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ロゼルと別れた朝。
リオネロは街の伝書屋に居た。
たくさんの伝書鳥で賑わっているはずの伝書屋だが、今日は鳥の声が少ない。
「え? こいつしかいないの?」
「ああ、生憎全部出払っちまっててな。今居るのはその大鷲しかいねえ」
「まいったなぁ……」
リオネロは困ったような顔で頭を掻いた。
ロゼルから頼まれた手紙を一刻も早く届けなくてはならないというのに。
「夕方になら数羽、戻ってくるが……急ぎかい?」
「ああ。すぐに届けて欲しいんだ」
「そうか。それならその大鷲しかないな」
「こんな大きい鳥、早く届けられるのかよ?」
リオネロは店に居る茶色い翼の大きな鷲を訝しげに見る。
こげ茶色の目はくりくりとこちらを睨んでいるようだ。
「少し割高にはなるが、スピードは他の鳥よりも速いし正確だ。どこまでだい?」
少し小太りの店の主人がにこにこと言う。
「南の花畑なんだけど……」
「それなら、半時ほどで着くよ」
「……そうか。なら、こいつで。少し高くたっていいや。ちゃんと届けてくれるんなら」
リオネロは料金を支払って、手紙を大きな鳥の首に括りつけた。
「でも……やっぱり心配だなあ」
何せとても大切な手紙らしいのだ。途中で落としたり、木に引っ掛けられては困る。
なかなかその場を離れようとしないリオネロを見かねて、店主が声をかけた。
「そんなに心配なら一緒に行けばいいじゃないか」
「え? この鳥乗れるのか?」
「ああ。三人までなら人間を乗せて飛べる。スピードも変わらんよ」
「じゃあ、俺乗って行くよ!」
リオネロが威勢よく答えると店主はけらけらと笑った。
「そうか乗っていくか。気をつけろよ。落っこちても助けてやれねえし、責任とれねえからな」
「いいよ。落っこちねえもん。それじゃ、暫く借りるよ」
リオネロは鷲に乗ってしがみついた。大鷲は大きく羽ばたいて飛び立つ。
「そうそう、そいつの名前、イーディーっていうんだ。夜には返せよ」
「わかったー。……そうかお前イーディーっていうのか。俺の名前に似てるな」
店主が小さくなるのを見届けてから、リオネロはシェズの居る花畑の遺跡へと向かった。
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