小説『FAIRY TAIL PSIを使って大暴れ』
作者:OR()

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第55話 貫け


━Side アゲハ━


ナツ
「いあ━━━━━━━!!!終わった終わった━━━━━━っ!!!!」

ハッピー
「あいさ━━━!!!!」

ルーシィ
「本当…一時はどうなるかと思ったよ。すごいよね、ウルさんって」

戦いが終わり、喜ぶナツとハッピーに被せるようにルーシィが言った。その言葉にグレイが少しだけ頬を緩ませる。

ナツ
「これでオレたちもS級クエスト達成だ━━━っ!!!」

ハッピー
「やったー!!!」

ルーシィ
「もしかしてあたしたち“2階”へ行けるのかなっ!!!」

グレイ
「はは…」

浮かれまくるナツたち。いやちょっと待てお前ら。

アゲハ
『何言ってんだお前ら…まだS級クエストは終わってねえぞ』

ルーシィ
「え?」

ナツ
「何でだよ!?デリオラはもう死んだんだから呪いはもう解けるはずだろ!?」

エルザ
「いや…あの呪いとかいう現象はデリオラの影響ではない。月の雫【ムーンドリップ】の膨大な魔力が人々に害を及ぼしたのだ。デリオラが崩壊したからといって事態が改善する訳がないだろう」

ルーシィ
「そんなぁ…」

ナツ
「んじゃとっとと治してやっか━━━━っ!!!」

ハッピー
「あいさ━━!!!」

グレイ
「どうやってだよ」

相変わらず何も考えていないナツにグレイがツッコむ。

グレイ
「あ」

そんな時、グレイが兄弟子の存在を思い出した。リオンに顔を向け、無言で質問する。

リオン
「オレは知らんぞ」

ナツ
「何だとォ!!?」

ハッピー
「とォ!!?」

ルーシィ
「だってあんたたちが知らなかったら他にどうやって呪いを」

リオン
「3年前この島に来た時、村が存在するのは知っていた。しかしオレたちは村の人々には干渉しなかった。奴等から会いに来ることもなかったしな」

アゲハ
『3年もの間一度も……ね』

ルーシィ
「そういえば遺跡から毎晩のように月の雫の光がおりていたハズだよね。なのにここを調査しなかったのはおかしな話よね」

ルーシィやナツたちは首を傾げる。

アゲハ
『それに月の雫の人体への影響についても疑問が残るな』

ナツ
「へ?何でだよ」

アゲハ
『リオンたちも3年間同じ光を浴びていた。けどコイツらには何の影響もない。おかしいだろ?』

ナツ&グレイ
「「あ……」」

ルーシィ
「たしかに!!!」

リオン
「気をつけな。奴等は何かを隠してる。ま……ここからはギルドの仕事だろ」

リオンはこれで話は終わりだとでもいうように顔を横に背けた。

ナツ
「ま、今回は誰も死んだ奴はいねえし村もなんとか無事だったしな。こいつの言う通りあとはオレたちの仕事だ」

エルザ
「そうだな。奴にも奴なりの正義があった。過去を難じる必要もなかろう」

アゲハ
『行くぞ』


オレたちは遺跡の出口へと向かう。その中でグレイだけは立ち止まりじっとリオンを見つめる。

リオン
「何見てやがる」

グレイの視線に気づいたリオンが問いかける。

グレイ
「おまえもどっかのギルドに入れよ。仲間がいてライバルがいて…きっと新しい目標が見つかる」

リオン
「く……くだらん……さっさと行け」

照れ隠しのように言ったリオンを横目にグレイもオレたちの元へ駆け寄り、遺跡を出た。






村へ戻ったオレたちは待っていた村人たちに出迎えられた。村人の群れから村長が出てきてオレたちに詰め寄ってきた。

モカ
「魔導士どの、村を守ってくれた事については感謝します。しかし!!!いつになったら月を壊してくれるんですかな!!!」

ルーシィ
「ひぇ━━っ!!!」

村長のあまりの剣幕にルーシィがびびっている。

アゲハ
『まあまあ村長、落ち着いて。月を壊すのは簡単なんだよ』

モカ
「!!」

グレイ
「オイ……(汗)とんでもない事しれっと言ってるぞ」

ハッピー
「あい!!」

遠巻きにオレを見ているグレイとハッピーがポツリと言った。言っとくけどしっかり聞こえてるんだからな。

エルザ
「しかし月を破壊する前に確認したいことがある。皆を集めてくれないか」



そしてしばらくして、村人が全員門の前に集まった。どうやらエルザが全部説明してくれるみたいなのでオレはおとなしく傍観している。

エルザ
「話を整理しよう。君たちは紫の月が出てからそのような姿になってしまった。間違いないか」

モカ
「ほがぁ…正確にはあの月が出ている間だけこのような姿に…」

エルザ
「話をまとめると、それは3年前からという事になる」

エルザの問いに確かにそうかも、等と賛同する村人たち。

アゲハ
『…………………』

ルーシィ
「どうしたの、アゲハ?」

難しい顔をして黙り込んでいるオレを見てルーシィが訊ねた。

アゲハ
『いや……何か忘れてるような……』

ルーシィ
「何をよ?」

アゲハ
『すごく大切な事のような……そうでもないような?』

ルーシィ
「何それ?」

アゲハ
『だから思い出せないんだって』

オレたちが話している間にもエルザは腕を組み、門の前まで歩きながら説明を続ける。

エルザ
「しかし…この島では3年間毎日月の雫【ムーンドリップ】が行われていた。遺跡には一筋の光が毎日のように見えていたハズ」

エルザがさらに歩を進めようとした時、ルーシィが作ったバレバレの落とし穴が目に入った。思い出した!!あそこにはオレが作った完璧な落とし穴が…!!エルザはルーシィの落とし穴の数歩前まで歩いてきている。

やばい!!オレが作った落とし穴まであと一歩!!!

アゲハ
『おい、エルザ!!そこから離れ…』

エルザ
「きゃあ!!!」

アゲハ
『エルザ!!!』

オレの呼び掛けも間に合わず、エルザは落とし穴に落ちてしまった。
まずい!!あの落とし穴の底にはオレが設置した槍が…!!

急いで落とし穴に飛び込もうとしたがすぐにエルザは落とし穴から這い出てきた。とっさに穴の縁を掴むことに成功したみたいだ。

ルーシィ
「エルザ!!よかった、無事だっ………ひぃいいいいいいい!!!!」





ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………






エルザ
「誰だこの落とし穴を作ったのは……さすがの私も死ぬかと思ったぞ…!!!!」

阿修羅のごときオーラを出しながら落とし穴の制作者を聞いてくるエルザ。すぐさまみんながオレの事を指差した。

アゲハ
『あ、はは……』

ダラダラと滝のように汗が流れ出る。

エルザ
「そうか、やはり貴様か…アゲハ」

やはりって何!!?エルザの中ではこういう事するのはオレっていう風に方程式が成り立っちゃってる訳!!?
エルザのオーラは更に増していく……かと思いきやいきなりプレッシャーがおさまった。

アゲハ
『エ、エルザさん…?』

エルザ
「フッ……」

エルザは笑った。それはもう美しく笑ったのだ。これから行う所業を微塵も感じさせないほどに……


カッ































5秒後…


しゅうぅ……

みんなの目には屍と化したオレと鬼のエルザが映っていることだろう。そのエルザがオーラを引っ込め、話を続ける。

エルザ
「月の光が降りていた遺跡……つまりこの島で一番怪しい場所ではないか」

「何事もなかったかのように話を続けたぞ(汗)」

「恐ろしい…」

村人たちもエルザの性格が分かってきたみたいだ。

エルザ
「なぜ調査しなかったのだ」

エルザの問いかけにざわざわと騒ぎだす村人たち。村長が代表して理由を話し出した。

モカ
「そ…それは村のいい伝えであの遺跡に近づいてはならんと……」

ルーシィ
「でもそんなこと言ってる場合じゃなかったよね。死人も出てるしギルドへの報酬額の高さから見ても」

エルザ
「本当の事を話してくれないか?」

モカ
「そ…それが……ワシらにもよく…わからんのです……正直あの遺跡は何度も調査使用といたしました。皆は慣れない武器を持ち、ワシはもみあげを整え……何度も遺跡に向かいました。しかし近づけないのです」

ナツ
「!?」

隠しきれないと悟ったのか真実を語りだす村長。しかしそれは村長たちにもよく分からないものだった。

モカ
「遺跡に向かって歩いても…気がつけば村の門。我々は遺跡に近づけないのです」

ルーシィ
「ど…どーゆう事?」

ナツ
「オレたちは中にまで入れたぞ!!ふつーに」

「こんな話信じてもらえないでしょうから黙ってましたが…」

「本当なんだ!!!遺跡には何度も行こうとした!!だがたどり着いた村人は一人もいねんだ」

村人たちが嘘入ってないと言うことを必死に訴える。それを予測していたかのようにエルザは言った。

エルザ
「やはり…か」

ルーシィ
「え?」

エルザ
「アゲハ、起きろ。仕事だ、月を壊すぞ」

エルザの呼び掛けに応え、屍状態から復活するオレ。立ち上がってエルザの話を聞く。

アゲハ
『はいはいっと……それで?オレは何をすればよいのでしょうか、エルザ様』

エルザ
「本当は分かっているくせにとぼけるな。暴王の流星【メルゼズ・ランス】で月を貫くんだ。できるな?」

アゲハ
『当たり前だ』

ざわざわっ

月を壊すという発言にみんなが騒ぎ始める。

グレイ
「月を壊すって…さすがのアゲハでもそれは無理…だよな」

ルーシィ
「でもアゲハならホントにやっちゃいそうで怖いんだけど……」

バチバチ……

準備完了!!いつでも行けるぜ

アゲハ
『それじゃあやるぞ!!暴王の流星!!!』


ビィン


放たれた黒い流星は真っ直ぐ天に向かって伸びていき、月を貫いた。ピキィ、という音と共に月にヒビが入る。

グレイ&ルーシィ
「「うそだぁ━━━━━━━━━━━━━━━━っ!!!!」」

月に入ったヒビはみるみる広がっていく。



ピキピキ…

パキィイイイイン




「え!!?」

ナツ
「月!!?」

モカ
「これは…」

ルーシィ
「割れたのは月じゃない……空が割れた……?」

ヒビが入り、割れたのは月じゃなく紫色の空だった。今、オレたちの上には普通の月が現れている。

ナツ
「どうなってんだコレぁ!!!」

エルザ
「この島は邪気の膜で覆われていたんだ」

ハッピー
「膜?」

エルザ
「月の雫によって発生した排気ガスだと思えばいい。それが結晶化して空に膜を張っていたんだ。そのため月は紫に見えていたという訳だ」

オオオオオオ……

膜が破れ、村人たちの体が光り出す。

エルザ
「邪気の膜は破れ…この島は本来の輝きをとり戻す」

しかし村の人達の姿は変わらず、悪魔の姿のままだった。

グレイ
「元に…戻らねぇのか?」

ハッピー
「そんな…」

アゲハ
『うんにゃ、これでいいんだ』

エルザ
「そう…邪気の膜は彼等の姿ではなく記憶を冒していたのだ」

ナツ
「記憶?」

アゲハ
『≪夜になると悪魔になってしまう≫という間違った記憶だ』

ルーシィ
「ま…ま…まさか…」

エルザ
「そういう事だ。彼らは元々悪魔だったのだ」

村人たちは皆真実を知り、戸惑っている。ルーシィはというと、ショックのあまり悲鳴をあげていた。

グレイ
「ま…マジ?」

「う…うむ……まだちょいと混乱してますが……」

アゲハ
『コイツらは人間に変身する力を持っていた。月の雫による記憶障害で人間の姿の方を本来の姿だと思い込んじまったんだな』

ルーシィ
「でも…それじゃあリオンたちは何で平気だったの?」

エルザ
「奴等は“人間”だからな。どうやらこの記憶障害は“悪魔”にだけ効果があるらしい」

そんな時、村に聞き覚えのある声が響いた。

ボボ
「さすがだ……君達に任せてよかった。魔導士さん、ありがとう」

そこにはオレたちがここに来る為に船を出してくれた船乗りのボボがいた。

ルーシィ&ハッピー
「「幽霊!!!?」」

アゲハ
『ンな訳ねえだろ』

グレイ
「船乗りのおっさんか!!?」

モカ
「ボ…ボボ……」

「え…!?だって…ええ!!?」

ボボ
「胸を刺されたぐれェじゃオレたちは死なねぇだろうがよ」

はははっと笑いながら言ったボボ。何気すごいな胸を刺されても死なないって……

グレイ
「あ、あんた…船の上から消えたろ」

シュッ

グレイが訊ねると、ボボは羽根を生やして空を飛んだ。

ボボ
「あのときは本当の事が言えなくてすまなかった」

グレイ
「おおっ」

ボボ
「オレは一人だけ記憶が戻っちまってこの島を離れたんだ。自分達が人間だと思い込んでいる村の皆が怖くって。ははっ」

村長はボボの姿を見て、泣きながら羽根を生やし、ボボのところに飛んでいった。

モカ
「ボボォ━━━━━!!!!」

ボボ
「やっと正気に戻ったな、親父」

それを見ていた他の村人達は、同じように羽根を生やし空を飛び始めた。

「生きてた━!」

「ボボが生きてたぞ━━━」

「やった━━━━っ!!!」

「めでたいぞ━━━!!!」

エルザ
「悪魔の島か…」

それを見ていたエルザが呟いた。

ナツ
「でもよ…皆の顔見てっと……悪魔ってより天使みてーだな」

ナツの一言に皆が微笑んだ。

モカ
「今夜は宴じゃ━━━━!!!悪魔の宴じゃ━━━!!!」

ルーシィ
「なんかすごい響きね…それ……」

ハッピー
「あい…」

アゲハ
『だな…』

この村のイメージと合わない(汗)

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FAIRY TAIL 31 講談社キャラクターズA ([特装版コミック])
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