
誕生日プレゼントに与えたムーンストーンには魔力を込めている。いわば羽根のお守りのようなものだが宝石の分だけ魔力量は多い。
光が収まると、先ほどまでの苦しみに満ちた顔が一変し少し穏やかになった。
―ピーポーピーポーピーポー
どうやら来たみたいだな。
―海鳴大学病院
石「まぁ、大丈夫みたいね。よかったわ」
は「はい、ありがとうございます」
シャ「あぁ、ほっとしました〜」
は「せやから、ちょっと眩暈して胸と手がつっただけやっていったやん。もぅみんなして大事にするんやから」
どんな状況だそれは・・・まぁ、無事ならいいが。
だが、やはり闇の書の影響が大きくなりつつあるのか。
葵「はやて、ベットから落ちた際に頭も打ってたんだ。何かあっては遅いんだ」
は「そうなんか? それはごめんな」
ヴィ「はやて、よかったぁ〜」
シ「はい。何も無くて」
石「まぁ、来てもらったついでに色々と検査したいから、もう少しゆっくりして行ってね」
は「はぁい」
石「さて、シグナムさん、シャマルさん。ちょっと」
やはりつっただけというには言い訳がきついのか。
シャマルとシグナムは石田先生に連れられて部屋を出て行った。
は「それにしても急に胸の痛みがのいたけどあれどないしてなん?」
葵「はやてに上げた誕生日プレゼント。あれはただの石ではなく、魔法が込められたいわゆる魔法石と呼ばれるモノなんだ」
ヴィ「それってすごいのか?」
葵「単純な石には魔力は宿らず、本物の宝石じゃないと魔力が込められない。しかし込められる量は大きさにもよって変わるが緊急時の治癒魔法や防御魔法にも転用が効くな」
ヴィ「それではやてを?」
葵「あぁ」
再び魔力を注ぎ込んでもらったとはいえさすがにいきなり使うのはきつい。暴走したら元も子もないため緊急時の魔法石を発動させた。
ル
葵「ん? なんだルミル?」
エ
は「聖歌ってあの教会とかで歌う?」
ル
エ
は「へぇ、それは聞きたいなぁ〜。なぁヴィータ」
ヴィ「はやてが聞きたいなら」
葵「あまりうまくないのだがな。まぁ良いか久しぶりだしな」
―すーっ
少し息を吸い、
天空に孤独に浮かぶ月よ
あなたは何を思う
何を私に望み私にこのような試練を与える
――誰かに願うように静かに
私は弱い
決して強くない
にもかかわらずあなたは何を思う
――でも、その静寂を壊すことのない
人はわたしを弱いという
私もそう思う
――でも切なさが、哀しさが
でも彼女は違った
その者だけは違った
その者は言った
――でもその儚さまた美しさを
私は強いといってくれた
心がそれによって救われたと
その言葉に私は救われた。永遠の救いとなった
――終わりは何においても呆気ない。でも心の中にしっかりと刻まれた歌
歌が聞こえた。それもどこか悲しいのに心温まる歌が。
石「彼が?」
そういって石田先生の視線の先には葵がいた。
シ「・・・こんな歌は生まれて初めて聞いた」
シャ「えぇ」
石「本当はいけないんだけど、これは仕方ないわね」
石田先生の言葉に周りを見る二人。周りには先ほどまで泣いていた子供が泣きやみ、その曲に耳をすませた。
余談であるがこの日、海鳴大学病院では奇跡の一日と呼ばれた。植物状態の人間が意識を取り戻したり、不可能と呼ばれた手術が成功。その詩は人々に希望を与え、元気づけたとして奇跡の詩と呼ばれた。