瑞樹「・・・・・・」
車に乗ってからはずっとこの調子で何もしゃべらなかった。
男 「・・・(いったい何があったっていうんだ。さっきからずっとこんな感じだし・・・何よりこっちとしても調子狂う・・・)」
瑞樹「・・・ねぇ」
男 「は、はい!」
瑞樹「通り過ぎたわよ」
男 「え、あ・・・!」
どうやら曲がり損ねたらしい。
瑞樹「・・・・・・」
男 「すいません。すぐに引き返しますんで」
瑞樹「・・・・・・」
それからまた黙りこくってしまった。
裕一「・・・・・もうこんな時間か」
空になった袋をテーブルの上に置き、キッチンへと向かう。
裕一「えっぷ・・・とりあえず・・・茶でも飲もう・・・」
裕一「ふ〜〜・・・さて、何を作ろうか」
すると何か視線のようなものを感じ取った裕一。
三咲「・・・・・・」
三咲だった。ドアから顔を少しだけ出して裕一を睨んでいた。
裕一「・・・冷蔵庫の中は・・・いつも期待はしてないからなぁ」
そう言いつつ、開ける。
裕一「ん〜これだとチャーハンぐらいかな」
三咲「・・・・・・」
裕一「さて、はじめ」
三咲「ううーーーーーーーーーーーーーーー!!」
するといきなり飛び出したかと思うとそのまま駆け出し、裕一を後ろから抱きしめた。
裕一「うお・・・あぶないじゃないか」
三咲「なんで追いかけてきてくれなかったのよ!!」
裕一「・・・なんで?」
三咲「なんでって・・・そりゃあ・・・」
裕一「・・・・・・」
三咲「・・・はぁ・・・もういい。あ〜あ、計画失敗だなぁ、また」
裕一「計画?」
三咲「逃げる私、それを懸命に追いかけるお兄ちゃん。お兄ちゃんは追いついて私の腕を掴む。抵抗する私に優しい声でお兄ちゃんはなだめてくれる。そして最後にあま〜いキス・・・・ほわぁ〜〜〜・・・・」
顔がニヤついていた。
裕一「・・・・・・」
三咲「それなのに裕一ったら、追いかけもせず何か食べてるんだもん。・・・で?」
裕一「ちゃんと主語をつけて話せ。で、とはなんだ?」
三咲「さっきなにを食べてたのかってことよ」
裕一「あ〜あれな。石炭だよ」
三咲「・・・・・・はい?」
裕一「さ、もういいだろう。離れてくれ」
三咲「・・・裕一って・・・」
裕一「ん?」
三咲「・・・そういうのが好きなの?」
裕一「好きで食ったわけじゃねぇよ・・・」
淡々と夕飯を作っていく裕一がふとあることを思い出し、それを言う前にまずさっきのことについて訂正したいことを言う。
裕一「あのさ、さっき俺が追いかけてどうたらこうたらってのあったよなぁ」
三咲「結構はぶったわねぇ・・・それがどうしたの?」
裕一「いや、ちょっと言っておきたかったことがあるだけだ」
三咲「え!・・・それってもしかして・・・こくは」
裕一「違うから。断じて違うから」
三咲「そんなキッパリ言わなくてもいいのに・・・」
裕一「そんなことはどうでもいい」
三咲「良くないよ!!」
裕一「ああもう!話がぜんぜん進まん!!とにかく言うぞ」
三咲「・・・なにを?」
裕一「・・・もしあの時俺がお前を追いかけ、優しい言葉でお前をなだめようと、俺はお前にキスはしないから。だって俺、好きなやついるからそいつにしかやらないって決めてるんだ」
三咲「・・・・・え?」
裕一「訂正終わり」
そういうとどこから取り出したのか耳栓を付けて夕飯作りを再開した。
晃 「あ、そうだ。今から裕一んとこ行こうぜ。どうせ暇だろ?」
茜 「まぁ・・・そうだけど。でももう暗いし」
晃 「そんなこと気にするやつじゃないし」
茜 「それに私はいいけど晃、あんたはいろいろと言われるんじゃない?」
晃 「まぁ・・・否定はしないがな。さ、行こうぜ」
ええええええええええエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエええええええええええエエエエエエエエエエエえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
晃 「うおっ!・・・あり?この声、どこかで・・・」
茜 「聞いたことがあるような声ねぇ・・・」
晃 「・・・まぁ行こうぜ」
そう言って二人は歩き出した。