小説『テンプレなオリ主モノ』
作者:アゲハ()

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「この世に真実はない。有るのは真実という名の嘘だけ」

―オレは、決して見捨てたりしない。決して殺したりしない。決して独りにはしない。悲しませない。不安にさせない。穢れさせない。汚れさせない。傷つけない。護って見せるさ。必ず。絶対に。
―本当?
―誓うよ。他の誰でもない、お前自身に。
―本当に?
―本当だ。約束だよ。
―うん。


 何か、大切な何かを見ていた気がする。俺が、俺が「オレ」の頃に視た?何を?何処で?何時?オレ?俺じゃなく、オレ?
「だけど、俺は、オレは嘘を付いたんだろうか・・・?」
何か、大切な記憶だった筈だ。なのに、こんなにも、こんなにも悲しいのは何故だろう?嘘を付いたんだろうか?オレは・・・?俺は?


「それにしても、朝倉。お前どうすんのさ?」
「え、衛宮先生・・・」
「応。てめーの大好きな衛宮先生だぞ」
「せ、先生・・・。朝倉さんに・・・」
「知ってるよ。つーか先刻まで聞いてたからな」
此奴、本当に魔法使いに成りたいのかねぇ。
「えっ!?衛宮先生も関係者!?」
「応。少なくとも、ネギ坊主よりかー強い」
此奴、本当に弱いからな・・・。それでも頭は良いからまだマシか・・・。
「おい、朝倉とカモミール。次、一般人に何かしよーとしたら・・・。生まれて来た事を後悔するぐらいのお仕置きをしてやる・・・」
ククッ、ビビってんな。煙草を咥えながらだから、相当怖かったか?
「それと、朝倉」
「ハッハイ」
「お前、如何するんだ?」
「えっ?」
魔法の事を知っちまたんだ・・・。裏世界の状況とか知らなくてもいい事を、此奴は集めそうだからな・・・。
「危ないことしかないぞ?辞めるなら今の内だ」
紫煙を吐きながら、覚悟を問う。
「アスナ、てめーもだ。危険しかねーぞ。俺は出来る限りお前等を護るつもりだが、俺だって、十全でも完璧でも完全でも完成されている訳じゃないんだ。出来無い事なんて沢山あるぜ?完全に完璧に十全に守りきれる自信はない」
断言する。俺は完成された人間でも、聖人君子でも何でもない。唯の化物だ。化物は狂ったように戦うことしか出来ない。守ること、救うこと、護ること、助けることなんて、人間の仕事さ。管轄外だ。化物は、殺して壊して滅茶苦茶にする事しか出来ない。

狂っているからこそ、自分以外の誰かの為に戦う。化物は、何時だって狂っているんだ。

「ガキの友情ゴッコじゃなく、てめーの意志で、てめーの為に戦う覚悟は有るのか?」
覚悟の無い奴は足でまといでしかない。自分の意志で、自らの意思で戦うと決めなければならない。責任を誰かに押し付けるのではなく、自分で果たす。
「その覚悟が出来るのなら、好きにすればいいさ」
紫煙を吸いながら、俺は去る。
「決めたんなら、俺に言え。テメーの覚悟を。誰かの所為にせず。自分の罪を受け入れ、それでも進むのなら」
嫌われ者は、慣れている。何時か、きっと罪を背負う。この世界は綺麗事だけじゃ生きていけない。優しい世界なんて、唯の幻想だ。誰もが願う、悲願でしかない。


「優しのですね。先生は」
刹那か・・・。先刻の事か。
「何処がだよ。優しいなら、もっと良い言い方ややり方があったさ。俺は唯の化物だよ。人でいることが出来なかった、弱虫さ。弱くて脆くて薄い。化物は体は強くても、心が弱い。だから、狂ったんだ」
成って果てる。成れの果て。それが化物の運命さ。刹那自身は自分を化物と思ってるみたいだが、違う。彼女は強い人間だ。
それでも彼は、化物に成る事無く、体を剣にし続けた。俺は、体は剣でも何でもない。
「硬い剣なら、きっと楽だったんだろうな・・・」
呟いた言葉は、風に消された。
心は硝子でも、独りでも、きっと彼は戦い続けたんだろう。人を救う為に。故に偽物。狂った結果。人の為の物でしか成れなくなった、可哀想な剣(ヒト)。
「先生、今なんて?」
「何でもないさ」
何でもない。何もない。空虚。伽藍堂の化物。
「誰かの為に・・・」
紫煙と共に言葉も消えた。
「戯言さ。きっと」
そうだ。きっと、戯言だ。
「行こうか」
「ハイ」


いい笑顔だな。つくづくそう思う。彼女達は、戦いを知らなくていい。汚れるのは穢れるのは、俺だけで十分だ。
「刹那、ネギ達は俺が行く。彼奴、あの白髪の少年が出てきたら確実に殺されるからな」
「なっ!?其れ程の実力何ですか?」
「あぁ、お前でも逃げるのが精一杯だろうな。彼奴等は、戦闘に関しちゃ素人過ぎる。だから、俺が彼奴等に付く。序にレクチャーしてやるから、その間、一人で大丈夫か?」
「ハイッ!一応、式神を付けておきます」
「あぁ、頼んだ。それと、」
「何ですか?」
「本来なら、お前も楽しんでる予定だったのにな。悪い」
そう言って、俺は刹那の頭を撫でた。
「大人の欲望や汚い所に巻き込んで・・・。本当にごめん」
ガキ共に、世話焼かれちゃ、大人失格だよ。ホント。
「せっ、先生・・・」
「ククッ、中学生にする事じゃなかったな。悪い。頼んだぜ、刹那」
「ハイッ!」
そして、ごめん。俺はこれから起こることを知ってるのに。護衛を一人にするのは得策じゃない。だけど、朝にネギ達を揺さぶったせいで、不安定だ。あの常態じゃ、最悪殺される。護るんだ。全員を。

「結界か・・・。忘れてたよ」
―結界、解析。
「で、其処にいるんだろ?三番目」
―敵、接近。
―魔法発動、確認。
―投影開始。
剣の丘から出すのは、破魔の槍。
「抉れ、破魔の紅薔薇」
真名解放、瞬間に石の槍は消える。
「面白い武器を持っているね。前回の黒い剣。それにその、紅い槍。君は危険だ。だから、此処で退場してもらう」
「ハッ、人形如きが俺を倒すのか?冗談は休み休み言え。三番目」
瞬間、奴の指からビームが出た。男のロマンじゃないか!!
「石化のビームか・・・。ロマンも理解できん奴が、ビームを出すな!!」
石の槍、芸のない奴め。
「結界展開」
瞬間、結界が展開される。範囲は五キロと言った所か・・・。
「バベルガ・グラビドン」
重力によって押しつぶされな。
「ガハッ」
「弱いな。地のアーウェルンクスよ。弱過ぎだぜ?相性的に、地よりも重力の方がいいに決まってんだろ?」
まぁ、デイオガ級以上だからな。中々効いた筈だ。
「トドメだ」
俺はジャッカルを投影し、銃爪を引いた。
「やはり、意識があったか。人形が」
面倒臭い事になってきたな。俺の知識も曖昧だから早めに此奴を殺したいんだけどな・・・。
「君は、一体何者だ・・・?」
「通りすがりの一般人さ」
戯言だけどな。
「重力は相性が良いが、お前自身にも相性が良かったか・・・。流石地のアーウェルンクスだな。なら、」
大気が凍てつき始めた。
「氷碧眼(ディープ・フリーズ)」
「ッ!?魔力の反応がなかった?」
当たり前だ。法則が違う。魔力を素ににしない法則を、魔力の法則で感知しようなんて、原始人に物理を教えるようなもんだ。勿論、障壁なんて意味をなさない。
「大気を凍てつかせる程の魔法。なのに、感知が出来なかった・・・。君は一体・・・」
氷の槍を作り、放つ。
「クッ!?」
石で盾を作ったか・・・。正確で正解な判断だ。だが、
「大気が凍てついた。完全に凍る前に俺を倒すか、逃げるべきだったな」
此処はもう、俺の領域だ。逃げ場など無い。
石も、砂も。全て凍りつき、水すらも瞬間に凍る。
「貴様は水の瞬間移動を使うだろう?だが、これでは逃げきれない。貴様の負けだ、アーウェルンクス。死ね」

―結界内に四体の生体を確認。

「何!?」
これは・・・間違いなく、彼奴等だ。彼奴等め、都合が悪すぎる・・・。
「どうやら、潮時だ。三番目」
―結界、解除。
景色が、戻っていく。
俺と三番目が向かい合う形で対峙している。
「?!衛宮先生!?」
「それに、あの白髪の少年!?」
邪魔。正直、超邪魔。うん。邪魔過ぎる。お前等さえいなければ、アーウェルンクスを此処で仕留めれたのに・・・。恐るべし、歴史の修正力、かぁ。
「どうする?続けんのか?」
「確かにさっきと違い、人質があって形勢逆転と思うが、それでも勝率は低いままだ」
「理解してんじゃねぇか、三番目。テメーを今此処で殺すのがどれだけ容易いことか・・・」
―プログラム、構築。
―構築完了。
「教えてやるよ」
(ネギ、衝撃用の魔法防壁を貼れ!!)
テレパスでネギに直接指示を送る。
俺のテレパスと同時、太陽の光が無くなった。
「何ッ!?」
「日輪‘天墜’」
桁外れのテレキネシスは、太陽の光すらも操る。太陽の光を捻じ曲げ、墜とす。それだけで、肉の深部を一瞬で炭化させる。
「避けたんだろ?人形・・・」
「是程とは・・・」
ふーん。左腕だけか・・・。だが、
「これでお得意の八卦掌か?まぁ、中国拳法が出来ねぇな」
「そこまで解ったのか・・・」
「やっぱりな。独特な動きだったから、中国拳法だと思ったが、確証がなかった。だが、中国拳法で八卦掌の使い手か・・・。おいおい、そんな簡単に情報くれるのかよ」
(ネギ、まだ持つか?)
(もう持ちません・・・。今の障壁で、限界です・・・)
(全員の被害状況は?)
(さっきの戦闘での傷以外は、大丈夫です・・・)
―戦闘中断が最善と判定。
―戦闘離脱率、100%。
「僕もダメージが深刻だ。此処で、引き分けにしないかい?」
カイジネタだと!?彼奴、中々やりやがる・・・。糞、シリアスシーンじゃなけりゃ、乗ったのに・・・。
「ケッ、引き分け?俺の勝ちだろうに。今なら、多少の犠牲だけで貴様を殺せる。ネギに後遺症が残ろうが、今此処で貴様を殺す方が価値がある」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!あんた、何勝手に」
「此奴、多分戦争でも起こす気だぜ?この京都の事件の黒幕だ。何故なら、西洋魔術師だもんな、お前。それに、前世代の負の遺産。『完全なる世界』だったけ?」
揺さぶってみたらあら不思議。
「貴様!?何処でその情報を・・・!?」
俺はCADを取り出し、
「アンタ、邪魔なんだよ。俺の生徒の安全保障の為に、死ねや」
引き金を引いた瞬間、テレポートしやがった・・・。
「貴方は危険だ。だが、此処で戦えば僕は負ける・・・。引かせて貰うよ」
「ちっ、待やがれ!!」


行ったか?
「大丈夫か?」
「アンタ、何平然と心配してんのよ!?ネギを見捨てようとしたのに!!」
・・・・・ハァ。馬鹿だ。此奴、馬鹿過ぎる。
「戦力差を考えて、ハッタリ効かせただけだぞ?それすらも理解できんのか?」
馬鹿過ぎる。
「テメー等の安全保障の為の名演技だったろ?俺、役者の才能あるな・・・」
そんなことより、剣の才能ください・・・。
―半径5キロ敵発見、不可。
取り敢えず、山は超えたな・・・。
「ハッタリって、どういうことよ・・・」
「カモミール、説明頼む・・・俺面倒なんでパス」
「合点承知だ、旦那。姐さん、旦那は俺達が限界なのを見越して、ハッタリを効かせて逃がしたんだよ。これ以上戦ったら、兄貴がヤバイからな」
「なっ、成程・・・」
「それすらも理解できんのか?お前は・・・。だから馬鹿なんだよ、馬鹿」
ハァ、馬鹿さ加減に溜息しか出ん・・・。
「刹那縮小版。そっちの状況は?」
「!?本体の方で何か!?」
「チッ、やはりな・・・。俺は行くぞ。お前等は休んでから来な」
俺は、髪の毛からダイヤだけを出現させた。まだ、完璧な具現化は出来んか・・・。
「せっ、先生、その、頭は?」
「ん?『どこでも行ける魔法の帽子』さ」
ダイヤを右に回す。
「刹那達の居る所へ」
間に合えよ・・・!!

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