昼休み・・・
瑞樹「・・・・・・」
晃 「ヘイヘイ彼女!俺と一緒にお茶でもしないか〜い♪」
瑞樹「・・・・・・」
茜 「ねぇちょっと晃・・・あんたさぁ・・・お母さんのお腹の中からやり直してきて」
晃 「どういうことですか?!」
茜 「もういいから。とにかく晃はあっちに逝ってて」
晃 「字が!!」
茜 「晃・・・」
晃 「・・・・・はい・・・」
昇は教室から出て行った。・・・今、教室には離れたところで話し合ってる女子グループと瑞樹と茜だけになった。
茜 「・・・ちょっと話、いいかしら」
瑞樹「・・・どうぞ」
茜 「あなた・・・・・緒方くんとなにかあった?」
率直な意見だった。
瑞樹「・・・・・・」
瑞樹は黙っていた。
茜 「・・・そう。関係してるんだ・・・」
しかし茜にはお見通しだった。
茜 「あんた・・・最低ね」
瑞樹「・・・ぇ・・・?」
茜の口からものすごいドスの効いた声に少し瑞樹は驚いた。
茜 「あんたたちに何があったかは知らないわ。でも私言ったわよね・・・緒方・・・裕一を裏切ったら許さないって・・・」
瑞樹「・・・・・・」
茜 「・・・私、昨日の彼はとても活き活きしてて・・・昔の彼に戻ってくれたみたいでとても嬉しかった・・・。そしてそれはあなた、黒澤さんのおかげ。とても感謝・・・してた」
過去形。
茜 「昨日の朝、彼、ほんとにすごく明るい顔で登校してきたわ。彼のあんな顔、久しぶり見た・・・そして帰り・・・彼のあんな悲しい顔も・・・久しぶりに見た」
瑞樹「・・・・・・」
茜 「・・・心配で声を掛けたわ・・・でも彼は何も話してくれなかった・・・今にも涙が溢れ出してきそう。そんな顔だったわ」
瑞樹「・・・・・・」
茜 「それでも心配で問い詰めてたら・・・彼にこんなものをもらったの」
自分の席に行き、横に掛かっている小さな紙袋を持ってきた。袋の端はぐしゃぐしゃに折れ曲がっていた。
茜 「これは彼が学校に持ってきたものよ。朝、これだけは無くすまい、そんな感じで大切に持ってたわ。でも学校が終わって・・・何故かこれを渡されたの。・・・これは何でしょうね?私、失礼だけど拝見させてもらったの・・・そしたら驚き。これは私宛でも晃宛でもない・・・あなた宛だったの・・・」
瑞樹「ぇ?」
ほんとに小さな声だった。
茜 「あなた、昨日誕生日だったでしょう。彼が何故あなたの誕生日を知ってたかはわからないけど・・・これがあなた宛にだってことはハッキリとわかったわ」
瑞樹「・・・なんで・・・?」
茜 「プレゼントの横に誕生日カードが入ってたから・・・これも失礼だけど拝見させてもらったわ・・・ちゃんと書いてあったわ。彼の筆跡・・・・あなたの名前・・・」
瑞樹「・・・・・・」
茜 「・・・見てみなさい。はい、お誕生日おめでとう」
さらにドスの効いた声で瑞樹に紙袋を渡した。
瑞樹「・・・・・・」
瑞樹は紙袋を受け取り中を確認した。
瑞樹「・・・!!」
茜 「・・・・・・」
瑞樹「・・・・これ・・・は・・・」
紙袋の中に手を入れ、中のプレゼントを取り出す。・・・・・・・中から出てきたのは・・・白い猫のぬいぐるみだった。
瑞樹「・・・・・・」
茜 「中にカードも入ってるわ。あなたの目でその内容も確認しなさい」
瑞樹は茜に言われ恐る恐る見た。すると開封されたカードが入っていた。それを手に取り、袋から取り出すと・・・震える手で中を見た。
瑞樹「・・・・・・!!」
茜 「・・・もう一度言うわ・・・・あんた・・・最低ね」
瑞樹「・・・ぅ・・・ぅぅ・・・!」
瑞樹の目から何故か涙が出ていた。
5分ぐらいして茜が言った。
茜 「・・・行くわよ」
瑞樹「・・・・・・」
茜 「裕一のところに」
立ち上がり、瑞樹の腕を掴んで教室から出て行った。
晃 「・・・・・・あれ?茜。ど」
茜 「私たちサボるから旨いこと先生ごまかしてて。じゃ」
晃 「・・・俺の重要な台詞に・・・わざと被りを・・・・・・グスン」
とぼとぼと教室に帰っていく晃。
茜と瑞樹が校門を出たところでチャイムが鳴り響いた。
瑞樹の手には・・・猫のぬいぐるみとカードが入った紙袋がちゃんと握られていた。
茜 「・・・行くわよ」
瑞樹「・・・・・・」
茜は瑞樹の腕を離し、歩き出す。その後ろに瑞樹もゆっくりと後をついて行く。