小説『アールグレイの昼下がり』
作者:silence(Ameba)

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【帰国】


ざわざわざわ…


ジェット機を降りバッグを肩ごしに肘を曲げて持ち、雑踏の中を縫うように、しかし真っ直ぐスムーズに歩く一人の影があった。
 
身の丈は170cm。
スラリと伸びた長い足。
スリムパンツとトップスとジャケットに革のメンズブーツ。
毛先を少し無造作にし、きちんとセットされたショートの髪。
サングラスをかけていても解る男性に間違われるような甘く整ったポーカーフェイス。
その姿はまるで何処かのモデルの様に見える。

空港の入り口まで行くと物々しい高級車が待っていた。
たった今、空港から吐き出された人物に黒服の男が近寄り静かに口を開いた。


「お帰りなさいませ、乙様
お迎えにあがりました」
「…迎えはいらないと言ったはずだが?」

サングラスを外し、ちらりと黒服を見ると乙が静かに口を開く。
その言葉に対し黒服の男は淡々とこう返した。

「申し訳ありません。旦那様からの言い付けですので」

ピクリと眉間にしわを寄せ、少しキツい視線を向けると無言で車に乗り込んだ。
後部座席に座ると脚を組み目を伏せていた。
車内から内線が入る。
 

-3-
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