小説『黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第三四話


―葵がいた時の地球 場所は北米大陸


 当時のここは狂王と言われた零始の支配下に置かれていた。蒼穹の騎士団がユーラシア騎士連合の盟主になり数年。

 私は五大陸全ての騎士連合軍を率いて零始に宣戦布告をした。

 そして、北米大陸戦争が始まった。

葵「さすがにきついですね・・・。海と空からの同時攻略。相手は地上からの応戦に加え、空からの【不の者】による攻撃」

???「仕方ないだろ? だが、負けるわけにゃぁいかね」

 そういって私の隣に常にいたのが七(なな)沼(ぬま)亮(りょう)。蒼穹の騎士団創設以来からいて軍師兼副騎士団長を務める。

兵「騎士団長! 護衛艦ハディス沈黙!!」

 本土決戦ということもあり今までの戦いとは違いやはり苛烈であり、苦戦を双方虐げられていた。

葵「まずいですか」

亮「しかたねぇ。オレと葵が出る! 準備を!」

兵「はっ!!」

 騎士団長、副騎士団長そろってこの戦いに出たため上陸戦は数分足らずで騎士連合軍の勝利に終えた。

亮「呆気ねぇな。不気味だねぇ」

葵「えぇ。あなたならこの後どう考えますか?」

 そういって近くに仮設テントを張り、机の上にここら辺の周辺地図を出す。

亮「この近くに町がある。ここで待ち伏せをして叩く。空爆を進めたいが街にまだ人がいるかも知れん」

葵「そうですね。偵察部隊を二個小隊送ってください!」

兵「了解!」

 数分後、偵察部隊が帰ってきて街に誰もいないことが分かり空襲によってこの地区を突破。

 その後も快進撃を続けていたが、これは亮がいたからといっても過言ではなかった。適切な指示、作戦の立案と実行。




シ「すごいな彼は」

シャ「葵君と同い年でそこまでの戦闘経験から作戦や今までの兆候を探り出すことなんて・・・」

葵「だから彼はこう言われていた。現代によみがえった孔明とか、鬼才の中の鬼才。彼の魔法は明らかに戦闘向け。だが、それにもかかわらず鋭い読みで何度も大きな戦いをくぐりぬけてきた正に英雄だ。それにあいつとは中学からの腐れ縁でな。本当の意味での親友だった」

 そう、あいつがいたから今の私があった。そして存在の意味も。救われ助けられ、支えられた。

葵「話を続けるぞ。北米大陸攻略戦は太平洋側と大西洋側、南米側からの三方面作戦で実行されていた。当然この作戦も亮が提案したものだ。
 五か月という長い戦いで大陸の四分の三を奪還したが、しだいに連合軍側が押され始めた」

ク「なぜだ?」

葵「こちらは人で戦っているのに対し、あちらは【不の者】だ。無尽蔵に作れる【不の者】と数に際限がある人。次第に数で押され始めてきたわけだ。これには亮も頭を悩ませていた。そして、あの作戦が提案された」




葵「二面作戦!?」

亮「あぁ」

 彼が提示した作戦は二面作戦。だが、兵力が下がっている今ではかなりきつい作戦だ。

葵「だが、しかしなぜ今!?」

亮「先ほど偵察部隊か連絡があった。零始が本拠点としているデトロイトより、シカゴの方が兵力が上がっていると。おそらくスプリングフィールドをあいつらが奪還し部隊を二分する作戦だろ」

葵「・・・」

亮「まぁ、最後まで聞け。その奪還作戦のために今やつの本拠点であるデトロイトは手薄ここを叩く方が優先だ。そしてスプリングフィールドには南米から来た第88騎士大隊がいる。お前がデトロイト奪還部隊を指揮しろ。その間にスプリングフィールドにオレが向かって指揮する」

葵「ですが、それだと飲み込まれる可能性があります!」

亮「そのための布石は打ってある」

 彼の笑みは確実に勝てると保証しているようだった。

葵「分かりました。ちゃんと生きて会いましょう。このようなくだらない戦いを速く終わらせて」

亮「分かってるって! オレだってこんなところで死にたくねェ」

 翌日、日がのぼる前にデトロイト攻略部隊はデトロイトに向かい進軍を開始した。

 しかし出立して1週間もせずに到着した。激しい戦闘もなく。

葵(おかしい。抵抗がなさすぎる。もう直ぐ出デトロイトのはずです)

兵「騎士団長! 報告します、先遣隊がデトロイの入りました」

葵「そうか。だが警戒を「報告します!!」どうした?」

 後方から一人の兵士が傷だらけになってこちらに向かってきた。

兵「な、七沼副騎士団長の軍、す、スプリングフィールドにて交戦開始・・・ですが、明らかに兵力差が大きく、苦戦・・・」

 この言葉に私は驚きを隠せなかった。だが、

???「どうかね? ??。大切な物を奪われる気持ちは?」

 急いで振り向くとそこにいたのはこの世で最も憎み、怨み、憎悪していたやつだった。

葵「零始ぃいいいいいい!!!!!!!」

 剣を抜きあいつの元まで一気に攻めかけた。だが、

零「ハハハハッハ。それぐらいでは死なないよ? それにこの戦は所詮君を完成に近づけるために置いた布石なのだから」

葵「どういう意味だ!?」

零「分からないか? 大切なモノが奪わたとき人は悲しみに暮れ、やがて怒り満ち、やがてそれが憎しみに変わる。そしてそれが殺戮につながる! 最高の連鎖じゃないか!!」

葵「!? まさか貴様!?」

零「ここはあげよう。だが、まだまだ君には活躍してもらわねばらない! 人の負という物を探求するために!!」

 すると、煙のようにあいつは消えて行った。

葵「・・・まさか。だが、いや今は考えるな。全軍急いでスプリングフィールドに向かいます!」

 その後デトロイトに少数の兵士を置き急いでスプリングフィールドに向かった。その際に通った道はデトロイトに向かうときと【不の者】は比べはるかに数が多かった。

 そして、その場所についたときに私が目にしたのは、

葵「・・・なんだ・・・こ、これは・・・」

 あるのは亮が率いていた部隊と第88大隊の人間の死体。形が残っているのは少なくほとんどが原形をとどめていなかった。

葵「・・・りょ、りょうは・・・」

 私は必死に探したのを覚えている。私を闇から助け、支えてくれ、共に歩んできた友を。

???「・・・うっ」

葵「!? りょ、亮!」

亮「お、おま・・え・・・どう・・して・・」

葵「しゃべるな! すぐに治療する!!」

亮「・・この・・・傷・・みえるか?・・・もう、む・・りだ・ゴボッ」

 あいつの口からは大量の血が吐き出された。それでも私は治癒魔法をかけ続けた。

亮「い・・ま・・は・オレ・・よりみら・・いだろ!」

葵「お前がいない未来を見てどうなる! 私に、私たちに未来をくれたのはお前だ!」

 私だけじゃない。零始の計画で被害にあったfamily全員がこいつによって救われた。例え兵器として産まれた存在でもこいつはそんなことは関係ないと言ってくれた。お前らは幸せをつかみ、未来を見る権利も両方あると言ってくれた。数少ない理解者だった。

亮「・・・こんど・・は・・おまえ・・ら・が・・みらい・・を・つくる・・ばんだろ!」

葵「なんで!? なんでお前なんだ!? お前が何をした!?」

亮「・・・すまん・・」

葵「謝るな! 謝るぐらいなら生きてくれ! 頼む! これからも私を、私たちを支えてくれ!!」

亮「・・おまえの・・・つく・・る・・みら・・い・・みてみ・・たかった・」

葵「見せてやる! だから生きてくれ!! 生きてないと見れいないだろ!!」

亮「・・やく・・そく・・しろ」

葵「あぁ、何でも聞いたやる!」

亮「・・おまえ・・・みたいなひ・・とがあら・・・われたら・・・こんどは・・おまえ・・がた・・すけてやれ」

葵「あぁ。約束する!」

亮「・・・そう・・か・・あと・・たの・・」

葵「あ・・あ・・・あぁぁぁあああああぁあぁあああぁああああああ!!!!!!!!」

 それがあいつの最後の頼みだった。

葵「神よ! 彼が何をした!? 彼が何を犯したと言うのだ! なぜ彼が死ななければならない!! 我らを助け、我らを救い、我等のために共に戦ってくれた彼が!! なぜ!?」

 その後のことはほとんど覚えてない。ただただ泣き続けた。天に向かって吠えた。




葵「これが私が失った最初で最後の大切な者だ。友を失う気持ちはわかる。だが、その者の意思を汲んでやるのもまた生きている者の使命ではないのか?」

グ「あぁ。そうだな。本当に私はどうかしていたようだ」

 そういってさめきったお茶に口の含み喉を潤した。

葵「さて過去話は以上だ。今度はクロノ達から質問があるんじゃないのか?」

 そういうと、リンディが少し間を置き、

リン「・・・えぇ。これは私にしか知らされていないことです」

葵「ほぉ。トップシークレットか? いいのかこれをこの場で話して」

リン「えぇ。神無月君、貴方に会いたがっている人たちがいます」

葵「・・・大方予想はできたが、まあ聞こう」

リン「はい。会いたいといってきている人たちの名前はミゼット・クローベル 本局統幕議長、ラルゴ・キール武装隊名誉元帥、レオーネ・フィルネス法務顧問相談役の三名です」

 管理局のトップが名を連ねたな。

管理局員・プ「伝説の三提督!?」

な「しってるの?」

ク「管理局の管理局黎明期を支えた、最大の功労者とされる3人だ。もはや英雄といっても過言じゃない」

 大方勧誘だろ。

リン「それで、翌日か明後日管理局本局に来てくれとおっしゃっていたわ」

 バカか? 自ら敵の本拠地に乗り込んだらなにされるか分かったもんじゃない。

葵「断る」

リン・エ・ク「「「えぇ!?」」」

葵「私が会いたいと言うのであれば赴くが、貴様らが会いたいと言うのであれば貴様らが足を運ぶのが普通じゃないのか? そのような礼儀もできんのか。ミゼット・クローベル、ラルゴ・キール、レオーネ・フィルネス。聞いているのだろ」

すると、三つのモニター映し出されると、管理局員は一斉に起立、敬礼を行った。

ラ『ほぉ、若いのにやるな』

レオ『まさかばれるとは思わなかったな』

ミ『えぇ。でもどうしてばれたの?』

葵「お前らのことだ。どうせ何らかの手段は打ってくると予測はしていた。お前らの考えはこうだろ。私を本局に連れ行き、そこで話し合い管理局に勧誘という名の強制入局。違うか?」

ラ『ほっほっほ。そこまではせんよ。だが、お前さんほどの力があれば局も変わると思うんだがの?』

葵「それはあんたらに力がないだけだ。暴走している管理局をおさえるには力で押しつぶすしかない。あんたらは優しすぎる。時には鞭を振るう覚悟も持て」

ミ『それで、話し合いには応じてくれないかしら?』

葵「・・・はやて、明日家を借りれるか?」

は「え? え、えぇけど」

葵「なら明日、場所は八神家。管理局からはあんたら三人と、グレアム提督、リンディ提督、クロノ執務官、エイミィ執務補佐官、アリア、ロッテの以上の者だけを来させろ。録音機器や録画機器、記録媒体は一切持ち込みを禁止する。それを破った場合は本局とミッドチルダを塵にする。以上だ」

全員「!?」

 最後の言葉に皆が反応して、驚いていた。

レオ『そ、それは脅しか?』

葵「そう取るかは自由だ。だが、人質は必要だろ? お前らが約束を破ったがゆえに死ななくていい人々が死ぬ。お前ら主導で話を勝手にすすめられては困るしな」

ミ『・・・・分かったわ。その条件でそちらにお伺いします』

ラ『ミゼット!?』

葵「話がわかる人間で助かる。ではこれで」

 そういってモニターを消した。

 するとその場にいたアースラメンバーが。

リン「よ、よく、あの人々とまともにと言うから上から目線で話せたわね?」

葵「何を言っているんだリンディ? 所詮あいつらはジジィとババァだろ。こっちは御三家と話をしたこともあるんだ。そっちの方が緊張する」

フェ「御三家?」

葵「珠洲之宮(すずのみや)様、神之宮(かみのみや)様、神楽之宮(かぐらのみや)様のお三方だ」

ヴィ「どういう人たちなんだ?」

孤「人じゃないよ。神様たちだよ」

全員「は?」

葵「時の神、空間の神、生命の神。四聖神と呼ばれる偉大な神だ」

プ「神って・・・そんなばかな・・・」

葵「いるんだよ実際に。言ったはずだ。私がいた世界には精霊も神も悪魔もそして人も普通に暮らしている。言っていなかったが、連合騎士軍の連合の意味は騎士団の連合に意味ではないぞ」

ユ「じゃあ、どういう意味の」

葵「人、精霊、神族、魔族の種族連合軍というわけだ」

全員「・・・・・」

葵「第一に孤狐が神だ。実物が目の前にいるだろ」

孤「えっへん!」

 そういって孤狐が大きな胸を強調して威張った。

ク「じゃあ、葵はその三人と出会ったことがあるのか? その、御三家と・・・」

葵「あぁ。だから、所詮伝説だろうが、幻だろうが、あいつら人だ。何を恐れる必要がある?」

アル「何度も思ったけどあんたも、あんたがもといた世界もでたらめすぎる」

シャ「え、えぇ。今回ので余計にそう感じます」

シ「・・・もうなれたがな」

ヴィ「シグナムと同じ」

 まぁ、こっちの世界になれると私もそう思うよ。

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