小説『なんでもない詩』
作者:文月 青鈍()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>



「もあ」



もっともっと

高く飛べる羽根が欲しい

助走も踏み台なんかいらない

足が大地から離れた時

何かが爆ぜる音がした



みんなみんな

自分を置いて飛んでいく

厳格な秩序とか

もとから無かったかのように

軽やかに跳躍する



それを妬みと知った

努力もした改善もした

足は地に鎖を引いて

地平線まで延びていた

足があるから飛べないんだ




邪魔な足さえなければ

手に持った刃はとても重かった

結局は己の身が一番可愛かったのだ

涙は刃を錆びさせた

ボクは初めて答えを知った




飛べない理由を知った

地平線まで延びていた鎖が

少しだけど軽く短くなった

そうか、そういうことだったんだ

涙は自然と渇いていた







ボクの背中には小さいけれど

羽根が生えていた



-21-
Copyright ©文月 青鈍 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える