「シールドインヴァリドム」
どごん、とクリスが一瞬の隙を突いてシールドを張った。
「ロゼル、今のうちに呪文を」
「でも、こんなに大勢は……」
「シールドを外したらすぐに補助の呪文を唱えます」
「……わかりました」
ロゼルは剣を構えた。
殺してはならないのだから……ダークソードは使えない。
だとするとファイスかウィンドル……いっそ水か氷で攻めるべきか。
「ウォータスソード」
剣が水を纏うのと、シールドが割れるのとほぼ同時。
「インクリースストロドム」
クリスの強化呪文によって、振り下ろした剣から、螺旋状になった水が飛び出した。
片っ端から敵を押し返し、足もとを救い倒していく。
「アイシスソード」
「インクリースストロドム」
敵が怯んだその隙にすかさず呪文を繰り出す。
クリスもロゼルのタイミングに合わせて強化呪文を繰り出した。
氷を含んだ螺旋状の風が残った全ての敵をなぎ倒し、氷浸けにした。
「ほう……やりますねぇ……」
床には倒れた騎士。どれも殺してはいない。
それをまた操られ悪用されないよう、ロゼルとクリスは呪文を使って、
自分たちの後ろの方へ運び、戦いの火の粉が飛ばないようにした。
そしてロゼルとクリスはシーラを睨みつける。
「私は……私は自分の運命を受け入れ、刺し違える覚悟でここに来た!」
剣の切っ先をシーラに向けて、ロゼルは言い放つ。
「シーラ、貴方も覚悟を決めなさい」
「くくくくっ。覚悟を決めろとか言われてやんの」
部屋の隅で黒髪の少年が嗤う。
「ロゼル!」
背後から足音がしてリオネロ達が入ってきた。
「リオネロ! ランス、オーガ! 皆無事でしたか。こちらも今片付けたところです」
「ああ。あとは、シーラだけだな」
「ええ」
皆がシーラを見つめる。
「覚悟か……ふっ……その覚悟もどこまでのものか」
「それは……どういう意味です?」
シーラは唇を笑わせた。
「ようこそ、王族の血を引く勇者たち。この中で女が一人いるだろう?
その者が勝負に勝てば城を明け渡してやろう」
勇者たちの表情がこわばる。
「さて、誰かな?」