小説『なんでもない詩』
作者:文月 青鈍()

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「 READY? 」




若さゆえの愚行

未だ成熟してない知識

失敗を重ねる経験

個人差によるステータス

能力差による取扱

言われたことは建前

今見ていることは現実

耳にする言葉は真実

努力や改善は認められない

頑張った分だけ空回り

焦れば募る不安

口から出るのは二酸化炭素

声はどこかへ置き忘れ

握る拳は血に塗れる

地に立つ脚は硬くなり

眼だけが生気を喪失




誰でもいい 声を出させて

何でもいい 声を聴かせて




心は人知れず号泣

本心は自分を叱咤

慟哭は体中をめぐり

涙腺も表情筋も緩まない

すでに涙は枯れた

どこかで捨てた悲しみ

どこかで生まれた別人

どこかに隠れた良心

脳は異常と正常を認めない

心から一つ感情が剥がれた

声をあげたのは無関心

目に映すのは人ではない

表情は能面に

声は低音に

精神は異常をきたす



どうでもいい 自分が壊れなければ

好きにしろ  自分には関係ない



保身に走る心の痛み

分かってもらえない心の弱さ

聞いてもらえない心の叫び

甘いと考える自分

甘えたいと思っている自分

甘えることが下手な自分

棘ができた

鋭く冷たく針のような

決して折れることはない

触れば氷のようで痛い

こんな棘がいっぱい生える

殻から出ないように抑制

いつかは破れる器

壊れたとき

それは精神崩壊



覚醒した別の自分は

きっと人の心を傷つける

かつて自分がされたように

きっと誰かを傷つける

保身の代価に手に入れたのは

もう一人の自分

止められない

消えてくれない

それは精神崩壊防止用緊急処置





 たすけて





そう願った自分に

手を差し伸べてくれた





 さぁ、かわろうか





弱った自分に

温かかった手

痛んだ気持ちに傷薬を塗ってくれた




 ごめん また呼んでしまった

 
 いいさ つらいときは変わる 




いつ自分はひとりに戻ってしまうのか

そこにまた恐怖が生まれる

分けていたものが一つにまとまった時

その重圧に耐えれるだろうか

きっと潰れてしまうだろう




幼いころ

つぎに生まれ変わったら何になりたいと聞かれた

あのころに言った答えに対して

その子は不思議そうな顔をしていた

そうだね

それが正常だ

こんなことを思う子供は 

異常だと思う



 − つぎに生まれ変わったら何になりたい? −

   
   − もう 生まれてきたくない −


 − どうして そう思うの? −


   − 次の生に興味はない 今の生がめいっぱいだから −



そして

もう

こんな壊れかけた自分はここでサヨナラしたいから






 さぁ 準備はいいか

 メンタルに弱い自分はオヤスミ

 モットーはハンムラビ法典

 喧嘩は3倍 イジメは5倍 

 菓子折りと熨斗付けて返そうか

 拳は後攻

 まずは肉体的暴力よりも精神面での攻撃が効果的

 グの音も出ぬような口論戦

 泣けば嘲り 怒れば罵倒

 今から選手交代

 さぁさぁ
 
 お手合わせ願おうか

-26-
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