小説『黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第一二話


 さて時刻はもう直ぐお正月。

 場所は翠屋。どうやら今日は高町家、月村家、バニングス家、テスタロッサ家、ハラウオン家、八神家でお正月を祝おうと言うことになった。

 しかしまぁ、こういうお正月は初めてだな。

葵「ほれ。年越し蕎麦だ」

 そう言って人数分を用意した。準備をしたのは私、はやて、桃子さんだ。

な「ん! このおそばおいしい!」

恭「確かに。そこらへんのソバ屋で作るのとは別格だな」

葵「そう言ってくれたら打ったかいがあった」

士「え・・・これは君が打ったのかい!?」

葵「えぇ」

忍「な、何でもできるのね・・・」

アリ「むしろあんたが不可能だと言える物を探す方が難しいんじゃないの?」

す「あ、アリサちゃん・・・」

は「そやな。葵君って何でもそつなくこなしそうやし」

 まぁ、不可能なことはほぼ無いな。

 それから皆が食べ終わると、

葵「さて、皆は初詣はどうするんだ?」

桃「私たちはこっちよ。あ。葵君は子供たちの保護者として一緒に行ってあげてね」

 そういって机に出すのは日本酒にワインなどなどのお酒の種類。

葵「・・・士朗さん、恭也さん。頑張ってください」

士・恭「「あ、あぁ・・・」」

 あの時の温泉旅行の時は本当に哀れだったな・・・。

―ゴォーン

全員「あけましておめでとう(なの)(ございます)。今年もよろしく(お願いします)(な(の)(な)」

 さて、除夜の鐘もなったことだし、

葵「初詣に行くか」

桃「なら、着物を着なきゃね♪」

 桃子の一言に女性陣が店の奥へ・・・。

葵「そう言えばユーノ。無限書庫の司書になるそうだな」

ユ「うん。あと葵・・・さんからもらった資料のおかげで試験も突破できそうだよ」

葵「呼び捨てで構わないよ。そっちで慣れたから今さら敬語というのもな。無論クロノもな」

ク「あぁ。そうさせてもらう」

 そういって食後に出された緑茶を一口口に含むと、

ユ「今さらだけど葵はすごいね」

葵「ん? どうした。本当に今さらだな」

ユ「うん。僕から見れば君は本当の英雄だと思う」

葵「英雄・・・ね。それが人助けなどであればそう言われても誇りに思ったかもな。でも戦争における英雄だ。言い換えれば殺人鬼だぞ」

ク「いや。それは違う。君は世界を救ったんだ。そしてこちらの世界でも君は何人もの人間を救った。フェイトやはやて。プレシアにアリシア、そして夜天の書の騎士たちやアインやヴェル。そしてリイン。多分君がいなかったら間違いなくこれのどれか、いや全てを失っていたかもしれない」

葵「私はただ失いたくないだけだったんだよ。過去に失い後悔し、嘆いた。そんな気持ちをもう二度としたくないと思い必死だったんだよ。それに今はこういうしっけた話はやめないか? どうやら着付けも終わったみたいだ・・・し・・」

な「あ。葵君どう?」

フェ「に、にあってるかな?」

は「どや?」

アリ「・・・どうかな?」

 皆が一斉に出てくるとは思わなかったし、その、みんなよく似合ってるし・・・

 ユーノとクロノは顔を真っ赤にしていた。多分私もだろう。

葵「あ、あぁ。にあってるよ。それに、お前らは美人に入るんだ。むしろお前らに似合わない服を探す方が難しいんじゃないか?」

 シグナム達も出てきた。やはりにあっている。その、まぁ美人だし・・・。



 神社に到着。さすがは初詣ということもあってか屋台もあり、その周りも活気に満ちている。

は「はぁ〜。やっぱり寒いな」

な「うん。息が真っ白なの」

 二人が手に息をかけながら少しでもぬくくしていたので、

葵「なら手でも握るか?」

は・な「「いいの!?」」

葵「あぁ。ほら」

 そういって手を差し出すと、二人とも手を握ってきた。

葵「冷たいかもしれないが、大丈夫か?」

な「ううん。とってもあったかいの!」

は「うんうん。手袋よりええかも」

 すると、後ろからは、

フェ「なのはずるい!」

アリ「そうだよ! 私も寒いんだよ!?」

ヴィ「高町! あたしと変われ!」

シ「む、私も寒いのだが?」

シャ「いいな。はやてちゃん」

アイン「うらやましい」

リイン「リインもパパと手を握りたいです!」

 だが、やはり一人だけ違う発想の者がいた。

ヴェ「ふむ。ならこれでもいいか」

―ムニュ

葵「!?///」

孤「なら、もうひとつ!」

―フニュッ

 いきなり背中に矢笑い感触があたり、振り向くと、

葵「ヴェ、ヴェル!? こ、孤狐!?」

 背中にはヴェルと孤狐が抱きついていた。

ヴェ「左右がふさがっているなら後ろに行けばいい。それだけだ」

孤「そして葵の背中は広いから二人ぐらい楽に収まる!」

 周りの視線も痛い。

 その後は皆で屋台巡りをしたり初詣の御祈りを済ませたと再び誰が左右後ろを抑えるかでひと悶着あった。

 だが、これもまたにぎやかで楽しい新年の幕開けだった。


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