【リスト】
程なくして、執事がメイドリストを持って戻ってきた。
｢最近入ったメイドのリストになります。しかし何故リストを？｣
｢ﾌｯ…どんなメイドが入ったのか把握しておくのは主として当然だろ？｣
｢それは御最もですが｣
｢それとも、他に何か理由が必要か？｣
｢いいえ｣
顔色一つ変えずにサラリと答える乙に執事は、これまた顔色一つ変えずに答えた。
乙はリストを受け取ると内容に目を通し始めた。
｢他に御用はございますか？｣
｢いや、もういい｣
リストに集中し目を落としたまま、執事の言葉に半ば曖昧に言葉を払った。
｢では、失礼いたします｣
執事が答えたが、その言葉は乙にはすでに届いてはいなかった。
執事は一礼をすると静かに部屋を後にする。
｢…う〜ん。新人は４人…か｣
リストには顔写真と一緒に一通りの事が書いてある。
・名前
・生年月日
・住所
・家族構成
・身長、体重
・性格…ｅｔｃ
｢なるほど…、今回はなかなかの粒揃いだな｣
リストにあった名前は…
・赤梨 留奈[ｱｶﾅｼ ﾙﾅ]
・水風 舞緋流[ﾐｽﾞｶｾﾞ ﾏﾋﾙ]
・野中 瀾[ﾉﾅｶ ﾅﾐ]
・櫻井 かなえ[ｻｸﾗｲ ｶﾅｴ]
一人一人のプロフィールを丁寧に目を通す。
｢一通りの事は解ったが…
やはり これだけじゃあなぁ｣
スッと立ち上がると、リストを引き出しに仕舞い鍵をかける。
鍵を口元に当てると少し机に腰を寄り掛け、数秒考え込むとクールにニヤリと笑みを浮かべた。
｢ｸｽ…
早速、彼女達の仕事ぶりでも見て来るとするか♪｣
作戦決行！とばかりに片手をポケットに突っ込み静かに部屋を後にした。
残された部屋の片隅で細やかに咲いていたシクラメンの花びらが一枚、自らの生命を削るかのようにハラリとその身を散らした…。