小説『なんでもない詩』
作者:文月 青鈍()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>


「ねがいごと」





水の中でも呼吸ができる人魚の鱗


火種がなくても火が起こせるサラマンダーの息


一粒の種から大樹を育てるドワーフのジョウロ


磁石が付いていなくても絶対迷わないコンパス


金銭価値はないけれど綺麗に光る石ころ


小さいものから大きいものまで入る不思議な袋


描くだけで実物化する魔法の羽ペン




幼い頃 夢見ていた非現実世界

大人になって 夢にまでみる仮想空間




人はそれを現実逃避という





逃げてないさ 避けてないさ 現実を


ただ ただ 夢をみていたいだけ


ただ ただ 時間が許してくれる限り




そして鐘の音で目が覚める
 

今から見るのは現実世界


今から感じるのは空想感覚




夢に出てくるのは小さなお店


店に並んでいるのは不思議な雑貨


不思議な雑貨を売っているのは面白い店主


笑う店主は懐かしい笑顔をくれた




「なにか欲しいものでも?」




夢は唐突に覚めるもの


店主との別れも突然に


夢とは願いを表わすという


店主は言った








「また おいで」









あぁ なんだ


あれは昔に忘れてきた


もう一人の夢の自分

-12-
Copyright ©文月 青鈍 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える