小説『なんでもない詩』
作者:文月 青鈍()

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「またあおう」



ある子供は1人でいるのが多く

見上げる空は大きくて青くて

白い雲は時々泣いていました



子供は話すのが苦手でした

子供は走るのが苦手でした

子供は笑うのが苦手でした

子供は泣き虫が嫌いでした



「トモダチになろう」



ある日トモダチが出来ました

子供はトモダチが好きでした

子供は泣き虫になりました



「また遊ぼう」

「もう遊べない、ばいばい」



ある日トモダチとさよならをしました

その日から子供は雨が好きになり

トモダチは雨が嫌いになりました



「また遊ぼう」

「もう逢えない」

「また逢おう」




子供は笑いました




「いつか同じ青い空の下で逢おう」




トモダチは約束しました

やがてトモダチは大人になりました

トモダチは友達を探しました

青い空の下で友達は見つかりました



ようやく見つけた大切な友達は

冷たい石の下で眠っていました



いくら呼んでも起きてはくれませんでした

写真の中の友達は笑っていました




「また逢おう」

(また逢おう)




トモダチは泣いて笑いました

トモダチは笑って泣きました





「また同じ青い空の下で逢おう」





ある子供は青い空とトモダチが好きでした

その子供は白い雲を背中につけていました



(また同じ青い空の下で遊ぼう)



その声はトモダチには聞こえませんでした

-6-
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