第17話 強くなろう
みんなの声が聞こえてきて……オレの意識は浮上した。
ガバッ
あれ、ここ……医務室……?
アゲハ
『あれ、オレ……一体…』
どうなってるんだ?そう思ったときに目の前から衝撃がきた。
ミラ
「アゲハ!!!!」
溢れんばかりに涙を流したミラがオレに抱きついてきた。
アゲハ
『ミラ……』
「「「「アゲハ━━━━━━━━!!!」」」」
レナ
「アゲハおにいちゃん!!!」
アゲハ
『みんな…どうしてここに……?』
見ると、ギルドのみんなが医務室に集まっていた。
ナツ
「オレたちみんなでお前が起きるよう呼び掛けたんだ!!」
グレイ
「へへっ!!うまくいったな!!」
エルザ
「本当によかった、お前が無事に起きて」
そうか……あのとき聞こえた声は……こいつらが呼び掛けてくれたものだったんだ。
アゲハ
『みんな……ありがとう。夢の中で、みんなの声が聞こえたんだ。
お前たちが呼び起こしてくれたんだな』
ホント、みんなには世話になりっぱなしだなぁ……
ミラ
「よかった…!!アゲハ……!!!」
アゲハ
『ミラ……』
ミラが弱々しく抱きついてくる。
泣かせちまったな、全くオレって奴は情けない……
ミラ
「もう大切な人を失うなんてイヤ……お願いだから……私の前から勝手にいなくならないで…」
アゲハ
『━━━…ごめん ただいま』
ミラは体をオレから放し、オレと顔を会わせると精一杯の笑顔を向けた。
ミラ
「おかえりなさい」
ミラの言葉を合図にしたかのように、ギルドのみんながオレに駆け寄ってきた。
グレイ
「ったく、このやろうが。心配かけさせやがって」
ハッピー
「ミラったらずっと付きっきりで看病してたんだよ」
レナ
「お礼を言った方がいいよ。ミラさんそれこそまるで恋びっ…ムグ!!」
ミラ
「ちょっ、レナ!!ハッピー!!恥ずかしいじゃない!!」
ミラはレナの口を塞いで顔を赤くしている。
アゲハ
『そうだったのか、本当にありがとうな、ミラ』
ミラ
「ど…どういたしまして///」
ミラが顔をうつむけながら言うと、今度はナツが話しかけてきた。
ナツ
「アゲハがいねぇと何かつまんねぇんだよ。また勝負しようぜ!!」
エルザ
「待てナツ、私の方が先だ。アゲハも私と勝負したいに決まってる」
ナツ
「何だよ!!エルザだってしょっちゅう勝負してんじゃねぇか!!オレに譲れ!!」
カナ
「アンタたち、こんなときまで喧嘩しなくてもいいでしょうが」
レビィ
「ホント、みんな騒がしすぎるよ。アゲハ、大丈夫?」
アゲハ
『ああ、みんな……心配かけてごめんな』
マカロフ
「なーに言っとるんじゃ」
アゲハ
『ジイさん……』
今まで医務室にはいなかったマカロフのジイさんが部屋に入ってきた。
マカロフ
「ギルドの者は皆家族、心配かけてなんぼじゃよ」
エルフマン
「そうだぜ、アゲハ!!」
ナツ
「オレたちは家族なんだからよ!!」
ミラ
「謝る必要なんてないのよ。自然なことなんだから」
アゲハ
『みんな……』
「「「「「おかえり、アゲハ!!」」」」」
アゲハ
『ただいま!!みんな!!』
その後しばらくの間、オレたちは互いに話し合っていたけどジイさんがまだ安静にしていた方がいいと言ったので、ジイさんだけを医務室に残し残りのみんなは医務室を出ていった。
アゲハ
『ジイさんは戻んねぇのか?』
マカロフ
「………レナから事情は聞いた」
アゲハ
『!!!』
マカロフ
「アクノロギアと戦ったそうじゃな」
ジイさんの言葉を聞いてあのときの事が鮮明によみがえってくる。
あのときは意識がもうろうとしていて確認できなかったことがあったのを思い出した。
アゲハ
『村の人たちは……無事だったのか?』
あの人達は無事に逃げ切れたのだろうか……
マカロフ
「お主のお陰でみんな助かったよ。犠牲になったのはレナの父親だけじゃ」
ビランさん……
アゲハ
『くっ……救えなかった…何もできなかった……』
マカロフ
「自分を責めてはいかん。生き残れただけでも奇跡のようなものじゃ。それにお主のお陰で村の人々は救われ、レナも生き残れたんじゃ」
アゲハ
『違う!!オレが……オレが…レナとビランさんに…救われたんだ』
あの時……ビランさんが踏み潰され、レナの叫び声を聞いた時、オレの中で何かが切れた。
アゲハ
『ビランさんの死によって、オレの中に眠る力が一時的に覚醒したんだ。レナとビランさんがいなきゃ、オレは今ここにはいない』
マカロフ
「アゲハ……」
アゲハ
『オレにもっと力があれば…………
強くなりたい!!守りたい人を、救いたい人を救う力が!!
大切な人達を守る力が欲しい!!』
もう二度と……あんな思いはしたくない。
ビランさんが殺されたときの、あの無力感。
何もできなかった自分への怒り。
もう二度と目の前で大切な人を殺させたりしない。
マカロフ
「アゲハよ、弱いことは罪ではない。支え合って人は生きているのじゃ。一人で何もかもを守ろうとせず、もっと周りを頼ったらどうじゃ?そのためのギルドじゃろう」
ジイさんがオレの肩に手を置きながら言う。
アゲハ
『そんなことは知ってるよ。というより、オレはもう十分仲間に頼ってる。
でも、それでも目の前で殺されそうになっている人を救うには力がいる。
たとえ、アクノロギアが相手だろうと……オレはもう二度と自分の目の前で大切な人を殺させはしない!!』
オレの言葉にジイさんは数秒オレの目を見つめ、そして口を開いた。
マカロフ
「お主の決意の固さは理解した。しかしアゲハ…これだけは覚えておきなさい。
道を踏み誤ることだけはするな、お主にはいつだって仲間がついておるのじゃから」
アゲハ
『ああ、肝に命じておくよ。ありがとう、ジイさん!』
オレが礼を言うと、ジイさんは頷き、出口へと向かう。
マカロフ
「それじゃあ、安静にしてるんじゃぞ」
そう言ってジイさんは医務室を出た。
夜
一人になった医務室の窓から夜空を見上げ、あの日の事を思い出す。
通用しなかった自分の力。打ち砕かれた自信。何もできない悔しさ。無力感。
それらすべてを噛み締めてもう一度1からやり直して、強くなろう。
目の前のものを守るために、
強くなろう
大切な人を守るために、
強くなろう
大切な人達と一緒に生きていくために。
マグノリアの綺麗な星空にオレは強くなることを誓った。