小説『なんでもない詩』
作者:文月 青鈍()

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「なきむし」




誰かが泣いている

誰だったんだろう

思い出せない

きっと悲しいのだろう

いや、痛いのかもしれない

何が?

茨の棘に絡まれているから?

それとも魔女に焼かれるから?

オオカミに丸呑みにされるから?

もう、どうでもいいや



誰かが怒っている

誰だったんだろう

思い出せない

きっと何かが壊れたのだろう

いや、壊されたのかもしれない

何が?

ガラスで出来たウサギが死んだから?

それとも綺麗に咲いた薔薇が枯れたから?

友達に裏切られたから?

もう、どうでもいいや



誰かが笑っている

誰だったんだろう

思い出せない

きっと楽しいのだろう

いや、嬉しいのかもしれない

何が?

クリスマスのプレゼントを貰ったから?

それとも新しい友達が出来たから?

お菓子をたくさん貰ったから?

もう、どうでもいいや



君が泣いている

君が怒っている

君が笑っている

きっと・・・・・・・

いや、そうなのだろう

何故?

僕は君を知っている

僕は君を見ている

僕は君の中に存在している



もう、1人じゃないよ

-3-
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