―「お前がぼーっとしてるから、大和がああいう風に育つんだろう?!」
なんであんな事を言ってしまったんだろう?
あの後、ごめんも言えなかった。
窓を眺めていた真知子は何を見ていたのだろう?
何を感じていたんだろう?
悲しげな顔。
何を考えていたのだろう?
こっている肩にのしかかる鉛より重い罪悪感。
「パパ、遊んで〜」
いつの間に書斎にはいってきたのか、百花が僕の顔を覗き込んだ。
「パパはしんどいから、あとでね」
そう言うと、百花は悲しそうな顔をした。
一瞬、さっきの真知子と重なる。
そういえば、存在感のある二重や形の良い紅色の唇があいつに似てきたな。
「パパはいーっつもそればっかだね。あとでっていっても、その『あとで』はエイエンにないの」
うっ・・・。
口が達者なところも似てる。
でも、たしかにそうかも知れない。
大和とは小さい頃、キャッチボールを時々したけど、百花とはほとんど遊んであげていない。
―といっても、一般家庭では父娘はどうやって遊ぶのだっ?!
人形遊びや読み聞かせは、父より母がしたほうがいいのではないか。
そう思うと二の足を踏んでしまう。
「パパ、ヘタクソ」なんて百花に思われたくない。
どうして僕はいつもそうなんだろう?
会社でも家でも外見は繕(つくろ)っているけど、中身は自尊心が傷つくのを恐れている。
もっと・・・素直に。
ありのままの僕をさらけ出したいのに。