小説『主人公総受け物語〜アニポケ編〜』
作者:天の河()

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第33話『コンテスト界の若き女帝、エリーサ』

前書き

ここで、天の河オリジナルのオリキャラが登場!


カスミならびにサトシ達と初対面の回!





 アリアに促されて、生徒会室へと入ったカスミ。部屋の中央には来客応対用のテーブルにソファ、奥にはお偉い様が座るような机と椅子が置かれている。隅のいたるところには本棚があり、いかにも難しそうな内容の本が並べられている。そして中央の応対用のテーブルに目を通すと、そこにはブロンズのロングヘアーでかなりグラマラスな女性が姿勢よく座っていた。


アリア「只今、お連れいたしました。こちらが『カントーの人魚姫(マーメイド)』こと、ハナダシティのカスミ様でございます」


カスミ「は、はじめまして! あたし、カスミです!」


 カスミは、目の前にいる女性を見てかなり緊張感が増してきているようだ。その女性は威厳に満ち溢れた異彩を放っており、並の人間には少し近寄り難い雰囲気を醸し出していた。その風貌はまるで、『○ル○○ユの○ら』に出てくるキャラクターを彷彿とさせる。このような人物を目の前にしては、大勢の観衆を相手に何度も水中ショーをこなしている流石のカスミも、緊張せずにはいられなかった。


???「ハウスカ トゥトゥストゥア! はじめまして。私がこの学院の生徒会長のエリーサよ。ここに来てだいぶ緊張しているようね。まずは、リラックスして」


 エリーサは挨拶と自己紹介を終えるとすぐに立ち上がり、自分を目の前にしてガチガチに緊張しているカスミに近づく。そして、カスミの両肩に自らの両手を優しく置き、


カスミ「!?」


エリーサ「まずはほら、リラックス! せっかくの出会いの機会を無駄にするわけにはいかないわ」


 エリーサに委ねられるがまま、カスミは目を瞑って大きく深呼吸をする。エリーサが機転を利かせた甲斐あって、カスミの緊張は少しながら解れたようだ。


エリーサ「いきなり、ごめんなさい。「客人は丁重にもてなし、気分良く迎え入れよ」、これはわたしの家系に代々伝わる家訓なの。わたし自身来られたお客様には対等な立場で接していきたいし、お帰りの際には「来てよかった」という印象を持ってほしいのよ。迷惑でしたら、謝ります」


カスミ「迷惑だなんて、とんでもない! おかげでだいぶ楽になりました」


エリーサ「良かったわ。そう言っていただいて何よりよ」


 エリーサが持つ雰囲気と風貌とは裏腹に、彼女はかなりフレンドリーな性格のようだ。


アリア「相変わらず、エリーサ様流のお客様に対するもてなしは効果抜群ですね。エリーサ様、実はカスミ様の他にも複数名のお客様がいるのですが…」


エリーサ「!? それは長くお待たせするわけにもいかないわ。早速、そのお客様方をこちらに通して」


アリア「はい、かしこまりました」


 エリーサの指示通り、アリアは部屋の前で待機中のサトシ達を部屋に招き入れる。


エリーサ「…お、驚いたわ。カスミさんにはこういった交友関係があったなんて」


アリア「これには私も情報不足でした」


 部屋に入ってきたサトシ達を見て、エリーサもカスミ宅でのアリアの反応と同じように驚きを隠せないでいた。


ハルカ「そ、それよりも、え、エリーサ様がわ、わたし達のこと知っていることに驚きです!」


エリーサ「この国に来て、長く滞在しているものでね。本業のコンテストはもちろん、親友に誘われてバトルの方も日々チェックさせていただいているわ」


ヒカリ「はぁ〜。エリーサ様にお会いできるだけでも滅多にないことなのに、な、名前を覚えていただいているなんてこ、光栄です」


 ハルカとヒカリは同じ生業を持つ者として憧れの一人である人物を目の前にして、先程のカスミ以上にガチガチに緊張していた。


エリーサ(彼女達も、緊張しているようね…)


 ハルカとヒカリの口振りから、2人の緊張感を感じ取ったエリーサ。ここは機転を利かせようと、先程のカスミのように2人に近づき、


ハルカ・ヒカリ「「!?」」


エリーサ「ほら、落ち着いて…。ゆっくり…」


 エリーサが自分たちに近づいたことで一瞬驚きを見せるハルカとヒカリであったが、エリーサは2人の緊張を解れるように諭す。その甲斐あって、ハルカとヒカリもだいぶ楽になったようだ。


ハルカ「なんだか、不思議な気分…」


ヒカリ「えぇ、さっきまで緊張していたのが嘘のようだわ…」


アリア「エリーサ様、あなたには神秘的な何かがあるのでは?」


エリーサ「そうかしら? わたしは至って普段通りに接しているだけだと思うけど」


 ハルカとヒカリは緊張感が解れたと同時に、エリーサから醸し出されるオーラを感じていた。ただ、エリーサ自身はそれを自覚していないようだ。


サトシ「あのエリーサって人、なんだか凄い人なんだなぁ」


デント「彼女からは何となく、ミステリアスなフレーバーが漂っている感じだね」


 その様子を間近で静観していた面々も、エリーサの凄みを感じ取っているようだ。『女帝』と称されるものだからさぞ厳かな人物との印象を抱いていたので、思ったよりもフレンドリーな性格だったのが意外だった。そんなこんなで、その後もエリーサも加えて、友好は会話は弾んでいく。


エリーサ「ところで、今日カスミさんをご招待したのはほかでもないわ。実はわたしと一緒に一仕事して欲しいことがあるの」


カスミ「えっ、あたしにですか?」


エリーサ「本学院では定期的に、大講堂でゲストを招待しては講演会を開いているの。今回も数名程度オファーを出していて、その一人がカスミさんあなたなのよ」


カスミ「講演会のオファーですか…。って、えぇぇぇぇぇ!?」


 エリーサは今度ポケヴェールで開催される講演会にカスミにゲストのオファーを出すために、彼女をこの学院に招待したようだ。突然のオファーに、カスミは驚きを隠せないでいる。


ハルカ「凄いじゃない、カスミ!」


ヒカリ「ポケヴェール女学院の大講堂っていったら、各界の著名人のイベントが開催される場所で有名よ。その壇上に立てる機会をもらえるなんて滅多にないことだわ」


カスミ「無理無理! あたし、トーク力に自信ないし!」


 ハルカとヒカリに更なるハッパを掛けられ、冷静を保てないでいるカスミ。


アイリス「そうかなぁ? この間の水中ショーでもそうだったけど、カスミはトーク力ある方だと思うけど」


デント「確かに、あの時の司会進行ぶりはエクセレントなものだったよ」


サトシ「俺もカスミならやれると思ってるさ。他のゲストの人たちからも貴重な話が聞けると思うし、一回出てみたらどうだ?」


カスミ「そ、そう。でもあたし、上手くやっていけるかなぁ…」


 仲間の説得もあり、カスミの心の中ではオファー受託に向けてかなり揺れ動いているようだ。ただ不安もあり、一発承諾とまではいかないようだ。


エリーサ「いきなり無茶なお願いなのは、申し訳ないと思っているわ。だから、講演会に出ていただいた暁には学院全体で全力でサポートさせていただくわ」


アリア「これも各界間のしがらみを少しでもなくし、よりより交流を目指すのに必要なのです。是非、受けていただけないでしょうか?」


 エリーサ、アリアは、必死にカスミに懇願する。この様子からも分かるように、今度の講演会は準備段階からかなりの熱の入れようである。


カスミ「…分かりました。講演会の件、引き受けましょう」


エリーサ「本当!? カスミさん、助かるわ」


アリア「ありがとうございます」


 しばらく、押し問答やら熟考やらが続いたが、エリーサとアリアの懇願に負けて、カスミは講演会のゲストを引き受けることとなった。エリーサとアリアは本人からの承諾が取れたことからなのか、非常に安堵の表情を浮かべている。


アリア「この件も無事に済んだことですし、エリーサ様。皆様方に学院内を案内してはどうですか?」


エリーサ「そうね。せっかく来てくださったのに、案内もなしに帰すなんてことは出来ないわね。カスミさん、そして皆様もどうかしら?」


カスミ「えぇ、あたし、この学院をもっと回ってみたいです」


ハルカ「超有名私立学校の校舎内を回れるなんて、夢みたいだわ」


デント「コンテストにバトル、ポケモンのあらゆることも学べそうだし、実にいい機会だよ」


エリーサ「決まりね。それと、あなた達にあと2人ほど紹介したい人物がいるの。アリア、中等部に連絡を取って、ドリスとエルヴィーラを連れてくるように言ってくれるかしら?」


アリア「はい、直ぐに連絡を取ってきます」


 エリーサとアリアが学院内を案内する前に、あと2名ほどこの生徒会室に来るようだ。


ヒカリ「ドリスとエルヴィーラ。あの『ボウルの白鳥』のドリスさんに、『ペルヴィタの天使』のエルヴィーラさんですか!?」


エリーサ「あぁ、わたし達の国では確かそんな愛称で呼ばれていたわね」


サトシ「…そのドリスさんとエルヴィーラさんもそんなに有名な人なのか?」


ハルカ「有名も何も、エリーサ様とともに北欧のコンテスト界では超新星として世界中に知れ渡っているわ。コーディネーターの間では知らない人はいないくらいにね」


アイリス「そんなに有名な人が揃っているこの学校、やっぱり凄いわ。アタシ達、なんだか場違いなところに来た気がする(汗)」


 さらに、コンテスト界では有名な人物を目にすることもあって、サトシ達に更なる緊張感が走っていた。アリアが中等部に連絡してからしばらくして、生徒会室に白髪の整ったショートヘアーが特徴のドリスと、ピンク色のロングヘアーが特徴のエルヴィーラと、2人の美少女が入ってきた。2人は簡単に挨拶と自己紹介をサトシ達にした後、エリーサ、アリアとともに、サトシ達に学院内を案内することとなった。


エルヴィーラ「それにしても、みんなそれぞれ遠いところから大変だったでしょう」


カスミ「いえいえ、あたし達こういうのには慣れていますんで」


ドリス「あら、それは頼もしいこと限りないわね」


 案内する最中、サトシ達はエルヴィーラやドリスとも打ち解けあったみたいだ。この2人もエリーサ同様、フレンドリーな性格のようだ。


アリア「(ボソッ)良かったですね、エルヴィーラ先輩。お目当てのサトシ様にも出会えて…」


エルヴィーラ「!?」


アリア「(ボソッ)内心、サトシ様と一緒にいるあのコ達が羨ましいのではないのですか。」


エルヴィーラ「…」


 アリアの問いかけに、エルヴィーラが顔を少し赤くさせながら黙り込んだという一幕もあったのだが…。実はエルヴィーラ、本職はポケモン・コーディネーターでありながら、他のコーディネーター以上にポケモンバトルにもかなりの関心を寄せている。特に、サトシについては、学院のファンクラブに秘かに所属するくらいにチェックしているとか。


エルヴィーラ(だって、仕方ないじゃない。サトシ君、カッコ良くてあたし好みの可愛さだし//////)


 不幸中の幸い(?)というべきか、エルヴィーラのサトシに対する想いは、カスミ達には気づかれていないようだ。このようなやり取りもありながら、サトシ達は学院内の施設を次々と案内される。


アリア「こちらの実習室では、普段コンテストやバトルのシミュレーション講義を開講しております。本日は確か、特別講師を呼んでコンテストに関する特別講義をする日でしたわね」


ドリス「その特別講師の方は、現在は引退されていて現役当初はシンオウでかなり腕のあるコーディネーターとのことだったわ」


カスミ「シンオウって、ヒカリの故郷だったわよね?」


ヒカリ「えぇ、いったいどんな人が講師なんだろう?」


 とある中部屋の前に到着し、アリア達から本日部屋の中で行われている特別講義についての説明を受けるサトシ達。話によれば、シンオウ出身のかなり腕利きの元・トップコーディネーターが特別講師とのことである。


アリア「皆様、入ってみますか? 特に、ハルカ様、ヒカリ様は同じコンテストを生業とする者として、貴重なことが学べると思うのですが?」


ヒカリ「えぇ!? いいんですか?」


ハルカ「講師の方がどんな人かも気になりますし、コンテストのことここでもっと学びたいかもです」


ドリス「それじゃあ、少しばかりお邪魔させていただきましょうか」


 この件に関しての異論は特になかったので、全員目の前の部屋の中へと入っていった。徐々に学院の雰囲気にも慣れ始めているサトシ達。ここで何を得ることが出来るのだろうか…





後書き

オチの付け方が雑になってきた感(汗)


ちなみに、話の途中で出てきた「ハウスカ トゥトゥストゥア」とは、フィンランド語で「はじめまして」という意味です。

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