小説『くっだんねー!』
作者:()

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よんわ―――ゼロがキャンプ! ねぇ〜?




「―――と言うわけですので、各自班をつくり、予定を立ててください」

 と、そんな声が聞こえた気がした、その直後ユッサユッサと体を揺さぶられ 零はうつ伏せになっている頭を上げる、目の前に椎名の顔があり内心ドキリとしたが、どうやら何か用があり起こした様子。

「何か用か?」

「聞いてないんですか? キャンプをするらしいですよ、来週の5月頃に」

「はぁ? キャンプだぁ?」

 肩眉をピンと上げ、不機嫌そうに零は言う。

「それで、班を組むことになったんですけど、とりあえず後ろにいる零君を確保しておこうと思いまして、あと男子2人に女子2人です」

「確保って、なんか捕まったみたいだな・・・他に目星は付いてるのか?」

「それがー、全然」

「やっぱな、まあー、女子はお前に任せるわ、俺は男を誘っとくから」

 そう言うと零は席を立ち前のほうへと移動する、前を向いたまましょんぼりと肩を落としている柊に零は声をかける。

「よお、柊」

「あ、朱雀君」

「お前誰かに誘われてっか?」

「え、いや・・・誰も・・・」

「そっか、なら、お前、椎名班な」

 それだけ言うと零は踵を返し、自分の席に戻る、柊は目を驚いたようにパチクリと瞬きをするが、彼は内心とても嬉しかった、今まで誰かに遊びに誘われたり、仲間に入れてもらったことなど一度も無かったのだから。

「あ、零君誰かもう誘ったんですか?」

「あ? ああ、柊ゲット」

 そう言いながら零はドカリと椅子に腰をかける。

「ええ!? 凄いですね、私なんてまだ誰にも声かけてませんよ」

 それを聞くと零はくだんね、と言いながら椎名に言った。

「別に誘う必要ないだろ? このクラスは男子18女子18、余りなんて出ないんだから、最後まで待ってりゃ、勝手に班なんて成立するさ」

「あ、ナルホド・・・でも、じゃあ何で柊君を誘ったんですか?」

「は?」

「だって、待ってれば勝手に班が成立するのに・・・何で誘ったんですか?」

「・・・・・・」

 確かに、言われて見ればそうである、別に柊とは友達でもなんでもない、ただ、2週間前に飯をおごって貰っただけの仲だ。

「べ、別に・・・ああ、あれだよ、あれ。飯を奢ってもらったお礼って奴だ、優しいだろ?」

「でも、それじゃあ、友達との親睦は深められませんね、やっぱり誰かを誘うことにします!」

(ぜってー、コイツ俺の話し聞いてないな?)

 席を立ち他の女子に話しかけ始めた椎名を見て零は握りこぶしに力を入れる、なぜかコイツと話すとムカムカするのは気のせいか?

(っつても、俺も他に誘うやつなんていないし、もういいか)

 零はそう思いながらまた机に突っ伏したのだった。




―――帰り道にて。

「え!? お、お前マジかよ!」

「うっせーな、マジだよ」

「ほー、お前がね〜、キャンプですか! 普段なら行事を全てさぁぼる、ゼロがキャンプ! ねぇ〜?」

 面白いものでも見るように蔵野は口の端を吊り上げ零を見つめる、零は苛立ちに震えながら、蔵野を睨む。

「おい、コラ! あんましつけーと、殴んぞ?」

「まま、落ち着けって、なんで行こうと思ったわけ? あれか、気になる子でも?」

「なわけねーだろーが、あれだよ、あれ、キャンプなんて早々行けるもんじゃないから・・・行っておこうか、とだな・・・聞いてるか?」

 先ほどから蔵野のにやけ顔、それもそうだ、中学の頃など一度も行事などと言うものに興味が無かった零が急にキャンプに行くことにした、そんなこと、転地がひっくり返ってもありえないと思っていた。明日は季節はずれの雪かな、など蔵野は心の奥でそう思った。

「聞いてるのかよ? おい!」

「聞いてる聞いてる、それより、キャンプ行くんなら、ダチが必要だろ? 出来たのか?」

「・・・いねーな、多分」

「そっかそっか、まあ、頑張りたまえよ、わが親友! 携帯で連絡してくれれば友達の作り方ぐらい教えてやらんでもないぞ?」

「うっせ! 山ん中だから圏外に決まってんだろうが!」

「おおこえ! んじゃ、俺はバイトですから・・・じゃーな」

「・・・おお、じゃーな」

 膨れっ面のまま零と蔵野は別々の道を曲がる、蔵野は欠伸をしたまま、後ろを振り返る。

(あいつが、多分なんて滅多につかわねーからな、こりゃ、何か起こるかもしれないぞ?)

 ともあれ、親友が少し楽しそうに学校のことを話していたことには、内心ホッとしていた、いつまでも友達が自分だけでは、厳しいであろうと思ったからだ。

「さーって、今日はどうやってさぁぼろうかな」

 腕を空高く伸ばして独り言を呟いた、空は夕暮れ、日は段々と沈みかける頃・・・。

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