お父さんが私の前でお母さんの話をするのは初めてに等しい。
「そうだ。芽衣もお前のように優しい女だった。」
私は…優しくなんてない。
「違う…お母さんとは比べられないよ。私、たくさんケンカしてきた。たくさん人を傷つけた!!」
涙も混じりながら叫んだこの言葉。すると優雅がゆっくりと歩いてきて、私の頭に手をのせた。
「凛、お前は誰かを救うためにケンカをしてきたんだろう?」
そのコトバを発した優雅の表情はとても和やかで…優しくて…名前のとおり「優雅」だった。
「ゆう…。お父さん…。」
本当の幸せはここにあったのかもしれない。私はまだよくわからないけど…。