小説『くっだんねー!』
作者:()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

ばんがいへん―――クリップ君のお部屋






「ここどこだ?」

 いつものように寝ていたはずなのだが、いつの間にか真っ白な世界に零は寝ていた、起き上がったのだが何処までも白い世界、逆に気味が悪い。

「これ夢だよな? 夢ならもう一回寝たら覚めるか?」

 そう言って再び真っ白な床に寝転がろうとすると、目の前に何も書かれていないクリップボードを見つけた。

「んだ? あれは?」

 先ほどまでは何も無かったはず、急に目の前にクリップボード、どこかのホラーで無ければ良いがと思いながら零はそれに恐る恐る近づく。

 何の変哲も無いただの真っ白いクリップボード、おかしいのはそのボードだけが中に浮いていることだけである、普通は支えがあるはずなのだが今は無い。
 零はそれに触ってみる、何処もおかしなところは無い、つるつるとした感触はするが、それはクリップボードと同じである、その時。

『やあやあ、こんにちは』

「うお!」

 突如クリップボードに躍り出た文字を見て零は驚きの声上げ数歩後ずさる。

『おどろかないでよー、僕はクリップ君さ』

「あ? クリップ君だぁ?」

『そうそう、勝手に小説の世界の人を連れ込むのが趣味さ』

「随分と性質の悪い奴だな・・・」

 零は困ったように口元を歪める。

『心配しないでよー、ホラーみたいな結末は無いからさー』

「あっても困るけどな」

『でもでもー、一様連れてきたからにはー、質問に答えてもらいマース』

 最後の文字は楽しそうにカラフルに色づけされている。

「質問?」

『いいかな?』

「別にいいけど、答えたくないもんは答えないぞ」

『はーい、じゃあQ1 君の名前はなんですか? フルネームね』

「いいのか? こんなので?」

 どのような質問が来るのかわからないためかなり身構えていたのだが、最初の質問に零は拍子抜けをした。

『いいのいいのー』

「・・・朱雀 零」

 零は素っ気無く答える、意外と自分で自分の名前を言うのは抵抗がある。

『はいはーい、零君ねー、じゃあQ2 好きな食べ物は?』

「・・・焼きそば」

『ほうほう、キャンプの時作ってたよね、おいしそうだった』

「何で知ってんだ?」

 ビックリしたように零は目を見開く、だが、その質問には答えずスラスラと次の質問が書き記される。

『じゃあQ3 嫌いな食べ物は?』

「あー、リンゴだな」

『珍しいね、リンゴが嫌いなんて、じゃあ嫌いな理由教えてもらえたり?』

「言いたくねー」

『なるほど、リンゴをかじってたら青虫が、それじゃあ嫌いになっても仕方ないねー』

「は!? 何で知ってんだよ!」

『ひ・み・つ〜』

「ぶっ壊すぞ、クリップ!」

『怖い怖い、でも壊したら帰れないよ?』

「・・・痛いとこ突いてきやがる」

 ムスッと眉を寄せると零は続きを催促する。

『じゃあーQ4 好きな色は?』

「赤」

『ほうほう、赤がすきなのにリンゴはダメと・・・やっぱ青虫の所為?』

「ああ! そうだよ!」

『自棄にならないでよー、さてさてQ5 嫌いな色は何ですか?』

「青だな」

『対照色が嫌いなんだ』

「黒い以外の暗い色は嫌いだな」

『ほうほうなるへそ、さーてQ6 零君の趣味は?』

「あー、暇な時間を作ること」

『珍しい答えですねー、何故でしょう?』

「さーな、時々ボーっとするのが好きなだけだよ」

『フムフム、変わった人もいるもんですね』

「なあ、お前喧嘩売ってる?」

『あははー、まさかー』

「字だから余計ムカつくな」

『さーQ7 口癖は?』

「よく蔵野に言われたな、くだんねー、だと」

『何故くだらない、じゃないんですか?』

「知るか! くだんねー」

『また言ってるねー』

「うっせ」

『さあ、Q8椎名さんの第一印象は?』

「あ? 椎名だぁ? 天然野郎」

『随分とストレートですねー、躊躇いもなく』

「そうなんだからしかたねぇだろ?」

『キャンプ場ではかなり振り回されてたみたいですけど?』

「ああ、ったく、あいつの所為で疲労が倍近くなった」

『それは大変でしたねー、さー最後のQ9! ぶっちゃけ好きな人はいますか?』

「いねぇし」

『僕に嘘は・・・通じません』

 それを聞いた零はクリップ君をギロリと睨む、それを見たクリップ君には汗の絵が描かれる。

「帰れなくなっても良いから破壊してやろうか?」

『いやー、やめて欲しいなー、あははー』

「で、最後ってことはこれで終わりか?」

『はいー、お疲れ様でした〜、暫くすると目が覚めると思うから〜じゃーねー』

 クリップ君がそう言うと次第にクリップボードの形が歪み溶け込むように白の世界に溶け込まれていった。

「2度と着たくねぇなこんなところ」

 零はため息をつきながら目を閉じた。




ばんがいへん、続くかも?

-13-
Copyright ©紙 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える