隆史さんの額に青筋が立ったのがわかった。
「今みたいにお前がぼーっとしてるから、大和がああいう風に育つんだろう?!」
大和というのは息子である。
15歳の今頃から髪を染めだしてピアスをつけたと思ったら、たちまち不良に大変身。
そして、学校にも行かなくなった。
入試は無理矢理受けさせたが、失敗。
今は浪人生である。
でも大和は人生という道を迂回(うかい)しているだけで、道を踏み外しているわけじゃない・・・と思う。
受験失敗して、不良になっただけじゃないの。
大和には変わりない。
「どうしてそういう事言うの?あなたはいつも学歴で人を見下すのねっ。大和の本当の姿を見ようとしない」
隆史さんの顔を見て後悔した。
どうしてそんな悲しそうな顔をするの・・・?
横にいた姑は、しわの目立つ顔を真っ赤にして怒っている。
・・・まずい。
怒らせたか。
「真知子さん!その言い方はひどいんじゃありません?!隆史が東大を出ているからといって
人を見下すなんて、そんな・・・」
姑の言葉は、もっと続きそうになったが予想外の扉を開ける音でスピーカーのような口は閉ざされた。
顔をのぞかせたのは、友達の家から昼帰りしてきた大和だった。
「おかん、飯」
外国人の片言のような単語をあわせた大和の言葉。
「昨日のカレーが鍋の中にあるから、温めて食べて」
――聞かれただろうか・・・?
こんな喧嘩をするために結婚したわけじゃないのにな。
ひまわりはまだ泣いている。