小説『山吹さん家のご兄弟』
作者:百瀬コーキ()

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 パラレルワールド、それはもしもの世界。
 今や日本を代表するアニメーションとなった某青い猫型ロボットがおなかのポケットから出す、夢のような道具の中に公衆電話のような形をした道具がある。その公衆電話のような道具を使って「もしもほにゃららだったら」などと、もしものことを言うと本当にその通りになるというまさに夢のような道具である。 あれもいわゆるパラレルワールドということらしい。

「パラレルワールドか、山吹お前まるでラノベの主人公のようだな…」
 としみじみと目を伏せながら言う水城。
「ナハハハハ! 主人公! カッコいいな!!」
 そして目を輝かせる笹田。
「本気で他人事だと思いやがって…」
 そして、涙も枯れ果てたオレ。
 現在、オレはパラレルワールドとやらに迷い込んだらしい。
 本来の俺の元々の家族構成は
 父(幼少時に行方不明)、母、オレ
 であったが。
 こちらの世界での家族構成は
 父(ほぼ行方不明状態)、母、オレ(三男)
 元々の家族との違いは俺に兄弟がいるということだ。
 ここからは、水城と笹田に教えてもらった俺の兄弟についてだ。
 とりあえず、整理しておかんと頭が追いつかなくなってきた。

 長男(金髪王子)
 山吹 聖哉(せいや)
 山吹家の第2の母。
 職業 近所の花屋の店長。
 特技 家事全般
 性格 優しくて、紳士的でリアル王子。 女子にモテる。
    家族内では一番怒らせてはならない人。

 次男(巨人)
 山吹 誠二(せいじ)
 山吹家の大黒柱。
 職業 大手出版社に勤務中。
 特技 喧嘩
 性格 寡黙であまりしゃべらない。 面倒見がよく男にモテるタイプ。
    もともと族だった。

 三男は俺のためパス。

 四男(茶髪元気)
 山吹 誠士郎(せいしろう)
 山吹家のムードメーカー
 職業 中学2年生
 特技 サッカー
 性格 明るく元気だけが取り柄のスポーツ少年。 頭はあまりよくない。
    女子にモテるが鈍い。


 五男(園児)
 山吹 星護(せいご)
 山吹家の癒し
 職業 幼稚園児
 特技 お絵かき
 性格 とってもよいこ。 下手すると四男よりも賢い。
    めちゃくちゃ可愛い。
 

 以上、俺の兄弟たち。

 「…濃すぎるだろ」
 「いや、お前もその濃い兄弟に含まれてるからな。 女の子たちにも有名だ。」
 「マジで!?」
  こっちの世界ではモテたりするのかオレ!
 「 ああ、『美形兄弟の中に一人だけ普通のやつが混じってるー』って有名だからな」
 「あー、そっちですか」
 「ナハハハ! 普通だ! 普通だ!」
 「なんだモテるとでも思ったのか? 鏡見て出直してこい」
 「っるせー! テメーらも顔面偏差値対してかわんねぇだろうが!」
  このオタクメガネに運動馬鹿にだけは笑われたくねぇ!
 「ふん、現実の女にモテてなにがいいんだか…」
 「ナハハハ! オレはバレンタインにチョコ2個貰った!」
 「「なに!?」」
 コイツいつの間に…
 ナハナハ笑ってるだけの馬鹿かと思っていたのに…
 「チッ、笹田! 今日からお前は俺の敵だ!」
 「ナハ!? 水城急にどうしたのだ!?」
 「リア充なんざ爆発してしまえばいい!」
 水城、男の嫉妬は見苦しいぜ…
 こういう時こそ冷静に
 笹田の肩にポンッと手を置いて
 「死ねばいい☆(流石笹田だな)」
 「ナハ!?」
 「おーい、建前と本音が逆だぞー。 っていうかわざとだろ」
 「うん」
 「ナハ! 二人とも酷いぞ!」
 こうして休み時間が終わるまで俺と水城は裏切り者(笹田)をいじり続けたのだった。


 そして、あっという間に帰宅

 「はぁ、帰ってきてしまった」
 家の前で肩を落とす俺。
 いくらなんでも不安だったので水城と笹田にもついて来て貰った。
 「ナハハハ! 山吹の家はひさしぶりなのだ!」
 「そうだな。」
 「まぁ、上がれよ」
 二人を引き攣れ玄関を開ける俺。
 さぁ、ここからが本番だぞ。
 意気込んで玄関のドアを開ける。
 そして見えたそこには、
 「いてぇ! いてぇ! 兄貴ギブギブ!」
 「お前というやつは! なにを!どう!間違えたら!俺の書類を持って学校に行くことになるんだ!」
 四男にコブラツイストをかける次男の姿があった。
 ぱたんとドアを閉める俺。
 「な、ナハハハ…」
 「かなりヘヴィだな」
 流石に笹田すら顔が引きつっている。
 「オレこの家でやって行く自信ない…」
 後に水城はこの時の俺の背中と声が切実すぎて、本気で涙が出そうになったと語った。

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