小説『俺としつこい女』
作者:ブレイバー()

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瑞樹は緒方の家に車を停めた。

瑞樹「ここで待ってなさい」

男 「わかりました」
車を出てそのままドアの前まで進み出る。インターフォンを押すとすぐさま三咲の声が聞こえた。

三咲「お兄ちゃん?!」

瑞樹「・・・私・・・黒澤ですけど・・・緒方と同じクラスメイトの・・・」

三咲「黒澤さん・・・?」

瑞樹「その・・・緒方のことについてお話があるの・・・」

三咲「・・・今開けます」
ガチャリという音が鳴ってその30秒後にはドアの鍵が開錠され、開かれる。

三咲「・・・どうぞ」

瑞樹「お邪魔します・・・」
リビングに通してもらうとお互い向き合うような形で座った。三咲は落ち着きがないようだった・・・

三咲「・・・・・・」

瑞樹「これでお会いするのは2回目でしたよね」

三咲「・・・どこかでお会いしましたっけ?」

瑞樹「・・・覚えていらっしゃらないのなら別にいいです」

三咲「それで・・・お兄ちゃんは?」
ようやく本題に入る。

三咲「お兄ちゃんは今どこにいるの?」

瑞樹「緒方は・・・今入院してるの」

三咲「入院って・・・まさか事故?!」

瑞樹「事故じゃないわ・・・その・・・緒方のお腹に癌が見つかって・・・昨日手術して・・・」

三咲「それで・・・お兄ちゃん・・・」

瑞樹「安心して。ちゃんと手術は成功したから」

三咲「そう・・・よかったぁ・・・」
ほっと胸をなでおろす三咲。

瑞樹「・・・ただ発見が少し遅かったらしいの。少し悪性になりかけていたらしいの。だからもしかしたら癌が転移するおそれもあるの・・・」

三咲「それでも・・・お兄ちゃんが生きていてくれたんだからそれだけでも・・・よかった・・・」

瑞樹「それで今日はそのご報告をご家族の方に知らせにきたのだけど・・・緒方のご両親は今どちらにいらっしゃるのかしら?」

三咲「・・・・・・」

瑞樹「・・・あの」
三咲「お兄ちゃんのご両親・・・」
瑞樹の声に被る様に言った。

三咲「・・・正一さんと恵子さんは・・・2年前に亡くなられたわ・・・」

瑞樹「・・・え」
どうやら裕一の周りには“死”というものが纏わりついていることに瑞樹は改めて知った。




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