小説『テンプレなオリ主モノ』
作者:アゲハ()

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「堪らない、止まらない、この世界」

―――結局世界は、変わらない―――

―あぁ。手が赤い。
 見渡すと、そこは一面が火の海と化していた。
―あぁ。手が朱い。
 見渡すと、そこは死体の山と化していた。
―あぁ。手が紅い。
 見わたすと、そこは地獄以外表現できない場所となっていた。
―あぁ。手がアカイ。アカイアカイアカイアカイ。汚れは取れず。穢れは落ちず。この手はアカク、染まっていく。

―――何故、こんなにも、アカイノダロウ・・・―――

―少女が叫んだ。助けてくれと。
 だから殺した。
―少年が叫んだ。恨んでやると。
 だから殺した。
―青年が叫んだ。呪ってやると。
 だから殺した。
―老人が叫んだ。殺してやると。
 だから、だからだからだから、だからだからだから!!全部を壊し、全員殺した。殺し尽くした。世界は止まらず、オレも止まれない。

――全ては彼女の為。そう、言い訳した―――

―叫んだ。誰か助けてくれと。
 叫びは聞こえず、加害者は何も言えない。
―殺した。叫び続けながら。
 叫びは聞こえず、罪人は更に罪を重ねる。
―騙した。彼女の為にと言いながら。
 言葉が聞こえた。言葉は嘘になり更に重なる。
―壊れた。結局器の小さな俺には耐え切れなくなった。
 器が壊れ、自身が破綻した。彼女の為にと願った世界が、彼女の為にと望んだ世界は、結局俺には作れなかった。

―――優しい世界―――

―欲しかったのは結果。誰もが笑って、誰もが幸せな、最高なハッピーエンド。
―欲しかったのは彼女。彼女が笑って、彼女が幸せな、最良のハッピーエンド。
―何も無かったオレに、空っぽだったオレに、中身を与えてくれた。だから、彼女の為と信じ、全て投げ出した。
―結局、最後に見れた彼女の顔は、泣き顔だった。
―そして、

―――ごめんなさい、と――――

―彼女は、そう言った。
―それは何かを後悔している様な顔だった。
―それは何かに赦しを請う様な顔だった。
―それは何か大事なものが無くなったような顔だった。

―――違う――――

―そんな顔、して欲しくなかった。
―だから、戦った。殺した。壊した。潰した。
―結局オレは、何も守れず。本当に笑って欲しかった人には、

―――笑ってもらえなかった――――

―これは罰だ。
 咎人であるオレの、多過ぎる罰の一つ。
―これは罪だ。
 罪人であるオレの、多過ぎる罪の一つ。
―あぁ。手が赤い。見えなかった赤さが、見えるようになった。
―あぁ。手が朱い。重すぎる罪が罪人に蘇り、思い出し始めた。
―あぁ。手が紅い。醜い化物が罰を背負い、子供を守り始めた。

―――化物は、何かを救うことが出来るのでしょうか?―――
―――醜い化物は、何かを守護することが出来るでしょうか?―――
―――穢れた化物は、何かを救うことが出来るでしょうか?―――

―――御伽噺は続く―――

―世界はそれを望んでいる。
―世界がそれを願っている。
―化物は、誰かの為にのみ動き続ける。
―神は、御伽噺を読み続ける。
―願いに敗れ、望みを壊した狂ったニンゲン。
―彼は化物に成り、何かを守護する。
―オレは俺に成り、俺は化物に成れ果てた。
―故に歩み続ける。
―体を剣に変え、
―存在を化物に変えた、俺は。
―この道を、歩み続ける。

  誓おう。この身に変えても守護し続けよう。この命、尽きるまで。そして、この命を最後に、俺は彼女の元に行けるだろう。まずは、謝らなきゃな。そして、
「そしてらもう一度、さよならだな」
「?」
「あぁ。何でもないよ。何でも」
 誤魔化しに頭を撫でようとしたが、止める。
―朱い。
 手が。
―紅い。
 掌が。
―赤い。
 腕が。
―アカイ。
 全てが。
 手が赤い、紅い、朱い、アカイ。それは、赤くて、紅くて、朱くて、アカイ手。決して落ない汚れ。呪い。罪。この手で触れれば、汚れが付いてしまいそうな。そんな気がする。気がするだけなのに・・・。
 どうしてこんなに怖いのだろう?どうしてこんなに恐ろしいのだろう?
「戯言だな・・・」
「先生、どうしたんですか?」
「何でもないよ。それより、少し休みたいんだが・・・」
「すみません!!先生は連戦でしたね!!」
 本当は疲れてなどいない。そもそも疲れない。ただ、我慢できないだけだ。
「そうだ。ネギ達はチビ刹那で場所を把握しているな?」
「はい!」
「ならそこで合流だ。それまでこのかを頼む」

 彼女達から離れ、人気のない裏路地で、我慢できなくなる。
「ガハッ、ゲホッゲホッ、ゲホッ、」
 咄嗟に、口を手で覆う。口からは、粘着質のアカイ液体が出てきた。あぁ、このアカだ。手から落ない、穢れたアカ。我慢ができない。
「ゲホッ、グハッゲッ、ガハッ、」
 止まらない。
 止まらない。
 止まれない。
 もう、遅い。
 時間制御を使いすぎた反動で、体中の機能がイカれ、もうすぐ死ぬ。とは言っても、あと3年はある。それだけあれば、大丈夫。大丈夫だ。歩みを止めるには足りない。
「ククッ、まだ、まだ大丈夫だから。みんなを護れるから。だから、あと少し、我慢をしてくれ。大丈夫だろ?体は剣で出来ているんだから・・・。ツギハギでもいい、立ってくれ・・・」
 そうだ。体は剣で、化物だ。大丈夫じゃない筈がない。お願いだから、保ってくれ。でないと心配される。それはダメだ。俺は教師だ。心配する側なんだから。
―限定的封印術式を解除。
―常時治癒術式、並びに自己再生能力を発動。
―常時治癒術式改変、完了。
「壊れかけ、かぁ・・・」
 心体共に壊れかけ。この状態は、何時まで誤魔化せるだろう?
「ゲホッゲホッ、」
 まだ大丈夫。
「行くか・・・」
 まだ、まだ大丈夫だから・・・。
 きっと・・・・。
 ナマヌルイ液体を拭い、歩き出す。歩みだす。もともと、二度目の人生さ。好きに暴れよう。出来なかった事を、果たす為の人生さ。死など恐れはしない。
「今が最高だ。俺の『モノサシ』ではかって、最高なんだからよ」
 そうだ。今が『最高』なんだ。他人になんて言われようが、止まれないし止まる気なんてない。
「男は自分の『モノサシ』を杖にして、泣きながら強くなっていく、かぁ。俺は今、『強く』なれているかな?」
 誰が為に。それが俺の『最高』だ。『最高』を杖にして生きているんだ。『強さ』以外、何でもないさ。
「さぁ。余生には十分の価値がある。余りにイカした俺の人生だ。のんびり出来ねぇぜ」

「すまないねぇ遅くなっ、ってあれ?」
「せ、先生・・・」
 ふむ。どうやら、
「付けれれたのか・・・?」
「はい・・・」
 我が教え子ながら恐ろしい行動力だな・・・。朝倉辺りがGPSでも付けたんだろう・・・。ホント、パパラッチだなぁ、此奴。
「朝倉、後で説教フルコースだ。覚悟しとけよ?」
「え゛ッ!?」
 プライバシーはちゃんと守れ。
「「ええ〜〜〜」」
 ふむ。もう本山に着いたか。それと説明は刹那がしてくれているな・・・。
「あぁっ!?」
『!?』
「八ツ橋食ってねぇ!?」
『そこ!?』
 何を言うか!?彼の有名な戯言遣い曰く、京都と言ったら八つ橋。という名言まであるんだぞ!?八ツ橋を食わずして京都とは、片腹痛し!!
「八ツ橋を食わずして、何が京都だ!!」
『全京都府民に謝れ!!』
「てめぇらが、京都を語るな!!」
『お前が言うな!!』
「八ツ橋のを知らないということは、京都を八割知らないということだ!!」
『なんでやねん!?』
 どうやら本山の方々と仲良くなれたみたいだ・・・。先生安心だ。まさか、此処に居る全員からツッコミを受けるなんて・・・。先生吃驚だよ。
「ふむ。流石、関西弁。お笑いの総本山地方だけあるな・・・。此処に居る全員がツッコムとは・・・。さては貴様等、グルだなッ!?」
『違ぇよ!!』
「騒がしいと思ったら、愉快なお客様がお来しみたいですね・・・」
 突如背後からの声。気配が察知出来なかった・・・。相当の手練か?
―戦闘準備、完了。
―魔力回路、魔力潤滑完了。
―剣の丘より設計図を準備。
 そして、頭の中では魔法構成を70種類程する。悪魔で頭の中だ。まだ展開はしない。
―術式工程、完了。
―封印術式、解除準備を開始。
―身体強化・弱を発動。
―気配探知、開始。
 そして、ゆっくりと振り返り、
「お父様!?」
『長!?』
『えっ!?お父様!?』
 ゑ?お父様?ゑ?長が此処で登場?まさかの?ゑ?ゑ、ゑ、ゑ?疑問が消えぬまま、俺は屋敷に招かれるのだった・・・。

 
 あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!?俺は、敵が来たと思い戦闘態勢を取ったんだ。そしたらそいつは、教え子の父親だった・・・。何を言ってるか全くわからないと思うが、俺自身も何があったかわからなかった・・・。頭がどうにかなりそうだった・・・。催眠術や超スピードとか、そんなチャチなもんじゃ断じてねぇ・・・。もっと恐ろしい能力の片鱗を味わったぜ・・・・。
 一言で表せばこんあところか?ポルナレフさん、アンタマジ名言残したな。
「ハァ、戯言過ぎる・・・」
 この場合、傑作か?応、言葉使いは傑作が正しい筈だ。冗談はさて置き、何で俺までここにいんの?ゑ?旅館は?今日俺新田先生と飲む約束してたのに・・・・。ん?メールだ・・・。
『いきなり家庭訪問に来てくれと言われたそうだな・・・。それで行く君とネギ君も熱心なことだな・・・。今日の飲み会は延期しよう。また今度、一緒に飲もう』
 ・・・・・新田先生・・・・。俺、俺、感動しました・・・。ってか家庭訪問で誤魔化したのかよ!?無理ありすぎんだろ!?ハァ、もう溜息しかでんわ・・・。
 閑話休題。
 さて、現在は西の本拠地にいる。はぁ、ここに居るだけで、殺気がバンバン来るんですけど・・・。気付いていないのか?いや、長が気付いていながら、注意してない。襲ってこないから放置、とかその辺ですか・・・。長ェ・・・。
 胃に来るんだよ!!ストレスで胃がマッハ何だよ!!もうヤダ、この職場・・・。腐ってやがる!遅すぎたんだ!てか、焼き払いてぇ・・・。雑魚だもん。魚だもん。旨いもん、焼き魚。はぁ、愚考と現実逃避はこれまで。思考しろ。仕事しろ。本日の営業は終了致しました。またのご来店お待ちしております。・・・・洒落が下手だな。酒があっても受けないし、オチもねぇ。
 とにかく、俺が言いたいのは。旨くない。美味くない。多分相当な額のする酒だろう。しかし、こうも殺気に当てられては旨くないし美味くない。でも、みんな、笑っているんだ。それで、いいだろう。新田先生との酒は、あんなに美味しかったのに。安酒でも、あんなに美味しかったのになぁ。少し、気分転換でもするか。
「風呂、行くかぁ」
 結局、うまくない酒を飲み続けるのにも限界がある。それに、封印をしているから、酔いも回ってきた。風呂に入ってサッパリしよう。

「うむ。さすがボンボン。風呂の作りが違うねぇ」
 広いし、いい湯だ。誰にも邪魔されず風呂に入れて良かった。
「幸せだな、あの頃とは違いすぎる」
 ふと、呟いた言葉は前世の記憶。記録であるオレかもしれない。
「ククッ、皆笑顔だ。欲しかったものは、こんなに近くにあったなんてなぁ」
 手を空に突き出し、星を掴もうとする。
「やっぱり、掴めないなぁ。俺が、化物になっても変わらんなぁ」
 そして、
「血だらけの、手だなぁ。俺は一体、何程殺したのだろうか?」
 自嘲気味に笑ってみる。しかし、
「ガハっ、ゲフッ、ゲフッゲフッ、」
 血がお湯に浸らないようにする。壊れかけの体は、耐えてはくれない。まだ、終われんのに。
「ククッ、壊れかけの体、かぁ。死期が、加速しているなぁ。まだ大丈夫だろ?オレよ」
―自己解析発動。
―現状、余命3年に変わらず。
「体は剣で、出来ているもんなぁ」
 手をお湯で洗い、口も濯ぐ。それだけなのに、何故か辛い。物音がした?
「誰かいるのか?」
 いるなら拙い。聞かれてはいけない事を呟いたからだ。
「しかし10歳で先生とはやはり、スゴイ」
 む?長か?
「いえ、そんな」
 ネギもか・・・。さて、出るか。
「あれ?衛宮先生?」
「応、いい湯だったぞ。さて、俺は酒でも飲んどくわ」
 そう言って、俺は外に出る。酒だ何処だろう?

 酒を飲みながら、花を見る。風流だなぁ。
「先生」
 む。この声は、刹那か?
「どうかしたか?俺は今、忙しいんだ」
 酒を飲むのでな。あぁ、良い月だ。酒が旨い。いいことだらけだな。
「先生は、」
 むぅ。刹那よ。俺が何かしたのか?
「先生は、死ぬんですか?」
 虚を突かれた、とはこの事か・・・。
「はぁ?俺が死ぬ訳ねーじゃん。なんたって俺は不死身の化物だぜ?」
「誤魔化さないでください!!」
 バレたかぁ。どうする?肯定?否定?是か非か。どちらでも答えれる。
「人も化物も、何時か死ぬものさ」
「先生!!誤魔化さないでください!!」
 ふぅ。これだから。俺が死ぬ程度で取り乱すなよ。
「それが遅いか早いかだけさ。俺の場合、ちと早すぎるが・・・」
「それは、肯定しているんですね?」
「あぁ。俺は、あと少しで死ぬ。ざっと3年程度だな。まぁ、無理しなきゃもう少し生きれると思うが・・・」
「無理、とは?」
「わかってんだろ?お前等を守り続けるか、自分の命か、だ。そんで俺はてめぇ等を選んだだけだよ。今更、生きても何も出来ねぇし。あぁ、気にするな。俺が勝手に選んで、勝手に死ぬだけだから」
「それでも!?」
「余り俺を信頼するな。俺は化物だぜ?」
「それでも、優しい、ヒトですよ」
 あぁ、悲しい。ここまで、信頼されていたなんて。悲しいなぁ。何時か裏切り、殺される筈なのに。裏切れなくなりそうだ。あぁ、嬉しいな。そう、思ってしまう。俺には、勿体無い感情で、勿体無い思いだよ。
「信頼は悲しい。信頼はすごく悲しいよ。ヒトは一人で生きるんだ。信頼すればするほど、裏切りの衝撃は大きい。壊れて崩れて二度と元には戻らない」
「それでも、私は、先生を信頼しますよ。私は、独りが寂しいから」
「それでも一人で生きるんだよ。一人で生きれないってんなら、死んでしまった方がいい」
「それでも、ヒトは生きていきますよ。私は、ヒトではなく、化物だけど。みんな生きているんです。だから、先生も・・・」
「一人で生きているヒトは哀れで惨めで貧しく醜く不憫で孤独で――
そして何より尊いものだ。
だから、信頼は悲しい。そして、裏切りは痛いんだよ」
「先生は、今の日常が、嫌いなんですか?」
「いや、大好きさ。だからこそ、俺には勿体無さすぎるんだよ。俺は、この幸せを受けるには汚れすぎているんだよ。もう、お前達の横に立てないくらい。俺は、汚れているんだ」
 手を空にかざす。あぁ、やっぱりアカイなぁ。俺は、もう殺しすぎたんだ。
「だから、気にせず生きろ。そして、幸せになってくれよ。俺は、それを望んでいる。それが俺の願いなのだから。幸せになれない、俺の代わりに味わってくれよ。
それに、お前は俺との会話も忘れるんだからな・・・」
―能力解放。
―有線ジャック、開始。
―記憶忘却の取捨選択を開始。
―ジャック完了。
―記憶選択完了。
 ごめんな。刹那。
「ごめんな、刹那・・・」
「待って、ま・・・て・・・・・ま・・・・」
 後はアスナか。魔法は効かなくても、PSIは効くはだろう。さぁ、速やかに仕事を終わらせよう。
「ん?」
―空間解析開始。
―探知結界発動。
―拘束術式を第十号まで解放。
―魔力回路に魔力循環。
―循環完了。
 はぁ、アスナのことはまた後でか。今は、
「いるんだろ?アーウェルンクス」
「気付かれていたか・・・」
「空気読んで出なくて有難う。序に地獄へ落ちな」
「やはり、貴方は危険だ。此処で退場して貰おう」
 指を此方に向ける。
「甘ぇよ」
―対石化術式を構築。
―否定式完成。
―否定式を組み込んだ防御陣を展開。
 石化の光線はもう、意味をなさない。
「稲死光」
 俺は右手を奴に向け、そこから雷光を放つ。
「くっ!?」
 左手を構え、
「テオ・ザケル」
 雷光を放つ。二重に雷光に飲まれ、アーウェルンクスが消える。
「此奴は、式神か」
 はぁ、どうやら相手の方が一枚上手だったか。ということは・・・
「結界に閉じ込められているな。ふむ、術式を解析。うわぁ、面倒だなぁ、こりゃ」
 2分は足止めされるな。
「刹那、起きろ。敵襲だ」
「ゑ?先生?」
「そうだ。敵襲だ」
 さて、奴さん、本気の様だな。俺も手札を明かす事になりそうだなぁ、こりゃ・・・。

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