瑞樹「・・・それで、なんであんたがここにいるのよ」
スカートに付いた砂をはたきながら瑞樹は尋ねた。
裕一「いやなんでって・・・ここ歩いてたらお前らが喧嘩してるとこを偶然見つけてさ」
瑞樹「!・・・全部、見てたの・・・?」
裕一「悪かったか?まぁおかげで助かっただろ?」
瑞樹「・・・帰る!!」
そう言って走っていってしまった。
裕一「あ、おいっ!」
微かに見えた瑞樹の横顔は・・・何故か紅く染まっていた。
裕一「・・・?」
裕一は瑞樹が見えなくなるまでその後姿をずっと見ていた。
商店街・・・
裕一は朝訪れた店にまた足を運んでいた。店の前ではあの女性店員が店前の掃除をしていた。
裕一「・・・ども」
軽く挨拶するとその女性店員は裕一に気づいてくれた。
女性「あ、朝の!」
裕一「その・・・朝のことについて・・・」
女性「あ・・・はい」
裕一「・・・あなた、言いましたよね?俺にあいつを救ってくれと」
女性「はい」
裕一「・・・・・言っときますが、俺たちがあいつに関わった時間もまだそう経ってません。言えばまだ短いです。それでもこの俺に頼みますか?」
女性「・・・・・・」
すると女性店員は手に持っていた箒とちりとりをドアのそばに置き、再び裕一の顔を見た。
女性「・・・ふふ」
そして何故か笑っていた。
裕一「・・・あの〜なんで俺の顔見て笑うんでしょうか?」
ぽりぽりと顔をかきながら困っていた。
女性「あ、すいません!・・・ちょっと、思い出し笑いを、ね」
裕一「??」
女性「実はあの後思い出したことがあるんです。あなたの名前、緒方裕一さん、ですね?」
裕一「なっ!なんで俺の名前を・・・あっ」
女性「そう。ゆういつ彼女が私に話してくれたことがあるんです。それが、あなたのことです」
裕一「・・・俺?」
女性「はい!」
女性店員は微笑んでいた。
裕一「・・・それで・・・どんなことを?」
女性「それ以上は言えません」
裕一「・・・どうしても?」
女性「はい!」
また微笑んでいた。
女性「あ、でもゆういつあなたに言えることがあります」
裕一「・・・それは?」
黒澤さんはあなたに惚れてるってことですよ
裕一「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
そしてまた微笑んでいた。
女性「後はその時が来たときに彼女から直接聞いてくださいな」
裕一「・・・・・・俺に?(どういうことだ?)」
すると店の中からまた店員さんが出てきた。ガッチリとしたマッチョな店員だった。
男 「おい慶太!早く掃除を切り上げて中の手伝いをしてくれ」
そう言って店の中に入っていった。
裕一「・・・慶太?(なんで男の名前?それに俺は裕一。全然違うしなぁ・・・)」
女性「は〜〜〜〜〜〜い」
裕一「・・・へっ?!」
隣に居た女性店員が声高らかに返事をしていた。あ、っと気づいたのかその女性店員?は裕一の耳元でこう呟いた。
女性「私・・・もとは男だったんですよぉ〜」
裕一「・・・・・・」
女性「ふふ。じゃ、また会いましょう」
悪戯な笑みを残して店の中に入っていった。
裕一「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
裕一はその後五分ぐらい立ち尽くしたままで居た。