僕は半日、ずっと百花の寝顔を見ていた。
深い呼吸。
青白い肌。
乾いた唇。
時々、このまま起きないんじゃないかという不安が、弱気な僕を襲う。
医者が言うには、百花は割れたガラスの破片が両目に入ったらしい。
視神経が損傷していないものの、角膜が傷ついて、失明の可能性もあるって・・・。
まだ幼いのに、失明だなんて・・・!
僕は気を失ったが無傷だった。
大和も無傷で、僕が気を失っている間、右手を骨折した真知子の様子を見に行っている。
――それから三十分後、僕は自分の体の異変に気づくのだった。
それは用をたすため、トイレに行ったときのこと。
いつもどおり、男子トイレに入ると、掃除婦が目を丸くして僕を止めた。
「お、奥さん?ココは男子トイレなのですが」
奥さん?
「僕は男ですが」と言いかけたその時、鏡が目に入った。
薄汚れた鏡には、真知子が映っていた。