小説『アールグレイの昼下がり』
作者:silence(Ameba)

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「そういえば姉様、歳いくつでしっけ?」
「今年で18だが?」
「やっぱり!!」
「何がだ?」
「姉様、お酒は二十歳になってからですよ。
ねぇ、留奈」
「え、ええ…」
「唐突に何をいうかと思えばそんな事か、知らないのか?
日本の法律では、酒は二十歳になる前に一日中飲み明かすという決まりがあってな。
しかも!その日から酒を1日にキャップ一杯口にしないと冷え性になったり、虚弱体質になったり、ましてや一生飲めない体になるんだぞ。
よく言うだろ?
多少の酒は薬になるって。なぁ、留奈♪」

聖慈の質問に何食わぬ顔をして、サラリと平気でとんでもない嘘をついた。

『…養命酒か!』

聞いていた二人は、心の中でつい突っ込みを入れてしまった。
コホン、ちなみに聖慈が養命酒を知ってるあたりは、あえて突っ込みを入れないように。

さて、もちろん日本の法律では未成年は酒を口にしてはいけない!
(*お酒は二十歳になってから♪)
しかも、その同意をわざわざ留奈に振ってくる。

「乙様…それはいくら何でも流石に無理があります」
「…姉様」
「クス…、やっぱりバレたか。
ま、紳士のたしなみというところだ、気にするな♪」

気が付けば二人の会話に徐々にだいぶ緊張が解れてきた。

「そういえば、雛羽の伯父さまから手紙が来ていましたよ」
「手紙?」
「ええ。僕はもう目を通しましたが同じ内容とも限りませんし、急ぎでなければ良いんですが」
「どうせ顔が見たい程度だろ?
解った、帰ったら見てみるよ」

話に花を咲かせていると、注文していた料理が届く。

乙の前には鯛のムニエルとスープとライス、聖慈と留奈の前には鴨肉の香草焼き包みとスープ・ライスが置かれた。

「わぁ。美味しそう♪」

聖慈が無邪気に口を開く。
乙の前にワイングラスがそっと置かれるとウェイターがワイン紹介をする。

「1980年ものの
シャトー ラ・トゥールをご用意させていただきました」
「ありがとう。
ああ、それと、もう一つ頼まれてくれないか?
外にいる運転手に俺と同じ物を出してくれないか。
食べおわったのを見計らってコーヒーでも出してやってくれ」
「かしこまりました」

元懲罰房の針子部屋の鍵…。
乙はテーブルの下で手を開き、鍵を見つめる。

『この鍵がまた俺の手元に帰ってくるとはな』

執事の今井の計らいにフッと目を伏せ笑顔を作ると鍵を手で包んだ。

「姉様?」
「ん?どうした?」
「何かあったんですか?」
「フッ…。いや、大したことじゃない。
さあ、冷めないうちに食べよう」
「はい」

そういうと鍵をポケットへしまい込んだ。

堅苦しい料理かと思いきや鴨肉は、意外にも食べやすく留奈でも戸惑いが少なく食べれた。
勿論、迷いが出る前に聖慈がソッとサポートしてくれていたのもあった。

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