小説『俺としつこい女』
作者:ブレイバー()

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坂本優奈・・・
四人の幼馴染であり、裕一の彼女。ちょうど10月の始め、この世を去った。死亡内容は事故死。家族で久しぶりの旅行に出かけている最中に起こった出来事だ。相手側の居眠り運転が事故を起こした原因だ。




三咲「・・そう・・・だったんだ・・・」

裕一「ああ・・・もう俺たちの知ってる坂本優奈は・・・もうこの世にはいないんだ・・・」
花束を置き、再び坂本家の墓を見る。

裕一「今日はちょっと優奈に話をしに来たんだ。それでちょうど何も知らないお前がいたから・・・お前にも知っておいてもらいたかったんだ・・・すまんな」
三咲は泣いていた。しかし笑顔で裕一の顔を見ると

三咲「ううん。嬉しいよ。ありがとう・・・教えてくれて・・・」
するとまた大声で泣き出した三咲。しかし裕一は・・・泣かなかった。いや・・・泣けなかった。







10分ぐらいしてようやく三咲も落ち着いたようだ。

三咲「だいじょぶ・・・・・・さ、優奈ちゃんにご報告しないと」
三咲は手をパンパンと叩くとそのまま目を閉じ、祈るような体勢になった。

裕一「・・・・・・」
裕一もその後に続いた。








裕一『・・・よう優奈。元気にしてるか?俺は毎日こんなんだ。元気でもないし・・・普通に暮らしてる。お前んとこはどうだ?ちゃんと家族みんなで仲良く暮らしてるか?って当たり前だよな。お前らんとこ、ものすごい仲良かったもんな・・・』

三咲「・・・・・・」

裕一『ほら、今日は三咲も遊びに来てくれたぞ。お前の妹分でもあった三咲だ。相変わらずお前に似て元気な奴だ』

三咲「・・・・・・」

裕一『そういえば今日は別の用件でお前に聞きたいことがあんだ・・・・・・でもそれはお前を裏切るようなことになるかもしれない。いや、裏切ることになるな・・・・・・・・・実はな・・・・・・この三咲よりももっとお前に似た奴がいるんだよ。ほら、この前来た時に話した奴』

三咲「・・・・・・ぃ・・ん」

裕一『お前に似てものすごく元気で・・・明るくて・・・すんごいしつこいんだ。言うなればお前の分身みたいなもんかな、はは。・・・・・・それでさ優奈・・・・俺・・・そいつのこと・・・・好きかもしれないんだ・・・・いや、好きだ!』

三咲「・・・・・いちゃん」

裕一『この気持ち、嘘偽り無く、まったく持って本当のことなんだ・・・俺はあいつのことが好き。でも・・・・俺は卑怯な奴なんだ・・・だって・・・俺はまだお前のことも好き・・・なんだ・・・だから・・・今正直・・・最低だけど・・・迷ってる』

三咲「・・・・・お兄ちゃん!」

裕一「・・・え・・・あ・・・ど、どうした?三咲」

三咲「どうしたじゃないわよ。ずっと呼んでるのに。なに5分もずっと祈ってるのよ」
時計を見ると確かに。5分は経っていた。さすがに5分も話し込んでたら不審に思われても仕方が無い。裕一はまた祈る体勢に。

裕一『・・・ごめん。俺って最低だよな・・・・・また来るから・・・』
元に戻り、三咲の顔を見ると少し目が赤くなっていた。

裕一「話せたか?」

三咲「うん」

裕一「そっか。んじゃ帰るか」
2人は墓の前を後にした。





商店街まで戻ってくると・・・
裕一「!!」

三咲「ん?どうしたのお兄ちゃん?」

裕一「わ、悪い・・・ちょっとトイレ・・・」
近くにあった喫茶店に駆け込み、トイレの中に入った。すぐさま膝を突き

裕一「げあぁ・・・・・うっ・・・げぇえ・・!」
何故か吐いていた。

裕一「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・な、なんだ・・・?!」






三咲「いったいどうしちゃったのかしら。珍しく駆け込んでいったけど・・・あ、コーヒーください」
三咲は喫茶店の中で裕一が出てくるまで待っていた。


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