小説『なんでもない詩』
作者:文月 青鈍()

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「 みせよ 」




鋭く研ぎ澄まされし牙と爪


燃えゆる魂の叫びと共に


駆け行くは魑魅魍魎蔓延る戦場


その眼に映りし敵陣の


喉元めがけて煌めく白銀の刃


恋し人よ 星降る夜の夜桜の元


夫婦の契りを交わす


朱色の盃に揺らめく心の波


この戦い 勝利を納め 貴女の元へ


魅せよ 魅せよ 大和魂


奮えよ 讃えよ 駆け巡れ







蝶よ花よと愛でられし美しき人


その心に住むのは仏と羅刹


力無き腕に抱くは薙刀懐刀


時には修羅ともなりましょう


かくもその声儚くも切なく憂いを帯びて


彼の地へ駆け行く後ろ姿を眼に焼き付け


愛しき人の無事を祈る


月の光を思わせる簪を胸に


この戦い 無事に帰還を 星に願う


魅せよ 魅せよ 大和撫子


奮えよ 轟け 一輪の花



-20-
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