小説『ハルケギニアの青い星』
作者:もぐたろう()

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 あれから1年が経った。父の主導の下、領内で『紙』の製法の研究が重ねられている。
 まず、紙作りに適した種類の木材の選定が行なわた。その結果、スギに似た針葉樹は丈夫だが書き味の悪い品質の紙に仕上がるが、一方でブナに似た広葉樹は書き味は良いが脆い品質の紙に仕上がることが分かった。そこで、書き易く丈夫な品質の紙を実現するために、両者をどのような割合で配合するといいかの研究が行なわれた。
 次に、木材を煮込む液体は単なる石灰を混ぜたものより強いアルカリ性の水溶液の方が良質のパルプを取り出せることも判明した。そこで、僕は塩水に魔法で電流を流して苛性ソーダの水溶液を作り、これを利用することにした。
 また、煮込んだばかりのパルプは色素を含んでいるためそのままではきれいな白色の紙にならない。そこで、苛性ソーダを作る際に不可避的に生じる塩素を利用して漂白することを考えた。ただ、塩素はかなり毒性が強いのでその取扱いには注意が必要だろう。

 こうして、1年近くの研究の末に製品化に耐えうる品質の『紙』の製造を実現した。多くの化学薬品の使用が予想されるので、今後工場の舵取りを行なう父の家臣たちに対して薬品の取扱いについて教育を徹底しておこなった。また、並行して進められていた工場の建築も滞りがなく、製紙工場の操業の準備は順調なようだった。
 さらに、領内では5年前から始まった堆肥の使用により少しずつ食糧生産は順調に伸び、領内は大いに潤っていた。そのため、他の地域からは食料や仕事を求めて流民が流れ込んできており、5年で領内の人口は500人近く増えている。今はなんとかなっているが、今後増えるであろう流民の全てが農地を得られるわけではないので製紙工場は彼らの労働場所としてその役割を期待されている。しばらくすれば市場にヴィルトール産の『紙』が流通を始めるだろう。















 紙の製造の研究が順調に進む一方で、13歳になった僕はついに社交界にデビューすることになった。フランやナタリアは10歳を迎える以前からすでに社交界に顔を出していたことと比べてもかなり遅い。実は僕は今まで表舞台に出ることを拒んでいた。あまり目立ちたくないし、現代人の感覚から照れくさいという気持ちも強かった。建前としてはネスティア様に遠慮してということになっていたが、最近ネスティア様から僕も社交界でもっと顔売るべきと言われてしまう始末で、ついに言い訳ができなくなってしまった。
 そのため、今日はトリステインでも指折りの大貴族であるヴァリエール公爵の三女、ルイズ様の誕生日のお祝い招待され、父上とネスティア様、フラン、ナタリアの五人で馬車に乗り、ヴァリエール領にある公爵様のお屋敷に向かっている。
 ヴァリエール公爵領はヴィルトール伯爵領の二つ隣の領地であり、その距離は比較的近い。そのため、父はヴァリエール公爵と少なからず交流がある。僕たちの屋敷からヴァリエール公爵邸までは馬車で2日ほどの道のりで、現在は2つの領地の間にあるワルド子爵領の街道を進んでいる。

「お兄様、初めての夜会で緊張しているでしょうから私が傍に控えてフォローいたしますわ」

 10歳になり少しずつ子どもらしさも抜け、言葉遣いもすっかり大人びてきたナタリアが僕に声をかけてくれる。

「ナタリア、助かるよ。家でも作法について勉強はしていたけど実戦では何が起こるかわからないからね。実はかなり緊張しているんだ」

「ふふ、任せて下さい」

 僕が珍しく頼ってくるのが嬉しいのか、ナタリアは僕のそんな言葉を聞いて嬉しそうに笑っている。

「そんなこと言って、ナタリアの目的はシリウスに変な虫が寄り付かないようにすることだろ?」

 ナタリアが僕に向けた笑顔のままフランの方を見た。さっきまでと異なり口元が笑っていない気がするのは僕の気のせいではないだろう。父とネスティア様はそんな僕らのやりとりを見て、楽しそうに笑っていた。

 その後、ワルド子爵領の宿場町で宿をとり、一泊してから次の日のうちにヴァリエール公爵領に入る。ヴァリエール公爵領は大貴族の領地だけあって街道もしっかり整備してある。そのため馬車の進行速度も上がり、夜会の始まる前の夕方頃にはヴァリエール公爵邸にたどり着いた。

「まるで城だね、これは」

「そういえば、シリウスは初めて来るんだっけ?」

 ヴァリエール公爵邸の正門は5メイル近い高さがある両開きの立派な門で、門をくぐると屋敷に続く道の左右には広い庭が広がっている。その道の続く先には左右に大きく建物を伸ばしている4階建ての大きな邸宅を構えていた。馬車から見える庭の植木や芝生はきめ細やかに整えられていて、品のよさを感じさせる。さらに、庭の脇には池が設けてあって、池にかかった桟橋にはボートが係留してあるのが見える。

(うちも大きいとは思っていたが上には上がいるんだな)

 玄関前に控えていた使用人に馬車を預けると、正面の玄関から中に入り、客間へと通される。そこで僕らは夜会用の正装に着替え、女性陣の準備が整うのを待った。しばらく待つと、ネスティア様とナタリアが華麗なドレスを身に纏い、僕らを迎えにやって来た。ナタリアは薄水色のドレスに身を包んでいる。ナタリアは昔から水色のドレスをよく好んで着ている。昔から青い色の好きな僕と趣味があうのかもしれない。

「お兄様、よろしいですか?」

 ナタリアが伸ばした手を少し呆けて眺めた後にその意図に気付いて慌ててその手を取ると、侍女の案内で会場のホールへと足を運んだ。ホール入り口に控えている使用人が我が家の家名を名乗りを上げる声とともに僕たちはホールの中へと入っていった。

「これはすごいな…」

 きらびやかなシャンデリアが頭上を彩り、会場のあちらこちらでは色彩豊かなドレスが華を咲かせている。テーブルにはヴァリエール家お抱えのシェフが腕によりをかけたであろう豪華な料理が並び、そのおいしそうな匂いが僕の空腹を刺激する。現代日本で育った僕は、この雅やかな空間に少しだけ眩暈を覚えていた。

「では、まずルイズ様にお祝いの言葉を申し上げに参るとしようか」

 父の言葉でホールの奥の周りより少しだけ高くなっている空間に向かう。そこには、すでに多くの貴族たちが列を成している。そして、その列の先にはピンク色の髪の少女が椅子に座っていて、その脇には金髪と目のモノクルが特徴的なヴァリエール公爵とこれまたピンク色の髪が特徴的なカリーヌ夫人が控え、来賓の挨拶に応じていた。

「ルイズ様、12歳の誕生日おめでとうございます。また一段とお美しくなられましたな。ヴァリエール公爵もカリーヌ様も鼻が高いでしょう」

 僕らの順番が回ってくると、父上が我が家を代表してルイズ様に誕生日のお祝いの言葉を贈る。

「ありがとうございます」

 そんな父上の言葉に、ルイズ様は丁寧なお礼を返す。その所作に品の良さを感じる。さすがは大貴族の娘。すみずみまで行き届いている印象を受ける。

「ヴィルトール伯爵も遠いところよく来てくれた。礼をいうぞ」

 傍に控えている金髪の御仁が言葉をかけてくる。ヴァリエール公爵だ。父上も威厳にあふれていると思っていたが、それを凌駕する大貴族の威厳を感じさせる。

「いえいえ。こちらも息子と娘を紹介しましょう。私の息子のフランとシリウス、娘のナタリアです」

 父の紹介にあわせて、僕たちはそろって公爵に頭を下げた。

「おお、これは丁寧にありがとう。こちらも紹介しよう、我が娘のルイズだ。みな年も近いようだから仲良くしてやって欲しい」

 ヴァリエール公爵から紹介を受けると、僕らもルイズ様におもいおもいのお祝いの言葉を贈る。
 ルイズ様は少しウェーブした桃色の髪を肩まで伸ばし、全身を同じようにピンクのドレスに包んでいた。目はその意志の強さを感じさせる特徴的な猫目をしており、優しい印象を与える桃色の髪と一見不釣合いのようだがこれはこれでバランスがとれている。多くの来賓からの挨拶に疲れたのか、少し元気がなくその笑顔は硬かった。その肌は白く柔らかそうで、僕がフランス人形みたいだなと少し見惚れているとナタリアに腕をきつく抓(つね)られ、慌てて次の客にその場を譲って後にした。

「お兄様、初対面の女性の顔をあまり見つめるのは男性としてどうかと思いますよ?」

「ごめん、ごめん」

 笑顔で怒るナタリアの脇で、フランは大いに笑いながら僕を冷やかしていた。

 その後、ナタリアやフランとともに会場内を回った。めずらしい料理に舌鼓を打ったり、同じ年代の貴族の子息令嬢たちとの親交を深めて回る。令嬢たちの振る舞いは幼い部分を残しながらも洗練されており、初めてみる僕を物珍しそうに品定めしているようだった。そんな彼女たちと挨拶を交わすのだが、ナタリアがすぐに組んだ腕を引っ張ってその場から引き離してしまう。ちなみに、貴族の子息たちは贔屓目なしに美人になったナタリアを見てしきりに仲良くしたがったが、僕とフランでこれを丁重に潰しておいた。















「ごめんなさい。お父様から呼ばれたので少し行ってきます」

「お前は疲れただろ?俺が行ってくるから部屋に戻っていろよ」

 初めてのことでいささか疲れた僕はフランにあとのことは任せて、部屋に戻ると告げてその場を後にした。すぐに部屋に戻るのも躊躇われたので、僕は火照った頭を冷やそうと庭に出て、馬車から見えた池のほとりに向かった。馬車から見たときに気になっていたのだ。おもむろに池に係留してある桟橋のボートに近づくと予期せぬ先客が僕に声をかけてきた。

「誰?」

「申し訳ありません。驚かせてしまいました」

 雲間から月明かりが差し込むと、相手の顔が見える。なんと先客の正体は今日の誕生日会の主役であるルイズ様だった。彼女はボートに座り、池を眺めていたようだった。

「私はシリウス・ド・ヴィルトールと申します」

 僕は改めて自己紹介をした。こういうのは男性から名乗るものなのだ。

「ヴィルトール伯爵の?てっきり使用人が連れ戻しに来たのかと思ったわ」

「ルイズ様はどうしてこちらに?」

「なんだか疲れちゃって。どいつもこいつもヴァリエールの名前しか見ていないんだもん。顔に貼り付けた笑顔の奥で何を考えているかわかったものじゃないわ。だからうんざりして抜け出してきちゃった」

 そういって彼女はばつの悪そうな顔をした。大貴族の娘とはいえまだ年端も行かない女の子だ。大人たちの汚い笑顔を何度も見せられてさすがに辟易したのだろう。

「そうですか。それでは、少し失礼しますね」

 彼女の気分転換にちょっと思いついた僕は船に乗り込み、杖を取った。池に向かって杖をふって、湖面全体に濃い霧を作り出した。そして、レビテーションで小船を浮かせると、霧の海に静かに着水させる。ゆらゆら揺れる湖面の霧が月明かりを無邪気に反射させて、幻想的な風景を作り出している。そんな霧の海の波間に僕たちの小船は漕ぎ出してた。

「きれい…」

 彼女は気に入ってくれたのか、そんな幻想的な景色に見入っていた。

「少しは気も紛れましたか、ルイズ様?」

「…あなたは魔法が上手なのね」

 さっきまでこの景色に見入っていたルイズ様が不意に暗い顔をした。

「私は魔法がいつまでたっても上達しないの。いつも失敗ばかりで…」

「ルイズ様はどうして魔法を上手に使えるようになりたいのですか?」

「父上たちを失望させたくなくて…」

「一目見ただけですが、娘の誕生日を本当に嬉しそうに祝っているヴァリエール公爵様は魔法ができないくらいで娘に失望するようなお方には見えませんでしたよ。それに魔法が苦手だってルイズ様の湖の妖精のような魅力は何ら衰えるところはないでしょう。畏れながら私が保証いたしましょう」

 僕の言葉に耳を傾けていたルイズ様は慌てたように顔を背けると、湖面を見つめた。僕から表情は見えないが、耳が少し赤くなっているような気がした。

「…あ、ありがとう」

「いえ。お気になさらないで下さい、ルイズ様」

 僕の言葉に少し思うところがあるのか、少し考えこんだルイズ様が口を開いた。

「…ルイズでいいわよ。あなたとは年も近いみたいだし、敬語もいらないわ」

「ですが…」

「私がいいって言ったらいいのよ。分かったかしら?」

 彼女は僕の懸念を吹き飛ばすように、そう強く言い放った。

「わかりまし…わかった。ルイズ、僕もシリウスでいいよ。」

「わかったわ、シリウス」

「ルイズは魔法が苦手だっていうけど、僕は今日の夜会に来ている腹黒の貴族たちみたいになるより百倍マシだと思うよ」

「ふふ、それもそうね」

 今日、初めて彼女の本当の笑顔を見た。しかし、その直後真面目な顔をして、僕に口を開いた。

「ねぇ、少しだけ私に魔法を教えてくれないかしら?」

「えっと、僕で良ければ喜んで」















 小船を湖面に降ろし、池のほとりの少しひらけた場所にやってきた。ここなら建物から離れているから魔法を使っても迷惑にならないだろう。

「見ててね?」

 そういって、彼女はごそごそと杖を取り出すと、杖を振りスペルを唱えた。しかし、その直後、僕の目の前の空間が轟音とともに爆発していた。

(なっ!?)

 僕は驚いて言葉を失った。通常、魔法が失敗すると何も起きない。このような爆発が起きることはあり得ないのだ。

「全部こうなの。私が魔法を使うとコモンスペルもどの系統の呪文も爆発しちゃう。今までたくさんの先生に見てもらったけど、みんなお手上げだったわ」

 彼女は驚いている僕にそう声をかけると、気落ちして肩を落としたようだった。なんとか、落ち着きを取り戻した僕は、まず彼女の状態を詳細に調べようと考えて彼女に小瓶を渡して飲むようにお願いした。

「大丈夫だよ。毒じゃないから」

 彼女は少し躊躇したようだったが、僕がそう言うと彼女は頷いて中身を飲んだ。本来、体内の魔力は外部から認識することができない。僕が渡したのは体内の魔力の流れを詳しく知ることができるようにするための秘薬だった。

「じゃあ、もう一度魔法を使ってみて?」

 そういうと、彼女は杖をとり詠唱に入った。僕はその傍で杖をとり、探知の魔法ディテクトマジックを使い彼女の魔力の様子を観察していた。彼女が呪文の詠唱を始めると、彼女の体内の魔力が杖の先に集まるのが分かる。そして、いざ魔法が発動すると、やはり爆発した。

(詠唱も魔力の運用もまったく問題がない。しかし、なぜ魔法が発動しないんだ?)

「ルイズ、4系統のドットスペルを一つずつ唱えてもらってもいいかな?」

 僕はルイズの状態をより詳しく調べるため、次は系統魔法の詠唱をお願いした。僕の言葉にルイズは頷いて、一つずつスペルを唱えていった。そして、やはりそのいずれもが目の前で爆発した。

(どういうことだ?魔力の性質がおかしい…)

 通常、系統魔法を使うとき体内の魔力はその系統にあわせた性質に変化する。これができないと魔力は最初の状態の無色のままなので魔法は発動しない。しかし、彼女が魔法を使うとき魔力はきちんとその性質を変化させている。ただし、それぞれの系統魔法に適した性質ではなく、全て異なる性質の魔力へと変化しているのだ。そして、その魔力はどの系統魔法とも性質を異にしている。つまり、彼女は系統魔法を使用する際、魔力をどの系統にも属さない未知の性質の魔力に無意識で変化させているのだ。

(不適合な魔力を無理やり運用しようとしているから、こうやって爆発するのか。丸い鍵穴に四角い鍵を押し込むようなものだもんね)

「どう?」

「うーん、ルイズは4系統すべての適性がないみたい」

「そんなぁ…」

 ルイズはわかりやすく肩を落とし、明らかに落ち込んでいるようだった。言葉だけ聞けば、彼女には死刑宣告も同然だ。彼女の反応も当然だろう。

「だけどね、4系統以外の魔法には適性がある」

「一体どういうこと?」

 落ち込んでいた彼女は僕の突然の言葉にその真意を探ろうと質問を投げかける。

「ごめん。詳しいことはわからないけど、『爆発』に適した魔法の適性があるみたいなんだ」

「爆発の系統ってこと?そんな系統、聞いたことないわ」

「でも、僕が見た限りではそうとしか言えない。だから、ルイズが四系統の魔法を使えないのは仕方ないんだ」

「そっかぁ…」

 ルイズはやはり寂しそうな顔を見せた。

「でもね?ルイズには違う可能性がある」

「どういうこと?」

 僕の言葉の意味がわからず、たまらずルイズは首を傾げる。

「ルイズの爆発の魔法はドットスペルの魔力しか使わずに、トライアングルスペルにも匹敵する威力を持っている。僕はトライアングルメイジだけど、魔法の威力でルイズと正面から勝負したら、勝てる気がしないよ」

「そ、そんなに?」

 通常、魔法の威力は魔力の大きさに比例する。そのため、僕の言葉はその常識を覆すもので、ルイズは僕の言葉に驚いて狼狽しているようだった。

「うん。ルイズの魔法は使いこなせれば大きな力になる。大きな力は使い方を誤れば悲劇を生むけど、正しく使えば誰かを守るための大きな力になるよ」

「今まで、そんな風に考えたことなかった…。簡単な魔法すら使えないから私には魔法の才能がないんだって諦めていたし」

「僕はルイズの才能を知っている。僕一人じゃ少ないかもしれないけど、ルイズの才能を知っている人はこうしてちゃんといる。だから、自信を持って。ルイズは決して魔法の才能がないわけじゃないから」

「あ、ありがとう…。あ、あなたもなかなかいいこと言うじゃない」

 僕がそんな言葉をかけるとルイズは少し照れたのか少しだけ顔を赤くした。

「それに、ルイズはきっと今まで魔法の練習を頑張ってきたんでしょう?」

「もちろんよ!スペルの詠唱だって、杖の振り方だって、魔力の練り方だって毎日ちゃんと練習を続けてきたもの」

 そう言って、ルイズは得意げに控えめな胸を張った。

「分かってる。スペルの詠唱は淀みがないし、杖の振り方だって一朝一夕でできるような所作じゃない。性質こそ変化させられないけど必要な魔力をしっかり練ることができている。ルイズが毎日魔法の練習を怠らなかった何よりの証拠だよ。人は何の成果もでなければ投げ出してしまうのが普通だけど、ルイズはどんなに辛くてもめげずに努力を続けてきた。そうやって誰よりも頑張れる負けず嫌いなところがルイズの誰にも負けない一番の才能だと思うよ」

「あうぅ…」

 僕がルイズを励まそうとルイズの手をとってそんな言葉をかけると、彼女は恥ずかしそうに俯いてしまった。















 その後、あまり遅くなってはみんなが心配するだろうから、彼女の腕をとって屋敷まで送っていった。

「また会えるかしら?」

「きっと会えると思うよ」

「少し落ち込んでいたんだけど…私、自分の魔法と向き合ってみる」

「うん、頑張って。ルイズならきっとできるから」

 ルイズの決意を僕なりに後押しすると、僕らはいつかの再会を約束して別れた。

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