小説『もしもの世界』
作者:餓鬼()

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ダンジョンに出てから何も無く順調に進んでると思っているとでも思ったか!

「はぁ!」

 俺の方は昔の様にキャラを操る事は出来なくてもそこそこの動きは出来るから良いのだが揺光の方は

「あれ、アーツが発動しない」

 操作とか色々教えたはずなのに分かっていなかった。

「だぁ、何でそうなるんだよ」

 俺は敵に最後の一撃を与えてから揺光に助太刀した。

「そらぁ」

 俺は走ってそのまま斬ってコンボをつなげ相手の周りに透明な円が回り始めた。

「レンゲキ」

 俺はそこでアーツでレンゲキを成功させて倒し終える。

「あーぁ、大丈夫か?」

 俺は半目になりながら睨んでくる揺光に声を掛けるが

 揺光は静かに呟く

「なんでアーツが出せないんだよ」

「お前がさっきの戦闘でアーツを使い過ぎてSTのゲージが無くなったんだよ」

 STとはHP(ヒットポイント)と同じでST(スキルポイント)が無くなるとアーツとスキルが発動できない。

「そう言えば真っ黒だな」

「その状態じゃアーツは使えないよ」

 そう言えば揺光の職業を言っていなかった揺光は今の俺と同じ双剣士だ。

「それにしてもアスノは初心者には見えないんだけどな」

 今までの動きを見てたらそうなるよな

「そうだ思い出したよ。昔、兄貴のアバターを勝手に借りたことがあったんだよ」

 俺は乾いた笑いをしながら嘘を吐く。

「まぁいいよ。アスノはゲームが好きだからあたしより慣れるのが速いんだな」

 なんとかそっちの方向で進められるよ。

「ゲームが好きなのは否定できないな」

 そう言って俺たちは欠片を集めるために宝箱を探す。

「そろそろ全部集まるな」

「この調子ならどんどん行けるな」

 なんだかんだで調子が乗ってきた揺光はテイションが高くなっていた。

「それにしてもここでPKに遭わなくてよかったな」

 俺が気の抜けた言葉を掛けたら

「ん? ここでも他のプレイヤーに会うことがあるのか?」

 オンラインゲームだから常識だろうが! と俺の心の叫びも空しく説明する。

「知っている通りこのゲームはたくさんの国の人がやってるだろ」

 そうだなと揺光が呟くが俺の説明は終わらない。

「そして、ダンジョン用のワードはたくさんあるがその選択によって他のプレイヤーがいたりするんだよ」

「それで、運が悪ければPK集団に会ったりするかもしれないってわけだ」

「なら、運がいいんだな」

 その返事はいいのか知らないが運がいいのは確かだが

「何だか嫌な感じがするんだよな」

 昔もいたんだよな放浪AIのPKが

 でもあれはR:1の話でここはR:2だから出会うことはない。

「後、一個探すぞ!」

 揺光は元気に声を出して歩き出した。

「はぁ、本当に運がいいのか?」

 俺はため息を吐きながら進んでいく。

 進んでいくと数人のアバターを発見した。

 隣の揺光が話しかけてくる。

「何でアイツら宝箱の前で立ち止まってるんだ」

「お前も予想が付くと思うけどPK集団だろ?」

 どう考えてもそれしか無いだろ。

 キャラの作りがそれポイからな。

「さて、どうするよ揺光さん」

 アイツらを倒さないと欠片は手に入らないだろう。

「逃げる用のアイテムはないのか」

 その言葉に気付いて俺はアイテム一覧を見てみると煙玉があった。

「あるぞ」

 それを聞いて揺光は何を思ったのかいきなり走り出した。

「お、おい待てよ」

 俺は走り出した揺光を追いかけたが

 揺光は他のアバターを避けながら宝箱の中身の欠片を持って

「今だ!」

 と声をかけた時に俺も気づいた。

 俺はアイテムの煙玉を使った。

「これで退却するぞ」

 揺光は俺の横を通ったのを確認して俺も走り出す。

 少し走った所で休憩した。

「はぁ、お前が走り出した時は驚いた」

 目の前で仁王立ちする揺光はとてもすがすがしい顔をしている。

「あたしの作戦勝ちだな」

 ドヤ顔をしてきたので

「今回逃げれたのはいいけどな」

 と言いかけたが

「それより早く獣神殿に行ってダンジョン終わらせるぞ」

 嫌な気がしてたまらない

 そんな事はなく獣神殿の中まで行く事が出来た。

「ふぅ、これで終わりか」

 奥まで行くと宝箱があり俺は

「これは揺光にやるよ」

 俺は揺光が宝箱を開けて取り出したのを見て

「よし、タウンに戻ろうか」

 俺達はゲートに近寄りタウンに転送された。

「操作にはなれたか」

 ダンジョンが終わり揺光に聞くと

「コツは大体掴んできた」

 それはそれは良かったよ。

「なら、この後はどうする?」

 揺光は少し悩んでから

「宿題終わってないから今日は落ちるよ」

「そうか」

 そう言って揺光はログアウトした。

「さて、俺はどうしようかな?」

 ドームの中で考えるのもあれだから外に出てみる。

「この景色を見ると本当に戻って来たって思うよ」

 懐かしいなこの景色、戻ってくるとは思わなかった。

 すると一人のアバターが話しかけてきた。

「君もしかして新人さん?」

 その台詞を聞いたらPKする人に思えるがこの人からはあまり感じない。

「新人だけど違うかな」

 その言葉に

「もしかしてR:1してたの」

 目を輝かしながら聞いてきた。

「そうですね」

 その後、散々昔の話をさせられて。

「そう言えば僕の名前はシラバスだよ」

 シラバス……どっかで聞いたことがあるな。

「思い出した、BBSではありがとうございました」

 俺は今日のことを思い出してお礼を言った。

「どうしたんだいいきなりお礼だなんて」

 いきなりのお礼で驚くと思ったが普通に話しかけてきたよ。

「それは今日、BBSでワードを教えてもらったんですよ」

 それを言ったら

「君だったんだ。そうだ、これも何かの縁だもう一人呼ぶからダンジョンに行こうよ」

 その場のノリでドームに向かうと。

「おーい、こっちだぞ!」

 と手を振る獣人がいた。

 シラバスはその獣人に

「一緒に行くアスノだよ」

 と紹介してくれた。

「オイラはガスパーよろしくアスノ」

 笑顔で挨拶されて

「よろしくガスパー」

 俺達三人はメンバーアドレスを交換して冒険に出ることになった。

「えっと、アスノは大体の操作は知ってるんだよね」

 シラバスの質問に

「R:1と一緒だったら大体は知ってるよ」

 その発言にガスパーが

「アスノはR:1やってたんだな」

「そうなんだよ、その時はそれが俺の楽しみで毎日が楽しかったよ」

「分かるぞの感覚、オイラも毎日が楽しいんだぞ」

 楽しく会話をしながら進んでるとシラバスが

「そうだ、アスノはギルドとかに興味ないかな」

 ギルド、少し興味があるんだよな

「ごめん、今は無理なんだよ」

 俺は両手を合わせて謝る。

「今は?」

 ガスパーは呑気な口調で言った。

「そうなんだよ今は一緒にやってる友達がアリーナのチャンピオンになりたいって言ってるんだよ」

 その発言にシラバスが

「アリーナに挑戦するんだ僕は応援するよ」

「オイラも応援するぞ」

 その言葉はとても嬉しい。

「ありがとな」

 お礼を言ったらシラバスが

「なら、僕らがレベルアップに使えるダンジョンをたくさん集めてあげるよ」

「いや、そこまでしなくても」

 俺は断ろうとしたら

「応援するんだからそれぐらいはしたいぞ」

 とガスパーも言ってくるので

「なら、お言葉に甘えるよ」

 二人は笑顔でにやけていた。

「だから、友人のお願いが終わったらシラバス達のギルドに入れてくれよ」

「なら、約束だよ」

「あぁ、約束だ」

 俺はここに来てあの時の様な仲間が出来て本当に楽しかった。

「今日はありがとな」

 冒険が終わり二人は落ちるらしいのでお別れをした。

「また、明日だぞ」

「そうだね、また明日」

 また明日か。

「あぁ、また明日な」

 俺はそう言って二人が落ちたのをみて。

「さて、俺も今日は止めようか」

 ログアウトして今日は寝ることにした。

-3-
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