・・・あれ以来、裕一は少しずつだが明るさを取り戻していった。しかし明るさを取り戻したと言っても彼は1回も笑った顔を見せたことがない・・・そう・・・あの日を持って彼の本当の意味での明るい日は閉ざされたのだった・・・
ゆういち
裕一『俺を名を呼ぶ愛しき人・・・』
ゆういち
裕一『俺だけに見せてくれる最高の笑顔・・・俺はこの笑顔が大好きだった・・・』
ゆういち
裕一『たまに甘えてくるその声もなんとも愛しい。腕にぎゅっとしがみついてくるだけでこんなにも幸せだと思ったことはない』
ゆういち
裕一『彼女の泣き顔。泣いていてもこんなにかわいいと思ったことはない』
ゆういち
裕一『俺はいろんな顔を・・・いろんなあいつを・・・いつまでもいつまでも見守って行きたいと強く願った。・・・しかし現実はそう甘くはなかった・・・』
裕一「・・・・・・」
??「・・・た・・・がた・・・緒方!」
ゴンッ
裕一「いてっ!」
目の前には国語の教員が立っていて本の角で小突いていた。
先生「なにをぼっとしてるんだ。もうすぐ試験だと言うのに・・・まったく。192P、3行目から読みなさい」
裕一「・・・ウッス」
裕一『何も変わらない日常。いつものようにみんなでだべって、いつものように遊んで・・・そしていつものようにあいつと一緒に帰って・・・ちょっと寄り道したりして・・・そんなありきたりな日常を俺も望んでいた・・・』
先生「はいよろしい。座りなさい」
裕一「・・・・・・」
先生が今の重要なところを黒板に書いていく。他の生徒もみんなそれを書き写していく。・・・昇は相変わらず眠り呆けていたが・・・
20分後、授業を終える合図が。
先生「今日は職員会議があるのでHRはなしだ。各自、気をつけて帰るように」
そう言って先生は出て行った。
裕一「・・・・・・」
他の生徒が足早に教室を出て行く中、裕一はゆっくりと鞄の中に荷物を詰め込んでいく。・・・すると
瑞樹「ねぇあんた・・・今日ちょっと付き合ってくれる?」
裕一「・・・遠慮しと」
瑞樹「あんたに拒否権はないわ。さ、行くわよ」
無理やり腕を掴まれてそのまま教室を出て行った。
晃 「ありゃりゃ。拉致られちゃったよ」
茜 「まぁ心配ないでしょ。それよりも・・・今日さ」
晃 「ん?」
茜 「久しぶりに行かない?」
晃 「・・・そうだな。きっとあいつ、寂しがってピーピー泣いてると思うぜ」
茜 「・・・ふふ。そうね」