小説『もしもの世界』
作者:餓鬼()

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 ドームから出ようとしたら一人のアバターに話しかけられた。

「何の用だ」

 俺は相手を疑うように聞くが

「おっと、そう疑わなくても取って食うような真似はしないって」

 その男は気軽に話しかけてきて俺は疑ったままだ。

 それにしてもこの男はどこかで会ったような気がする。

「話がしたいならここを出たいんだがいいか?」

 ここから出るように促がすと

「そうだな、それと個人チャットに切り替えてくれ」

 ここでは周りに聞かれたくない話の場合は相手の名前を選択したら秘密話モードに入る。

 俺たちはドームを出て少し歩いて人が余り通らない場所に来た。

「挨拶がまだだったな、俺はクーンだ」

 男はクーンと名乗り職業とかも教えてくれた。

「俺はアスノだ」

 と名乗ったが

「すまないがここまで一緒に来てくれないか」

 クーンにいきなりギルドのIDを渡された。

「八咫があんたと話したいらしい」

 それで俺に近づいた。

「それで何でお前が近づいたんだ」

 俺の疑いは深まるばかりだ

「俺とあんたはどこかで知り合っているみたいだからだとよ」

 俺はこんな男を知らないと思いながら見ていたら薄っすらとクーンの姿に一人のアバターの姿が重なった。

「お前、もしかしてジークか」

 クーンはその言葉に驚きながらも

「おいおい、何でそんな事が分かったんだよ」

 どうやら正解らしい

「もしかして」

 クーンが言う前に

「そうだな、R:1で会ったアスノだよ」

 そう言ったら

「お帰りって言えばいいか」

 そう言って拳を前に出してきた。

「あぁ、ただいま」

 そう言ってお互いに拳を叩く。

「それにしてもお前もここに帰ってきたんだな」

 路地から見える夕焼けを見ながらクーンは懐かしそうに呟く。

「お前は帰って来ないような気がしてたんだよな」

 その言葉はほとんど正解だった。

「当たりだよ。俺がここに帰ってきたのは偶然だよ」

 壁に背を預けて喋る。

「なら聞くがお前は新しくなった此処で何を求める」

 その言葉に少し考え

「そうだな、まずはアリーナへの挑戦だな」

「ほぉー、そんなのに関心がないお前が参加するなんてな女がらみか」

 冗談で聞いて来てるようだが

「そうだな当たってるぞ」

 その言葉を聞いてクーンは近づいて来て

「おい、それってお前の彼女か?」

 顔が目の前まで来ているのに気が付かないのかコイツ

 俺は顔を手で遠ざけながら

「ちげぇよクラスの友達だよ」

 その言葉を聞いて

「クラスの子か……いや、こいつの事だから―――」

 最初の方は聞こえていたがどんどん声が小さくなり声が聞こえなくなったと思ったが

「そんな事をやってる暇じゃなかったな」

 そう言って振り向き

「よし、俺について来てくれ」

 その言葉を聞いて俺はギルドの場所まで案内された。

「俺は先に行ってるからな」

 そう言って中に入って行くが

「八咫ってどんな奴なんだ」

 そんな疑問を抱きながらだが俺はギルドの中に入って行く。

 中に入るとクーンが立っていた。

「普通の部屋だな」

 中は普通の部屋にアイテムをしまうためのボックスが置かれているだけだった。

「八咫はこっちだ」

 クーンについていき階段を上がり隣の部屋に移動すると

「なんだよこれ」

 目の前にはたくさんのモニターが設置されている。

「まぁ、知識の蛇へようこそ」

 クーンが男のアバターの前でそう言った。

「知識の蛇?」

 俺には意味が分からない

 そう考えているうちにインドの民族衣装見たいのを着た男が話始めた

「アスノ、君に話があって来てもらった」

 この男が八咫だろうか。

「アンタが八咫なんだよな」

「私が八咫だが」

 男は静かに答える

「一言言って俺はアンタ見ないな怪しい奴にあうような事をしてないと思うんだが」

 と言ったが八咫の目線は俺の右腕にある腕輪にいった。

「その腕輪が何の意味を持っているか知っているのか」

 俺はその質問に

「コイツはこの中の誰よりも知っていると自負している」

 俺はこの腕輪を継承した人物を二人も見てきたんだからな

「やはり、君にも何らかの因子があるのか」

 因子?

「あんたらが何をしてるのか知らないが俺にはしないといけない事がある」

 俺は疑問を聞かずに今やるべきことがある。

「それは問題無い、君にはエリアの調査だけをしてもらう」

 調査?

「まずはこの映像を見てもらう」

 後ろのモニターに映ったのはモンスターに黒い泡みたいのが飛び出している映像だ。

「バグなのか」

 俺はそれを見ながら呟いたら

「AIDAと我々は読んでいる」

 AIDAか

「それともう一つ見てもらう」

 そう言って八咫が横に視線を逸らすと一人の女性PCが映像の切り替えの為にプログラムを弄っている。

「映像の準備できました」

「では、流してくれたまえ」

 俺はモニターに視線を向けると砂嵐で映像の画質が悪いが一人のPCがダンジョン攻略している映像だ。

「この映像に何があるんだ」

 俺が聞くと

「そのうち分かる」

 言われた通りに見ているとPCの目の前に蒼い炎を出しながらなにかが現れたがその姿は俺が知っている友達に似ている。

「か、カイト」

 そう、この新しくなったここではカイトが着ていた服は存在していない。

 それなのに俺が見ている映像には確かにカイトの服を着たナニかがいる。

 突然現れたソレは目の前のPCをPKした。

「アイツは何もんなんだ」

「我々もそれを探している」

 何も掴んでいないのか

「アスノ、君にはAIDAの捜索調査をしてもらいたい」

 この映像を見せておいてそんな事を言ってどうするんだ

「さっきの映像のPCには気を付けたまえ」

「ただのPKじゃないのか」

 映像を見てもそれだけしか分からない。

「このゲームをやって意識不明になる事件を知っているかい」

 その事件は昔にもあった事だ。

「もしかしてそいつや黒いのにPKされると意識不明になるのか」

 その答えは言わないが八咫は頷いた。

「我々は意識不明者を未帰還者と呼んでいる」

 未帰還者か、言葉的にはあってはいるが

「この件はCC社は関わっていないのか」

 昔の事件もそうだがこの世界で起こっている事件はなんだかんだでCC社が関わっている。

「その質問に答えてもしいのならばこの案件を引き受けてくれたまえ」

 この上から目線の喋り方、昔に居たよな

「受けるが俺にはやるべきことがあるがそれが先でもいいか」

「それを見越して君にはエリアの調査を回す」

「その時って一人でいいんだよな」

 その言葉に八咫は即答する。

「いや、AIDAがいたエリアにはパイとクーンを派遣する」

 パイって言うのは先ほどの女性PCでいいんだよな。

 俺は自己解決しながら話を聞く。

「2人とAIDAの情報回収にあたってもらう」

「分かった」

 そこで話が終わればいいが俺は

「それでも調査より違う方に力が入るがそれは構わないか」

「なに、その辺はすでに知っている」

 こいつに俺のプライバシーはどうなってるんだよ。

「話は終わりかね」

 俺はそれに頷き話が終わりクーンが近づいてくる。

「アスノ、これが俺のメンバーアドレスだ」

 クーンにメンバーアドレスを貰い俺のも渡し。

「まぁ、AIDAの相手をするのは大体俺かパイだから安心しろよ」

 俺の方を叩いて緊張をほぐしてくれた。

 俺の緊張がほぐれたのに女の一言により破壊される。

「足手まといにはならないでよ」

「それぐらいは分かっている」

 この二人より俺の方がレベルが下だからな。

「それと八咫様の依頼はきちんとこなしてもらうわよ」

 そう言ってメンバーアドレスを渡された。

「仕事以外は忙しいから意味はなわよ」

 誰があんたを普通に誘うかよ。

「俺は何時でも空いてるから誘っていいぜ」

「そん時はよろしく頼むぜ」

 クーンとは仲良くできるがパイとは馬が合わないようだ。

「さて、今日も少し約束があるから行くわ」

 そう言って俺はギルドを出てドームに向かう。

-5-
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