小説『黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第三三話


 場所は変わり現在はアースラの病室。

 ベッドの上にはいまだに眠っているはやてがいる。そしてその周りにははやてを囲むようにヴォルケンリッターとリーンフォースがいた。


SIDEヴォルケンズ・リインフォース


リ「やはり、破損が致命的な部分にまで至っている。防御プログラムは葵を皇としているため問題はない・・・だが、ゆがめられた基礎構造はそのままだ。私は、夜天の魔導書本体は遠からず新たな防御プログラムを生成し、また暴走を始めるだろう」

シ「やはりか・・・」

 おそらくこのことを予想していたのだろう。シグナムがそう答えた。

シャ「修復はできないの?」

 わずかな希望をリインフォースに尋ねるが、答えはむなしいものだった。

リ「無理だ。管制プログラムである私本体からも夜天の書本来の姿は消されてしまっている」

ザ「元の姿が分からなければ戻しようないと言うわけか・・・」

リ「そう言うことだ」

 シグナムは悲しそうな眼をして、はやてを見て、

シ「主はやては大丈夫なのか?」

リ「なにも問題はない。私からの浸食は止まっているし、リンカーコアも正常稼働している。不自由な足も時を置けば自然治癒するだろう」

シャ「そう。じゃあそれならもう良しとしましょうか」

シ「あぁ、心残りは・・・ないな」

 シグナムも、シャマルもやはり気になることはある。だがはやてが助かるのならと安堵していた。

ヴィ「防御プログラムがない今、夜天の魔導書を破壊するのは簡単だ。破壊しちゃえば、暴走することも二度とない・・・かわりにあたしらも消滅しちゃうけど」

 夜天の魔導書を破壊すると言うことはすなわちその一部である彼女たちも消滅すると言うことだ。そしてもう二度とはやてに会うこともない。

シ「・・・すまないな、ヴィータ」

ヴィ「なんで謝まんだよ! いいよ別に・・・こうなる可能性があったことぐらい・・・みんな・・・知ってたじゃんか」

???「いや、私は残念ながら知らなかったんだが?」

全員「!?」

 その場にいたのは葵と後ろからヴェルがいた。

葵「さて、同じ家族に内緒で話すとはどういうことだ? それにようやく家族になれたのに皆消えるだと?」

リ「違う。お前たちは残る。逝くのは私一人だ」

―ガスッ

 葵は容赦なくリインフォースの頭にチョップを叩きこんだ。

リ「っ〜〜〜〜〜!?」

葵「そう言うことを聞いているんじゃない。なぜ皆が助かる方向を選ばない。この駄々っ子」

リ「え?」

葵「二時間、時間をくれ。その間に助ける方法を探す。その間に勝手なことをするなよ?」

 そういって彼は鍵を取り出しそこから出現した扉に入ってヴェルを連れてどこかへ行ってしまった。


SIDE Out


 場所は心の世界 塔内部

葵「さて、探すとしましょうか」

エ「はい!」

ル「急ごう。時間がない!」

孤「頑張りますか!」

ヴェ「こ、これは一体・・・・」

 ヴェルに簡単に説明をし、作業に取り掛かる。

 いやだって、時間ないし。

葵「夜天の魔導書。闇の書・・・・検索してもヒット数が大きすぎる。それに、やはり管理局が一枚絡んでいるな」

 調べて行くうちにやはり浮き彫りになる管理局の腐敗。

葵「人はいつもこうだ。欲望のためなら他の犠牲をいとわない。命さえも」

 そうやって調べて行くがやはり手段がない。

葵「やはり確立されているのはあれか・・・・」

エ「みたいですね」

ル「ですがあれが一番生存率が高い」

孤「ん〜。本当は嫌なんだけどな〜」

ヴェ「あれとは?」

葵「・・・契約」

ヴェ「え!?」

葵「はぁ、あとはこれか」

 そう言って取り出されたのは一冊の魔導書。だが、題名も何も書かれていない。

葵「だが、あまりにも賭けの部分が大きすぎる」

エ「!? マスター!?」

葵「どうした?」

エ「アースラからリインフォースさんたちの反応が消えています!」

葵「はぁ!?」

 時刻は大体一日が終わっているぐらい。つまり外では一時間しかたっていない。

葵「急いで出るぞ!」

エ・ル・ヴェ・孤「「「はい!」」」

 急いで戻ると、アースラの病室にははやてもいなかった。

葵「ヴェル! あいつらがどこにいるかわかるか!?」

ヴェ「お待ちください・・・・場所は、海鳴市の・・・丘です」

葵「詳しい座標を頼む」

ヴェ「はい」

 目的地確認。場所認識・・・移動!

―シュン







 その場所にたどり着くと、はやてたちがいた。

 どうやらはやてが必死にリインフォースに何か訴えている。

は「あかん!やめてリインフォース止めて!! 破壊なんかせんでええ!! 私がちゃんと抑える!! 大丈夫やこんなんせんでええ!!」

リ「主はやて、良いのですよ」

は「いいことない!! いいことなんか、何もあらへん!!」

リ「随分と永い時を生きてきましたが、最期の最後で私は貴女に綺麗な名前と心を頂きました・・・騎士達も貴女の傍に居ます。何も心配はありません」

は「心配とかそんな・・・」

リ「ですから、私は笑って逝けます」

は「・・・・ッ話し聞かん子はキライや! マスターは私や!話し聞いて!! 私がきっと何とかする! 暴走なんかさせへんって約束したやんか!!」

 だんだん言っていることがめちゃくちゃになってきたな。

リ「・・・その約束は、もう立派に守っていただきました」

 そろそろ出るか。こいつにもだんだん腹が立ってきたしな。私との約束も守ってないし・・・

は「リインフォース!!」

リ「主の危険を払い、主を護るのが魔導の器の勤め「なら、主の願いを叶えるのもお前の役目じゃないのか?」え?」

―ガスッ

 腹が立ったので持ってきた魔導書で駄々っ子で甘えん坊、略して駄々甘っ子に本でチョップしてやった。


SIDEリインフォース


???「なら、主の願いを叶えるのもお前の役目じゃないのか?」

リ「え?」

―ガスッ

リ「っ〜〜〜〜〜〜!?」

 いきなり頭に猛烈な痛みが走り、にらみながら後ろを振り返ると、そこにいたのは葵だった。

は「あ、葵君!?」

 主もほかの魔導士たちや騎士達もみな彼が急に表れたことによって驚いていたが、何より私が一番驚いている。なにせ、いきなり脳天に激痛が走ったのだ。

葵「はぁ、なぜここにいる魔法使いは人の言うことを聞かない連中ばかりなんだ? 言ったよな私は。二時間待てと」

 すると、彼は魔法陣を壊して、新たな魔法陣を展開させる。

???「管制人格。いえ、今はリインフォースでしたね」

リ「防衛・・・いや、ヴェル・・・だったか?」

ヴェ「えぇ。貴方はよっぽどのバカですか? 我が皇が貴方のために助ける方法を見つけだして来たのにもかかわらず死のうだなんて」

 ・・・今何といった?

シ「まて、今助ける方法を見つけたといったか!?」

は「ほ、ほんまか? ほんまか葵君!?」

葵「あぁ。方法は三つ。まず一つ目は他の二つを拒絶した場合の最終手段だ。まぁ、簡単に言うとさっきしようとした方法だ」

シャ「つまり二つとも失敗した場合にということですか?」

葵「まぁ、そんなところだ。二つ目。闇の書を放棄し新たな魔導書の管制人格になる。幸いなことに夜天の書に類似した書物は複数ある。だが、その場合何かを失う確率がある。ユニゾンなどならまだいいが、感情などになるとさすがにまずい」

リ「成功率は?」

葵「極めて低い。相性などもあるからな。そして最後が・・・契約・・・」

全員「は?」

葵「契約だ。パス契約/// 私を助けるときシャマルがしただろ? パス契約について調べて分かったことなんだが、あれは双方に通じることで確実にバグ除去につながる。あと先ほど闇の書について調べてみたがユニゾン機能の損傷が激しいためこちらでユニゾン機能は破壊させてもらう」

 なぜ、そこまでして・・・

葵「・・・私はもう誰かを失うのはい嫌なんだ。どんな結末でも誰かを失ってまで幸せにはなりたくない。なら、皆が望む形で終わりたい。それだけだ。お前はどうしたいんだ。リインフォース」

リ「え?」

葵「お前ははやての家族の一員だ。なら助ける価値はある。それにお前は生きているんだ」








 私は、









リ「・・・き・・たい・・・・」



葵「もっと強く言え!」




























リ「私は生きたい! 主と共に明日を見たい! 未来を見たい! 幸福をつかみたい!」







































葵「なら掴め。自分で、その可能性を」




 あぁ、そうだ。そのために彼は可能性をくれたのだ。






 すると、彼はそっと私を抱きしめてくれた。




葵「お前は今という時を生きているんだ。なら未来を見る権利も幸福になる権利もある。自ら断つな。自ら幸福を未来をつかめ。そのためなら私はお前の支えになる。お前を守る盾にもなる。だから安心しろ」

リ「あ・・・あぁ・・うわぁああああああああ」

 彼は私が息を詰まらせないようにそっとなでて続けてくれた。

葵「辛かっただろう。もういいんだ。背負ってきた重荷をおろしてもいいんだ。お前はその分幸せになっていいんだ。そうだろ、祝福の風リインフォース」

リ「ひっぐ、うぅっ」

 私がしばらく彼の胸で泣き、ある程度時間がたち、

葵「あ、あの、もう離してもらっても」

リ「・・・もう少しこのままで///」

葵「はぁ、ご自由に」


SIDE Out


 回りからの視線が痛い。なんで? ヴェルもそうにらむな!

葵「ところでどうするんだ? 方法は」

リ「契約の方法は?」

葵「あれ? 知らないのか?」

リ「・・・・ま、まさか、あれを!?」

葵「ま、まぁな。いや「ならそれで」即決するか!?」

 すると、周りの視線がさらにすごいことに。ただ、知らないなのはとフェイト、アリシアはどうやるの? みたいな顔をしている。

葵「・・・なら、準備はいいか?」

リ「(こく)」

 うっ///一瞬かわいいと思ってしまった。

 まぁ、それはおいとこう。

葵「では、行くぞ」

リ「は、はい///」

 そして、

―チュッ・・・・レロッ

 なぜ舌まで入れてきた!?

な・フェ・アリ「「あぁああああああああ!!?」」

―・・ンチュッ

 まだ続けるの!?

リ「ぷはぁっ」

―シュゥゥゥ

リ「痛っ・・・これが?」

葵「あ、あぁ。契約の証し。それで、バグはどうだ?」

リ「・・・ユニゾン機能は破壊。その他の部位は・・・・バグが除去されている!?」

は「なら!!」

リ「は、はい。主はやて。これからは貴方と共に!!」

は「り、リィンフォース!!」

 二人は互いの感触を確認し合うようにおもいっきりだき、涙を流していた。

シ「ありがとう、神無月」

ヴィ「ありがとな葵!」

 そういってヴィータは抱きついてきた。

シャ「何とお礼を言ったらいいか」

ザ「お前には助けてもらってばっかりだな」

葵「気にするな。私たちは家族だろ」

―ゴゴゴッ

 あれ、背中にすごい殺気が、

 壊れたブリキのおもちゃのようにギギギギッと後ろを振り返ると、そこには

な「なにをしたのかな? かな?」

フェ「葵、私もしたこと無いんだよ?」

アリ「どういうことなの?」

 金色の死神二人に魔王が降臨しなさった!? というかアリシア、いつの間にデバイスがある!?

アリ「作った!」

 ・・・心を読むな。そして魔法を放とうとするな!!

ク『・・・済まないがいいか?』

 クロノ、タイミングがいいと思いたいがまた見ていたのか?

ク『えっと。済まない葵』

葵「・・・まぁいい。今回は助かったのだ。で、要件は?」

ク『君と話をしたいと言っている人がいる』

 誰?

葵「私の管理局員での友人は君たちだけと思っているが?」

ク『ギル・グレアム提督だ』

 なるほど。

葵「ここはなかなか冷える。それに君たちも聞きたいことがあるのだろう。そちらに向かいたいから転送を頼む」

ク『あぁ。分かった』

 しばらくして転送が終了し、アースラに久々に来た。

 アースラの食堂にクロノに皆が案内されるとそこにいたのは、

葵「久しいな、グレアム。プレシアにリニスも久しぶりだな」

プ「えぇ。久しぶりね」

リニ「はい。お元気そうでなによりです」

ギ「本当にあの時の子供が君か!?」

 まぁ、最初に私のこの姿を見せればそうだ。現にアリアとロッテも再び見て驚いている。

葵「あぁ。その前にすることがあるんじゃないのか?」

ギ「そうだったな」

 グレアムははやての前に行き、

ギ「謝って許されることではないことは分かっいる。だがこれだけは言わせてくれ。君たちを利用して済まなかった」

 グレアムは頭を下げた。アリアとロッテもはやてに頭を下げた。

は「グレアムさん」

ギ「なんだ?」

は「今まで援助してくれてありがとうございます」

ギ「・・・え」

は「確かに貴方の言うとおりやったことは許されることやないことは分かります。でも、もし私のところに闇の書が、夜天の書がこんかったら私は永遠に一人ぼっちやた。新しい家族をくれてありがとうございます」

 相変わらずだが、はやてらしい。

ギ「・・・くっ」

葵「言ったろ? はやてなら許してくれると」

ギ「あぁ。こんな子供に私は何をしたのだろう」

リン「立ち話もなんですし、皆さん座ったらどうですか?」

 そう言ってみんなが座る。

葵「さて、聞きたいことがあるのでは?」

ギ「君がアリアやロッテに言っていた友人についてだ。聞いてはいけないことだと分かってはいるのだが。どうしても気になってな。最後に君の話を聞きたい」

 ・・・最後という言葉が気になるが、それよりも昔話ね。

孤「・・・葵、どうする?」

葵「良いだろう」

 そういってゆっくり語りだした。昔の、私が護るべきものだったものの話を。

葵「あれは、まだ私が前世で生きていた時の話だ」

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