──2人は、ゲストルームのベッドの上で唇を重ねていた。
ベッドの上に仰向けに横たわる舞緋流と、その上に四つんばいに見つめ乙…。
夕刻の光が部屋をオレンジとセピアとが交ざった色に染めている。
不思議な…言葉に出来ない感覚…。
今、こうして瞳を合わせている相手は、悟っているような不思議な眼差しをしている。
「…ッ」
乙は思わず一瞬そっと舞緋流から目を反らした。
幼少の自分の本当に大切な者への宝物にも似た、決して汚すことのない。
そして…
決して汚してはいけない思いの中で、今この状況にいる事にいつもとは違い、自ら進んで前進できずに戸惑いを隠せないでいる。
「怖いですか?
お母様に似ている私の眼が…罪悪感が」
舞緋流の真っすぐな瞳…。
「…ああ」
「…大丈夫…」
両手を伸ばし乙の肩に回すと、微かに微笑んだ。
慈愛にも似た、全てを包む瞳。
「私が全部受けとめますから…
哀しみもその胸の痛みも…」
ゆっくり乙に近付き自らキスを交す。
チクリと一瞬、胸が刺さる。
でも…温かい、
恋愛とは違う慈愛のキス…。
あの時と同じ。
母に頭を撫でられていた時と…。
『かなわないな』
キスを交わしながら乙は、心の中ではにかむ。
温もりに包まれながら、過去への刺が溶けていくのが解る。
絡み合う手と手。
白く細い指は、まるで指遊びでもするようにお互いを確かめる。
「乙様…」
舞緋流は優しくも少し頬を赤らめ、目の前の温もりを求めた。
乙の唇が舞緋流の白い指をなぞり腕を這い肩へ移動する。
その手は、彼女の腰の括れを滑っていく。
「ア…」
絹のような滑らかな白い肌。
ガラスでも扱うようにそっと、触れている。
抱いていると言うよりは、まるでダンスでもするように流れ肌を確かめる。
少しでも力を入れれば、壊れてしまいそうな繊細さが一つ一つの動きに躊躇を誘う。
「舞緋流…」
乙の唇は首を甘く吸い、手は恐る恐る次第に胸へ伸びた。
「…ン…//」
ピクリと体を反応させて、身を委ねている。