さすがに冷やしすぎるのも良くないので、瀾の足首に当てていたタオルを外し、湿布を貼り剥がれないように包帯を巻いた。
「さ、これでOKだ」
「はい。ありがとうございます」
しかし、乙は瀾の足首から手を離そうとはしなかった。
「あの…乙様?」
「なんだ?」
「もう、大丈夫なんですよね?」
「応急措置はな」
「え?」
「筋を痛めているんだ。
キチンとマッサージしないと後遺症が残るぜ?
仕事に支障が出たら困るだろ?」
「え、はい」
きょとんとした顔で瀾は答えた。
その瞬間、乙は顔には出さず内心ほくそ笑んだ。
『…あと一歩だ』
「なら、もう少しこのまま大人しくしていてくれ」
「はい」
「よし、いい娘だ」
素直に聞き入れる瀾に満遍の笑顔を向けた。
包帯から上のふくらはぎをマッサージする。
「痛っー!」
「足…浮腫んでるなぁ・・・ついでに解しておくか」
今度は優しくマッサージを始める。
「まだ、痛いか?」
「い、いいえ…気持ち良い…です」
乙の浮腫みに合わせた力加減に瀾は半ば、うっとりとした顔で身を任せている。
乙はと言えば、瀾の〔気持ち良い〕という言葉に危うく顔が緩みそうになるのを必死で堪え、平常心を保っていた。