小説『FAIRY TAIL PSIを使って大暴れ』
作者:OR()

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第10話 晴れた心


〜ジュビアSide〜

ジュビアがいつも通り、ギルドの仕事から帰ってきてただで貸してもらっている借家で休んでいると、一人の男の人が丘に上がってきた。

ジュビア
「こんなところに何しに来たんだろう……」

ここに来る人などジュビアに家賃なしでここを貸してくれている大屋さんぐらいだから少し驚いた。気になって窓から様子を見ていると、彼は空を見上げ炎の化け物を出した。

ジュビア
「魔法!?すごい大きさ。一体何をするんだろう?」

次の瞬間、彼は炎の化け物の口からビームみたいなものを雲に向かって放った。

そして………

アゲハ
『晴れろォ━━━━━━━━━━っ!!!!』

彼の叫びと共に村をずっと覆っていた雲が……弾け飛んだ。

ジュビア
「く、雲が……!!」

ジュビアは自分が見たものが信じられなかった。ジュビアの目の前には、長い間夢見ていた、もう心のどこかで見ることを諦めていた、どこまでも澄みわたる青空が広がっていた。
その美しさに思わず涙が出てしまった。

ジュビア
「キレイ、これが……青空なんだ」

ジュビアが窓を開け、初めて見る青空に見とれていると、彼が丘を降りようとしている事に気づいた。

待って、ジュビアに青空を見せてくれたあなたにお礼を言いたい。あなたの事を知りたい。

気づけばジュビアは家を飛び出し、彼を追いかけていた。

ジュビア
「あ、あの!!」

ジュビアが声をかけると彼はゆっくりと振り返った。

アゲハ
『ん?』

彼は少し驚いたような顔でこちらを見ていた。こんなところで話しかけられるなんて思ってなかったのかもしれない。

ジュビア
「あ、あのジュビア、あなたにお礼を言いたくて」

アゲハ
『お礼?オレ何かしたか?えーと、ジュビア…でいいのか?』

ジュビア
「はい、ジュビアは雨女なので、生まれてこの方一度も青空を見たことがなかったんです。それをあなたが見せてくれた。本当にありがとうございます」

頭を下げてお礼を言えば彼は苦笑を漏らした。

アゲハ
『いや、ギルドの依頼で頼まれただけだから礼なんていらねぇよ』

彼は笑ってそう答えた。
それでも……

ジュビア
「それでも、ジュビアにとっては涙が出るほど嬉しいことだったんです。本当にありがとうございました。あの…名前を聞いてもよろしいですか?」

アゲハ
『名前か?オレは夜科アゲハだ』

ジュビア
「アゲハ…様」

アゲハ
『いや“様”は勘弁してほしいな、せめて“さん”にして』

ジュビア
「わかりました、アゲハさん。あの、アゲハさんはどこのギルドに所属してるんですか?魔導士ですよね?」

所属ギルドが分かればまた会えるかも、そう思って聞いてみた。

アゲハ
『妖精の尻尾だけど……』

妖精の尻尾!?

ジュビア
「妖精の尻尾……ですか。ウチのギルドとは仲が悪いですね」

もう、会えないかもしれないな。ジュビアに青空を見せてくれた、この人に。

アゲハ
『そうなのか?てかジュビアも魔導士だったんだな。どこのギルドだ?』

ジュビア
「幽鬼の支配者【ファントムロード】……です」

アゲハ
『へー、確かにウチとはいざこざが多いギルドだな』

やっぱり嫌われてしまうかもしれない。だけどそんなことを思っていたジュビアには予想もつかない言葉が続いてきた。

アゲハ
『でもさ、ギルド同士は仲が悪くてもオレたち個人なら仲良くなれそうだよな』

ジュビア
「!!アゲハ…さん」

アゲハ
『それじゃあ、オレは村に依頼完了の報告にいかなくちゃいけないから。またな、ジュビア』

そう言ってアゲハさんは丘を降りていく。ジュビアはアゲハさんに向かって…

ジュビア
「またいつか!!」

そう呼び掛けた。

アゲハさんは片手を上げて丘を降りた。

またいつか、絶対会いましょうね。アゲハさん。



〜Side Out〜


〜Side アゲハ〜

アゲハ
『あ〜〜、ビックリしたァ』

まさかあのタイミングでジュビアに話しかけられるとは思わなかったな。いきなりだったけど別に変なことは言ってない……よな?うん、たぶん原作の展開には影響ないだろう。気にしたら負けだ。

アゲハ
『さて、村に戻るか』

オレは村長に依頼完了の報告をするために村へ向かった。


「雨が止んだぞぉー!!」

「青空だ!太陽だ!!」

村に着くと、村人たちが雨が止んだことで喜びにうち震えていた。そしてここにも、空を見上げる少年が一人……

少年
「本当に、雨が止んだ」

そしてその少年の顔も笑顔になっていた。オレはレインフォールズのアジトに行く直前に出会った少年を見つけ、声をかける。

アゲハ
『よう、元気になったか?』

少年
「あ、あの時のあんちゃん!!」

少年がオレのいる所に駆けてくる。

少年
「あんちゃん、丘の上のやつら倒したんだね!!」

アゲハ
『ああ、言った通りサクッと潰してきたぜ』

少年が笑顔になったのをみてオレは一安心した。


ザッザッ


オレが少年と話していると足音が聞こえてきた。

村長
「夜科さん本当にありがとうございました」

アゲハ
『おお、村長じゃねえか!これから報告に行こうと思ってたんだよ。無事レインフォールズのやつらはぶっ潰してきたぜ』

村長
「ありがとうございます。これでこの村の人々の心も晴れました。報酬です、お受け取りください」

アゲハ
『おう。あ、そうだボウズ』

村長から報酬を受け取り、少年に言うことがあったと向き直る。

少年
「何?あんちゃん」

オレは少年の目の高さまで屈み目線を合わせる。

アゲハ
『もうあんな事すんじゃねえぞ。どんなときでも自分を強く持て。いいな?』

少年
「うん!」

アゲハ
『よし、オレが言いたかったことはそれだけだ。それじゃあ村長、オレはもう帰るよ』

オレは姿勢を元に戻すと帰る準備をする。

村長
「待ってください。皆あなたにお礼を言いたいのです。もう少し滞在していっては?」

アゲハ
『嬉しい申し出だけどオレを待ってくれてるやつらがいるからさ。それじゃあな!!』

そう言ってオレは村の出口へと歩き出した。

少年
「あんちゃ━━━ん!!本当にありがとう!!!」

アゲハ
『ハハッ、おう!強くなれよ━━!!ボウズ!!』

村長と少年に見送られながら、オレは村を後にした。

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