小説『くっだんねー!』
作者:()

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にじゅうよんわ―――嘘だろ!?




 夏の猛暑も徐々に和らぎ始め、空には秋独特の羊雲が優雅に漂っている、風も肌で感じられるほど涼しくなり学校の周りにある緑の木々も少しずつ己の葉を落としていく。

 零は屋上で何も考えず、流れる雲をただなんとなくボーっと見ている、特に悩むこともないしそれといって校内でやることも無い、かと言って机で寝ているとあちこちが鈍く痛む(特に腰)・・・と言うことで、最近は屋上でゴロリと寝転がりながら昼休みを過ごすことが多い。

 すると不意に屋上のドアが開く、零は誰が入ってこようがなんとも思わない、入ってきた人をみすらしなかった。

「零くーん」

 前言は撤回しよう、誰が入ってきたかは直ぐにわかったのだ。

「なんだ?」

「次のHRで転校生が来るそうです!」

「ふぅーん、まあ、どうでも良いけどな」

 零は何てこと無いように言葉を返す。

「その転入生なんですが・・・零君を探しているようなんです」

「はぁ? 俺を探してるって? 男か?」

 零は面倒くさいように起き上がると椎名のほうを向き、声をかけた、その転入生が男で自分を探しているのだとしたら・・・自分が壊滅させた中学の生徒で恨みをかっている奴かもしれない・・・。

「いえ、女の子です、すごい美人さんの」

「・・・? 女?」

 困惑の表情で零は首を傾げる、男ではなかったところにまあ、まずは安心した。だが、女など自分の中学校生活では触れてはいない、それどころか顔すら覚えていないような気がする。

「女・・・か、誰だ? それも美人って・・・」

「心当たり無いですか?」

 椎名から聞かれ少し記憶を探っては見るものの余り思い出したくない記憶ばかり、上辺だけ記憶をすくうと直ぐにやめた。

「わからん」

「じゃー、会ってみてくださいよ、それならわかるかもしれません」

「ええ〜、いいよ面倒くさい。HRで会うならそん時で良いだろうが」

 零は大きく欠伸をかくと静かに目を閉じてしまった。




――――HR。

「零くーんいつまで寝てるんですか? 起きてください〜!」

 椎名が零の黒髪を啄木鳥のように素早くつつく、だんだんそれが疎ましく思えてきた零は顔を上げ怒りの形相で椎名を睨む。

「うっぜーことすんじゃねーよ! ぶっ飛ばすぞ!」

「何処までですか?」

「そういう意味じゃねー!」

「じゃーどういう意味ですか?」

 逆に質問を返され零は声を詰まらせる、実際のところ零にもぶっ飛ばすという意味の解釈がよくわからないところがあるのだ。

 そうこうしているうちに先生が教室に入ってくる。

「えー、多くの人が知っているかもしれませんが、このクラスに編入生が来る頃になりました」

 先生が手招きすると教室のドアが開き1人の女の子が入ってきた。

 その女子生徒を見るや否やクラスメート全員は目を見張った。

 細身の体に長い手足、普段スカートは短くしてはいけないのだが、そうしなくても足が長く見えてしまうほどそのプロポーションは美しい、滴る黒蜜を思わせる長い黒髪、それに見合う小顔には見るものを魅了してしまう艶かしい大きな黒い瞳、水墨画のように綺麗な筆で描かれたような薄い眉、鼻はツンと高く少し薄い唇が軽く添えられている。

 誰が見ても、老若男女美しいといえる美貌と体形である。

 もちろんそんな美少女がこのクラスに来た時点で大半の男子が歓声の声をあげる、普段なら嫉妬で悪口を叩くはずの女子もここばかりは何も言えない様子だ。

「綺麗な人ですね〜、零君」

 椎名が少し辱めるように頬を染めながら零のほうを振り向いた、だが、零の表情は他の男子諸君とは違った、何と言うか喜びよりは驚きのほうが比率的に高いように思われる。

「嘘だろ!? なんでお前が!」

 零が急に席を立ちその美少女に指をさす、それを見た彼女は少しイジワルそうに歯を見せてニコリと笑う。

「ええ〜、自己紹介を」

 零の声を無視しながら先生は彼女に行った、彼女ははいと御しとやかにそう言うと口を開く。

「青柳 瑠奈(あおやなぎ るな)と言います、ルナと呼んでください」

 その口調も静かでどこか耳の奥に響く甘い誘惑、男子の目は既にハートマークに見える、零を除けば。

「青柳さん、朱雀君とは知り合いなんですか?」

 席に座っている1人の男子がルナに質問を投げかける。

 それを聞いたルナはチラリと零のことを見る、その視線に気が付いた零は首を横に振る。

 それを見たルナはクスリと笑うと口を開く。

「知り合いも何も・・・」

「おいルナ! それ以上言ったらぶっ殺す!」

 勃然とした表情で零はルナを睨む、それを見たルナはニコリと微笑む。

「知り合いも何も私は彼のことは何も知りません、朱雀君・・・でしたっけ? 誰と勘違いをしたんですか?」

 ルナがそう言うと零は不機嫌なまま席に座る、だが当然回りは零とルナとの間に何かがあると感じてとっている。

「零君、あの人ですよ零君を探してたのは」

「まさか・・・あいつだとはな」

 零は額に手を乗せながら蛍光灯を仰ぎ見ていた。

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