「てっくてく」
上を見て下を見た
空を見て地面を見た
文章的にはこんな感じ
青色を記憶して土色を観察した
濁ったキャンバスに飽きて黒い絵の具の上を歩いた
感覚的にはこんな感じ
0と1
有機と無機
YESとNO
線と点
頭で考えてしまえば区別は白黒つく
人との付き合い方も一見して方程式
人生はゲームの一つと誰かが笑っていた
その頃の自分は存在意義を求めていた
必死で走ってもがいて
掴んだ筈のものは手の中に残っていなくて
思考ばかりが泥沼化して
何かに執着すること
何かに頼ること
誰かに相談すること
悩みの吐き出し方
自分の中にあるトゲが身体から出てきそうで
それを抑え込むのに心がボロボロになって
疲れ切った心は顔という仮面から表情を消した
Iは愛を求めてはいない
Iは哀を飼っていた
Iは逢を求めて
Iは相に出会った
「しけた顔だ、うっとうしい」
求めていた言葉とは違うけれど
「ちょっとペンで書き換えてやろう」
決して優しい言動ではないけれど
自分のまわりに
傷ついて消えかけていた線の上に
新しい線を描いてくれた
「点を集めて、ある一定に伸ばせばそれは線だ」
何食わぬ顔でずっと引いている
「線と線を繋げばそれは丸にもなる」
「繋がった輪は他者を受け付けない」
「だが、受け入れる方法は簡単だ」
そう言って、一回り大きな輪を描いて
「ほら、2人入れるだろ?」
ニカッっと笑った君は悪戯が成功した子供みたいだった
「怖くないさ」
「たまには歩け、焦らずに」
今までポンコツ同然に走り続けた自分に
優しく背中を押してくれた君は
僕に一度止まることを勧めてくれた
ありがとう。