小説『アールグレイの昼下がり』
作者:silence(Ameba)

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小高い上の先に洋館を彷彿させるような大きな建物が建っている。
車が家の前に止まった。
モニターで乙を確認すると屋敷の門が開く。


『何度見ても飽き飽きする屋敷だ…』


大きな扉が開かれると、目の前には使用人達が両サイドに立ち並んでいる。
 
「お帰りなさいませ」
 
執事が一礼をし言葉を発すると、続けて使用人達が言葉を揃えて
 
「お帰りなさいませ。乙様」
 
と綺麗に45度の一礼をしている列が並ぶ。
 
「……ああ」
 
乙が答えるのが早かったか、それとも同時だったか今となっては解らないが、踊り場の階段から5・6歳の小さな少年が駆け寄ってきた。
 
「姉様ぁ〜♪」
 
 
…乙は反射的に蹴を加えた。
 
「…姉様と…呼ぶな…」




『いや、もとい。
可愛い弟に俺がそんな事をする訳がない。』


少年に微かな笑顔を向けると


「元気にしていたか?」
「はい。姉様♪」


[姉様]という言葉に反応し、乙は思わず腹部に右ストレー…


『いや、だからそんな事しないんだってばっ!!』



乙は、少年に向け静かなりにも落ち着いて口を開いた。


「ほら、お前の大好きなリンペ・ペールのケーキだ」
「ありがとう、姉様♪」
「一緒に食べるか?」
「はい♪」
 
乙は執事に目を向けると


「すまないが、俺の部屋にお茶を」
「かしこまりました。」


その言葉を確認すると、弟が乙の手を取り駆け足で部屋へと向かった。

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