にじゅうななわ―――精神科医の間違いだわ
「おきなよゼロ! ほら早く!」
「あぁ? うっせーな、俺は眠いんだよもう少し眠らせろ」
零の部屋に侵入してきたのは、ルナである、昨日からの居候。
零は鬱陶しそうに目を細く開くとルナを睨んでそう言うと、また再び寝てしまった。
「起きないと・・・ゼロのベッドに入って・・・・・・食べちゃおうかな?」
耳元でルナは甘く囁いく、すると。
「っ!?」
ガバリと零は起き上がると全力でベッドの端っこへと緊急退避を図った。
「やぁーね、本当にすると思った?」
ルナはそんな零を見てくすくすと可愛らしく笑っている、頭が痛くなり始めた零は額に手を添えて。
「テメェならやりかねねぇ」
「そうね・・・・・・朝からしたいとは思わないかな?」
「な、何をだよ」
「知りたいの? わかってるくせに〜」
「〜〜〜〜っ!」
「さあさあ、そんな顔を真っ赤にしないで、朝ごはん出来てるから一緒に食べましょ、適当に食材使っちゃったけれど、いいわよね?」
「・・・・・・ああ、別にかまやしねぇよ」
朝から散々だ・・・零は内心嘆息するのだった。
準備も整え学校へ、教室にルナと共に入ると、周りの男子からは嫉妬と殺意の視線、馬鹿馬鹿しいと零はそれを流し目もとい殺し目で一蹴すると、席へとつく。
途端。
「文化祭です!」
椎名の大声が飛び、零の頭痛は激しさを増す。
「文化祭?」
「そうです文化祭です、知らないんですか零君」
「いや知ってるけどよ、だからなんだよ」
零は頬杖をつきながら椎名を睨んだ。
「零君は何がしたいですか?」
「別に何でもいいよ、んなくだんねー行事」
「そうですか、お化け屋敷ですね」
「椎名よぉ、テメェマジで耳鼻科言ったほうが良いんじゃねぇかって思うときがあるんだよな、鼓膜破れてんじゃねぇのか?」
「耳鼻科ってどんな出し物するんですかね」
「精神科医の間違いだったわ」
朝からこんな飛び出した奴と会話なんかしたくねぇんだよ、と零は頭を抱える。
「ゼロと椎名さんの会話、聞いてると面白い」
席の近いルナはそれを聞いて上品に笑っている、こっちは楽しくねぇんだけどなと零は付け加えておく。
「あ、そうですルナさん、ルナさんは文化祭何がしたいですか?」
「私? そうねぇ・・・私も何でも良いんだけど、零がお化け屋敷したいって言うなら、私もお化け屋敷にしようかしら?」
「おい待てコラ! 俺はお化け屋敷をやりてぇなんてひっと事も言ってねぇだろうが!」
「やっぱりお化け屋敷ですよね、私やって見たかったんです」
「保健室行きてぇ」
これは既に単なる頭痛じゃ済まないはずだ。
昼休み、零、椎名、柊、青谷、栗歌、ルナの六人が弁当を一緒に取っている、会話の話題は勿論椎名が常々言っている文化祭の出し物について。
「柊君は文化祭何がしたいですか?」
「僕? そうだな、やっぱり喫茶店とか」
「なるほどお化け屋敷ですか、青谷君は?」
「やきそばなんか売ったらいいんじゃねぇのか」
「なるほど、お化け屋敷で何かを売ると、栗歌さんは何が良いと思いますか?」
「私? そうだな・・・・・・クレープ屋なんてどう?」
「やっぱりお化け屋敷ですよね」
「まて椎名! テメェさっきからお化け屋敷以外のものが出てきてねぇだろうが! この意見調査の意味は何なんだよ!」
我慢の限界を超えた零は椎名を睨む。
「そうですか? 皆の意見を聞いてるだけですけど」
「さっきのお前の会話に誰の意見が入ってた!?」
「まあまあ零君、落ち着きなって、椎名さんは文化祭楽しみにしてるんだから、ね?」
栗歌が仲介に入り、零は渋々口を閉じる。
「はい、私文化祭凄く楽しみなんです、ずっと憧れてました」
「確かにねそうよね、中学校なんかだとそんなに大きな出し物できなかったし、私も楽しみかな、特にゼロがお化けに仮装するところとか、凄く見てみたいと思わない?」
「あ! わかるわかる! 零君が何やるか私結構気になるかも?」
ルナの意見に栗歌が賛同する。
「僕も、気にはなるかな」
「馬鹿面が目に浮かぶな」
「零君がお化けですか・・・・・・ぬるかべですね!」
「テメェらなぁ、勝手に人を評価するんじゃねぇ! あと椎名、テメェぬるかべってなんだよぬりかべだろうが!」
こうして昼休みは過ぎていく。
六時限目、LHRのため今回は文化祭でこのクラスの出し物についての話し合いが始まった。
候補は。
・やきそば
・クレープ
・お化け屋敷
の三つ。
そして意見がほとんど出尽くし、最後に多数決となった、表は一人一票。
「零君は何にするんですか?」
「別に、多そうなのに手を上げて終わりだよ」
「じゃあお化け屋敷ですね」
「・・・・・・くだんねー、そう言う事にしといてやるよ」
結果。
やきそば―――11人
クレープ―――12人
お化け屋敷―――13人
「多数決で、今年1−Aがやるのは、お化け屋敷に決定しました!」
教室内で小さいながら拍手が起きる。
「やりましたよ零君!お化け屋敷です!」
「あー、よかったな」
「零君のおかげです!」
「はぁ? 俺の? 別に、手を挙げただけだろ?」
「ありがとうございます!」
椎名が微笑んでそう言った、零は不本意ながらも。
「お、おう」
そう返事をするのだった。