小説『Brave of Seritona -南の勇者の物語-』
作者:愛音()

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第七章 王女と王女の涙



 鳥に乗って空を飛ぶことが出来るなんて夢のようだ。
 きっと多分リオネロもそう思っているのだろう。
 この旅で見せたことの無いような無邪気な顔で目を輝かせている。

「どこか降りられそうなところ……」

「あそこのバルコニーはどうでしょう?」

 上空を旋回しながら、目を凝らす。
 塔の頂上付近に出っ張っているバルコニーが小さく見え、ロゼルは指差した。

「オッケー」

「もしかしたらシーラに気づかれるかもしれません。慎重に」

 バルコニーに近づくと、この大鷲が降りられるような広さではないことに気がついた。

「……私たちはここから飛び降ります」

「えええ?」

 クリスの言葉にリオネロが驚く。

「そうですね。飛び降りましょう。
 リオネロ、もう少し高度を下げて、近づけてください。
 そしたら、タイミングを見計らって飛びます」

「ロゼル! 正気か……? ……わかった。ちゃんと飛び移れよ!」

「ありがとう」

 リオネロは始めこそ動揺していたが、
ロゼルが勇者だということを思い出したのか、次の瞬間には承諾していた。

 まず始めにクリスがバルコニーに飛び移った。
 こちらはすたっとスマートに降り立つ。ロゼルもタイミングを見計らって跳ぶ。
 が、距離が足りず、バルコニーの手すりに辛うじてぶら下がっているような形となった。

「ロゼル。大丈夫ですか?」

 先に降り立ったクリスが引き上げてくれ、なんとか落ちずに済んだ。

「ええ。なんとか……」

 振り返るとリオネロが一度旋回してから、後の二人の待つ城へと行くところだった。

「ここで二人が来るのを待ちましょう」

 数分してリオネロがランスとオーガを乗せて戻ってきた。ゆっくりと旋回し、高度を下げる。

「危ない!」

もう少しでこちらに辿りつくというところで、怪鳥のモンスターが彼らの行く手を阻んだ。

「くそっ」

 怪鳥は火を吹き、螺旋状の炎がリオネロたちに襲い掛かる。

「リオネロ!」

 こちらから攻撃をしようとするが、もう一羽の別のモンスターに阻まれた。
 他にもまだ一羽いる。

「こっちのことは任せて先に行け! なんとか片付けたらすぐに合流する」

 ランスがジャベリンで炎を防ぎながら叫ぶのが聞こえた。

「でもっ……」

 ロゼルの胸に不安が走った。彼らがいなくては勝てない……。

「ロゼル、何をしちょるんです。行きましょう。早くっ。ここにいては私たちも危ない」

「……あんまり長くは待てませんからね!」

 クリスに引っ張られるまま、ロゼルはその場を後にした。

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