トクン…トクンと瀾の心臓の音が、高鳴る。
さっきまで不機嫌だったというのに、乙のキス一つで途端に機嫌が直ってしまう。
瀾は首を少し後ろに向け、後ろから抱きながら座っている乙をチラリと見た。
「なんだ?」
「あ…///」
乙の間近な笑顔に思わず俯いた。
「ふふ…///」
「何だよ、急に笑ったりして」
「何でもないです…」
嬉しさのあまり、笑顔で乙に保たれ甘える。
「クス、変な奴。
ほら、これとか可愛いんじゃないか?」
乙が指差したメイド服は、ベストタイプのネクタイ式だった。
「ええ〜!!こんなの着たら浮いちゃいますよぉ」
「そうか?似合うと思うけど。
じゃあ、これは?」
次に指差したのは、胸がくりぬかれブラウスで強調されるタイプ。
瀾は思わず顔を赤くした。
「乙様の意地悪っ!!
私、そんなに胸ないですぅ!!」
「フッ…馬鹿だなぁ。
だから良いんじゃないか」
ふと見ると乙の顔は、クールな笑顔ながらも明らかにいやらしい事を考えている時の顔だった。
「乙様のエッチ!!」
「……」
「真面目に選んで下さいよぉ!!」
「真面目に選んでいるつもりなんだがなぁ…」
乙は、瀾をキュッと抱き締めると耳元で囁いた。
「なんなら…
エプロンだけでも俺は構わないんだぜ?」
「ッ/////」
瀾は思わずパンフレットで乙の顔を叩いた。
乙の顔はパンフレットで隠れた。
「…ッ!!」
「…////」
反射的とはいえ瀾がハッと我に返った時には、時すでに遅し…。
乙は、ゆっくり瀾の両腕を掴み、退けると不適な笑みを浮かべた。
「なぁ〜みぃ〜…!!」
「あ、あの…!!だって!!
乙様が、変な事言うから…」
「主人に手をあげるとは、これは【お仕置き】が必要だな…」
キラリと光る乙の瞳に瀾は、どんな恐ろしいものが待っているのかと、たじろぎながら後退る。
「あ、あの…申し訳ありません!!」
「謝っても、もう遅い!!」
「きゃっ!!」
クールフェイスでソファーの上で瀾を押し倒すと、シュルっとネクタイを外し、瀾の腕を縛る。
「き、乙様…」
半ば涙目で少し怯えていると、乙は優しくキスをした。
唇が離れると意外にも笑顔で、瀾に囁いた。
「ここで【お仕置き】されるのと、ベッドで【お仕置き】されるのとどっちがいいんだ?」
「…////」
瀾は涙目で小さく 「ベッド」 と答えたのだった。