小説『FAIRY TAIL PSIを使って大暴れ』
作者:OR()

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第59話 守りたいから


━Side アゲハ━


アゲハ
『ジイさん……』

マグノリアの東の森にある木の家、ポーリュシカさん宅でオレはジイさんをCUREで治療している。アルザックとビスカもついてきた。

ポーリュシカ
「マカロフ……」

オレが治療をしているジイさんにツカツカとポーリュシカさんが歩み寄ってくる。そして…


パチン


ジイさんの頬をビンタした。

アゲハ
『ゲッ!!』

アルザック
「ちょ…ちょっとォ!!!」

ビスカ
「マスターに…いや…ケガ人に何て事するんですか!!!」

アルザックとビスカが抗議の声をあげるがポーリュシカさんは鼻を鳴らし無視した。

ポーリュシカ
「年甲斐もなく無茶をするからこんな事になるんだ。まったく…バカな男だね。あんたらもいつまでいるんだい!!アゲハ以外はとっとと帰りな!!」

あ、オレはいてもいいのか、治療できるから。

アルザック
「しかし…マスターの容体が……」

ビスカ
「私たちにも看病させてください」

ポーリュシカ
「帰りな。辛気くさい顔は病人にとって一番の毒だよ」

ジイさんの側に留まろうとするアルザックとビスカだがポーリュシカさんの言葉に何も言えなくなった。

アゲハ
『“風”の系譜の魔法、枯渇【ドレイン】。対象者の魔力を流出させてしまう魔法……流出した魔力は空中を漂い、やがて消えてしまう。漂ってるジイさんの魔力を集められたらもっと回復も早かったんだけどな』

ポーリュシカ
「もう遅いね。それにマカロフはドレインだけじゃなく心臓の発作も同時に起きてしまった…こいつは長引くよ」

そう…ジイさんはファントムに乗り込んだ際、思念体のジョゼを目の前に突然心臓の発作が起きた。その隙を突かれてアリアからドレインを食らってしまったようだ。そのせいかCUREを使っても中々回復しない。

アルザック
「そ…そうですか…」

ビスカ
「皆に伝えておきます」

病状を聞いたアルザックとビスカが交互にしゃべった。そんな二人にポーリュシカさんが反応する。

ポーリュシカ
「アンタらまだいたのかい!!」

アルザック
「ええっ!!?“聞いてくれ”みたいな空気じゃなかった!!?」

ポーリュシカさん…さすがにそりゃ理不尽ってもんだぜ……

ポーリュシカ
「とっとと帰りな!!人間臭くてたまらん!!!」

アルザック&ビスカ
「「ヒィー!!失礼します!!!」」

箒を振り回して追い出そうとするポーリュシカさんから逃げるようにアルザックとビスカは家を出ていった。

アゲハ
『ちょっとやりすぎじゃねぇのか?』

ポーリュシカ
「フン、いつも言っているだろう…私は人間が嫌いなんだ」

アゲハ
『オレもか?』

ポーリュシカ
「当たり前さ、アンタは治療ができるから追い出さないだけだよ」

アゲハ
『ハハ、ひでぇな』

そんな事を言いながらもこの人はちゃんと妖精の尻尾のみんなを治療してくれるんだよな……

アゲハ
『ポーリュシカさんとオレがついてるんだ。ぜってー死なせねぇかんな、ジイさん!』

オレはさらにCUREに力を注ぎ込み、治療を続けた。



━Side Out━





━Side レナ━



「あ━━くそっ!!!」

「まさかオレたちが撤退するハメになるとは!!」

「ギルドやレビィたちの仇もとれてねえ!!ちくしょオ!!!」

じーちゃんがやられて、私たちはやむなくファントムから撤退した。アゲハ兄はじーちゃんの治療をしにポーリュシカさんの家に行っている。私は運よく無傷だったけど…ほとんどの人がケガをしている。

次に攻め込む時のために作戦を立てたり準備をしたりするみんなを見てルーシィの表情が暗くなる。

レナ
「ルーシィ……」

私たちがギルドに撤退してきたすぐ後にアゲハ兄がルーシィと一緒にギルドに戻ってきた。アゲハ兄はギルドのみんなにルーシィについての大まかな説明をした後、すぐにじーちゃんを治療しに行ったため、詳しい事はルーシィ本人から聞いた。だからルーシィが悪くないこともルーシィが自分を責めていることもよく分かった。

グレイ
「どーした?まだ不安か?」

ルーシィ
「ううん…そういうのじゃないんだ……なんか…ごめん」

エルフマン
「まぁ金持ちのお嬢様は狙われる運命よ。そしてそれを守るのが漢」

グレイ
「そういう事言うんじゃねえよ」

エルフマンの空気の読めない発言にグレイがツッコむ。

レナ
「でも私も驚いたよ。ルーシィ何で隠してたの?」

ルーシィ
「隠してた訳じゃないんだけど…家出中だからね……あまり話す気にもなれなくて……」

俯きながらも話し出すルーシィ。みんな静かにルーシィの話を聞いている。

ルーシィ
「一年間も家出した娘に関心なかったクセに……急に連れ戻そうとするんだもんな……パパがあたしを連れ戻す為にこんな事をしたんだ……最低だよ」

ナツ
「……………」

ルーシィ
「でも…元を正せばあたしが家出なんかしたせいなんだよね」

エルフマン
「そ…そりゃ違うだろ!!悪いのはパパ「バカ!」あ…いや、ファントムだ!!!」

レナ
「アゲハ兄も言ってたでしょ、ルーシィのせいじゃないって」

ルーシィ
「ううん、あたしのせいだよ。あたしの身勝手な行動で……まさかみんなにこんなに迷惑かけちゃうなんて…本当にごめんね、あたしが家に戻ればすむ話なんだよね」

ナツ
「そーかなぁ」

なおも自分を責め続けるルーシィにナツが言った。

ナツ
「つーかよ、“お嬢様”ってのも似合わねえ響きだよな」

ルーシィ
「!」

ナツ
「この汚ねー酒場で笑ってさ…騒ぎながら冒険してる方がルーシィって感じだ。ここにいたいって言ったよな。戻りたくねえ場所に戻って何があんの?妖精の尻尾のルーシィだろ、ここがお前の帰る場所だ」

ナツの言葉にルーシィが涙をにじませる。すごいな、ナツ。ルーシィの事、ちゃんと理解してるんだ……

グレイ
「泣くなよ…らしくねえ」

エルフマン
「そうだ!!漢は涙に弱い!!!」

ルーシィ
「だって…」

ついにルーシィは泣き出してしまった。みんなでなんとかルーシィを宥めていると誰かの視線を感じた。正確にはルーシィに向けた視線に…

レナ
「……ロキ?」

なんとなくこの視線はロキからのモノだと直感した。確証はないけど。



ズウゥン


レナ
「!!!」

突然地響きが聞こえてきた。何処から!?


ズウゥン


「な、何だ!!?」


ズゥン


ルーシィ
「…………」


アルザック
「外だ━━━━━!!!!」


アルザックの声に反応して私たちは外に出る。


ズシィン


レナ
「何なの…アレ…!?」

ワカバ
「ギルドが歩いて……」

マカオ
「ファントム……か!?」

私たちの目の前には六本の足で歩いてこちらに向かうファントムのギルドだった。

エルザ
「想定外だ………こんな方法で攻めてくるとは……ど…どうする!!?」

予想外の攻め方に戸惑っているとファントムは足をしまって次に巨大な大砲を出してきた。みるみるその大砲に魔力が集まっていく。

エルザ
「マズイ!!魔導集束砲“ジュピター”だ!!!全員伏せろォオォ!!!」


キュイィイイイイ……


レナ
「エルザ!!?」

魔力が集束されていく中、エルザが前に進み出る。エルザは鎧を換装しながら走り出す。

「換装!!?」

「オ…オイ!!!」


エルザ
「ギルドはやらせん!!!!」

「金剛の鎧!!」

「まさか受け止めるつもりじゃ……」

「いくら超防御力を誇るその鎧でも……」

「よせ!!エルザ!!死んじまうぞ!!!」

そんな…!!いくらエルザでも無茶だ!!あんなの食らって無事に済むはずがない!!!

ナツ
「エルザ!!」

グレイ
「ナツ!!ここはエルザを信じるしかねえんだ!!!」

ルーシィ
「うぁ…………え!?レナ!!アンタ何やってんの!!戻りなさい!!!」

エルザ
「何っ!!?」

心配かけてごめんね、みんな。でも今あの攻撃を防げるのは恐らく私だけ……

私はエルザよりもさらに前方の上空に“紅ノ天使【クレナイ】”を使って留まる。


エルザ
「そこをどけ!!レナ!!」

レナ
「どけないよエルザ。私は守りたいから…私の大切な家族と家を守りたいから…!!!」

アゲハ兄と一緒に特訓したこの技で、絶対に止めて見せる!!!

レナ
「はぁあぁあああぁああああ!!!!」

クレナイの魔力を目の前に球状にして圧縮した後、エネルギー体にさらに魔力を送り込み、巨大化させる。そして私はそれをくるりと体を反転させ、思い切り蹴り放った。

レナ
「クリムゾン・ノヴァ!!!!」


ドギャン!!! ドゴォォ!!!


クリムゾン・ノヴァが蹴り放たれたのと同時にファントムからもジュピターが放たれた。





ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ





エルザ
「凄い威力だ!!もしかするとこれなら……」

グレイ
「いや、徐々に押し負けてきている!!!」

湖の上でクリムゾン・ノヴァとジュピターがぶつかり合い、せめぎあっている。けどまだ私の方がパワーが弱い。このままじゃ受け切れない…!!

レナ
「もう……一、発っ…!!クリムゾン・ノヴァ!!!!」


ドゴゥッ!!!!


新たに放ったクリムゾン・ノヴァがジュピターに向かっていく。



カッ







ドォオオオオオオオオオン!!!








爆音と共にジュピターは消し飛んだ。もう魔力が空っぽだ……

レナ
「っ!!爆風が……きゃあっ!!!」

ナツ
「レナ━━━━━!!」

ジュピターを消し飛ばしたときに生じた爆風によって私の体が吹き飛ばされる。“紅ノ天使【クレナイ】”が解けてしまった私の体はどこまでも飛ばされていく。

エルザ
「レナ!!」

ガシッ

私の体はエルザによってしっかりと受け止められた。ナツとグレイが駆け寄ってくる。

グレイ
「大丈夫か、レナ!!」

ナツ
「無茶しやがって!!ケガねぇか!?」

レナ
「うん……ギルドのみんなは…無事?」

エルザ
「ああ、お前のお陰でな。ありがとう」

レナ
「えへへ。みんな……もう私……魔力空っぽに…なっちゃった……あとは……頼むね…」

エルザ
「ああ、任せておけ。絶対に勝つ」

ナツ
「安心して寝てろよ」

レナ
「うん……」

襲い来る睡魔に勝てず、私は意識を手放した。


━Side Out━

-60-
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