小説『アールグレイの昼下がり』
作者:silence(Ameba)

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コンコン…

部屋のノックが聞こえた。

「空いている」
「失礼いたします」

乙が返事をすると執事の今井が入ってきた。

「ああ、今井か…何か解ったのか?」
「…それが…申し訳ありません」
「成る程…、今井の情報網でも解らないとなると仕方ないなぁ…。
他の学園の手配を」
「申し訳ありません」
「いや、気にしなくていい」
「お気遣いありがとうございます。
…しかし、たかが編入一つに、面妖だと思いませんか?」
「ああ…俺もそれが引っ掛かっていたんだ。
しかも誰の仕業かも出てこない」
「もう少し、調べて見ましょうか」
「ああ…頼む」
「かしこまりました」

今井は、一例をして部屋を出ていった。
乙は、溜め息をつくと、また考え込んだ。
何気なく選んだ学園だったが、一体何があるというのか…。
まさか、海外での素行でも調べられたのだろうか?

「フッ、まさか…な…」


コンコン…

また、ノックが鳴った。

「はい?」

カチャリとドアを開けると一人のメイドが立っていた。

「あの…」
「なんだ?」
「衣類の…クリーニングが…終わったので…あの…お持ちしました///」

しかし、メイドの手には何もない。

「…?俺には手ぶらに見えるんだが…。
それにクリーニングなら、あそこに」

乙が、外出中に瀾が持って来たであろう出来上がったクリーニングの服に視線をやると、

「あの…!!」

メイドは顔を赤くして、モジモジと俯いている。
乙は少し考えるとメイドに言った。

「…まぁ、いい。
そんな所に立っていても仕方がない、入れよ」
「あ、ありがとうございます///」

部屋の中に入ってもメイドは、俯いたままモジモジとしている。

「…で?何を持ってきたんだ?」
「あの…///」

顔を赤くして俯くメイドの首元に手を添えると顔をあげさせ、クールに優しく見つめる。
メイドを見て何かを悟り、またしても乙の悪い癖が出たらしい。
完全にスイッチが入っている。

「あの…じゃあ、解らない…」
「あ…///」
「ん?なんだ?
何か渡しに来たんじゃないのか?」
「////」
「可愛い反応だな♪」
「あ…あの…///」
「ん?」
「こ、これ…////」

メイドが差し出したのは、白いハンカチだった。

「?」
「乙様は…覚えてらっしゃらないかも知れませんが…///
以前、お屋敷に戻られた時に、まだ新人で怒られてばかりで…泣いていた私に貸して下さったものです…///」

そんな事もあっただろうか…。
何となく乙は記憶をたどった。
メイドは、恥ずかしそうに続けた。

「あの後、乙様、また海外に戻られて、返しそびれてしまって///」
「そうか。ずいぶん待たせてしまったな」
「いえ…///このハンカチのおかげで辛い時も…頑張れました//」
「そうか…じゃあ、待たせてしまったお詫びをしないとな」
「え、そんな!!とんでもな…ン//」

不意に、乙の唇が重なった。

「んん…///ふぁ…//」
「可愛いな…」

乙の腕が彼女の腰に周り…

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