小説『もしもの世界』
作者:餓鬼()

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 今日はクーンに呼ばれてマクアヌのドームの中に居る。

「呼び出した本人が遅いってどうなってやがる」

 俺は呼び出した本人が遅いことにイライラしている。

 それより俺の目の前でクーンが

「それじゃ、俺はこれから行くところがあるから」

 そしてこちらに来て

「すまん、遅くなった」

 謝るゼロだよなこいつ

「でっ、どこに行くんだよヤローだけで」

 俺はわざとヤローの所を強調した。

「おいおい、どうしてそんなに不機嫌なんだよ……もしかしてお前もソッチだったのか!」

 クーンのフザケタ発言を聞いて

「チゲーヨ! 何でそうなるんだよ、お前が来るのが遅くてこっちはイライラしてるのにお前は優雅にナンパしてやってきてイライラしてるんだよ」

 俺は疲れ切って肩を垂らす。

「呼び出しの件は仕事だ来てくれ」

 俺はクーンのパーティーに入りダンジョンに転送される。

「ここにあの黒い泡があるのか?」

 入ってすぐに俺はクーンに聞く。

「そうだな、ここからは足で探すことになる」

「思ったんだけどよ、エリアを絞るのって誰がやってんだ」

 進みながら俺は初めての仕事で色々聞いておく必要がある。

「俺も余り解らないが八咫が探してると思うぞ」

 クーンも知らない?

「お前はアイツらに長く関わってないのか?」

「おっ、良い所突いてくるな。そうだな俺は前まではケストレルに居た」

 あの自由すぎてPK連中がいるギルドだったと記憶してるが

「なんだかんだ言ってこの世界でも色々あるんだよな」

 俺は昔の方が良かったと何度か思ったことがある。

「言うねぇ、お前もまだまだ素人だよここだと」

 クーンは意味ありがちな言葉を言う。

「分かってるよ、俺だってここだと素人だよ」

 昔がどれだけすごくても今が今だからな

「お前も覚悟決めとけよ」

 クーンはこの先に目標があるのが分かりそう呟く

「覚悟は決めてるよ此処に来た時からな」

 戻ってこないと思ってたからな

「そうか、でもよコレを見てもそれを言えるか」

 先に進むと黒い泡が浮かんでいる。

「ここからは俺の仕事だからな」

 クーンは前に一歩出て

「来い、俺のメイガース」

 一瞬ノイズが聞こえたと思ったら目の前には大きい黒い泡と第三相メイガスがそこにあった。

「これが一般PCと違う能力を持つものかよ」

 これで普通に戦えるとかどこのチートだよ。

 俺の目の前ではAIDAとメイガスの戦いが行われている。

「俺には何もできないのか」

 あの時と同じく普通に戦うことは出来ないのか

「俺は見ているだけしかできないのか」

 俺は自分の右手に付けられている腕輪を見る。

「俺は今までの奴の様にうまく使えないと思うだけどさ」

 俺は敵がひるんでるのを見て。

「俺は仲間一人だけに戦わせるような奴にはなりたくないんだ」

 俺はAIDAに向かって特攻する。

 それを見たクーンが

「なっ、何やってんだバカ!」

「俺はもう、独りで戦ってる奴を見たくないんだよ」

 俺は左手を右手首に構えるとそれに反応するように腕輪が反応する。

「データドレイン」

 右手の先から透明な砲弾が飛び出しAIDAに当たるとそのデータは無くなって消えた。

「終わった」

 目の前で起きたことに驚いた。

 データの書き換えではなくデータそのものを奪った。

「これが新しい力なのか」

 こいつは普通に使ってはならない。

 周りの空間はいつものダンジョンに戻った。

「俺が受け継いだのはチートの塊だったわけだ」

 俺は右手に付けられている腕輪を見て呆れながら呟く。

「おい、大丈夫か」

 心配で寄ってきたクーンに聞かれて

「ああ、俺の体には異常はないぜ」

「むちゃしずぎだぞ」

 クーンが怒鳴っているが

「近くで騒がないでくれ頭に響く」

 その言葉にクーンが

「おい、何言ってるんだ? ここはネットの世界だぞ音量は上げない限りは上がらないぞ」

 俺の体の調子がおかしいのか?

「待て、何でこんなに感覚がはっきりしてるんだ」

 まるでゲームをしているんじゃなくて自分自身がここに居るかのようだ。

「そんな事があるのか」

 俺は独りで自己解決した。

「なにか分かったのか」

 クーンに説明する。

「このゲームは俺達がM2Dを付けてやってるだろ」

 それに頷くクーン

「今の俺の感覚は自分自身がここに居る感覚なんだ」

「なら、現実のお前はどうなってるんだ」

 それが一番の疑問だ。

「俺にも分からない、できれば気を失っていればいい方か」

「おいおい、自分の体なのに冷静すぎるぞ」

「焦っていても何もできない、俺はここで色々な事を学んだこんなことで驚かないよ」

 だが、本当に現実の体が心配だが調べることや見る事が出来ない。

 その心配は杞憂に終わり感覚がもとに戻り始めた。

「数分だけ意識がこっちに持って来られるのか」

 俺が出した結論だった。

 腕輪の力を使うとAIDAをドレインする事が出来るがその時に現実の意識がこっちに引き寄せられる。こう考えると以上だが自分だけではこれ以上の推理は出来ない。

「八咫に報告に行こうぜ」

 俺はクーンにそう言ってこのダンジョンから脱出した。

 ドームに戻り自分の体に異常がないかを確かめる。

「何も無い」

 クーンが戻ってきたのを確認して

「さて、早い所いきますか」

 クーンがそう言ってドームを出ていく、俺もそれに続いて出ていく。

「思ったけどアスノはここに何の目的で復帰したんだ」

 ギルドの場所に行く途中、クーンに聞かれる。

「いや、深い理由はないけどアリーナに参加しようぜって言われてこの世界に復帰した」

 それを聞いて

「それがクラスの女の子か、その子はお前が以前もやってたって知ってるのか」

 俺はそれに首を横に振る。

「おいおい、何で言ってないんだ」

「昔の事を言ってもしょうがないだろ。誰も信じてくれないんだからよ」

 この世界を救ったなんて今となっては信じられない過去だ。

「俺はこの目で見たから信じれるが」

 そう見た者しか信じる事が出来る。

「お前は目の前で見たからな、見てない奴に信じろって言っても信じられない」

「なら、その話以外の事を話せばいいだろ」

 だけど俺は

「逃げてるのは分かるけど俺はあいつにこのゲームをやってたなんか言えないんだ」

「何でだ?」

「何でだろうなアイツには言いたくないんだよ」

 その言葉を聞いてクーンが

「その子はよっぽど大切に思ってるんだな」

 俺はその言葉を聞いて

「な、何言ってやがる! そんなんじゃねぇよ」

「もしかしてお前、自分が感じてる感情が分かってないのか?」

「幼なじみに以外に思った感情が無いな」

 それを聞いてクーンは呆れながら

「でたよ、もてる男は鈍感でこまるねぇー」

「鈍感以前に俺は持てないから」

 その間にギルドの場所に付きレイヴンのコードを使い中に入り知識の蛇の方に行く。

 入ると八咫に話しかけられた

「待っていた、アスノ」

 八咫はいつものように仁王立ちしている。

「待っていたってことは知ってるんだな」

 その言葉に八咫が

「君の意識が完全にこの世界にリンクしていた事かね」

 八咫は平然に当たり前のように言った。

「本当に君は我々と同じように特別の様だね」

「なら、あんたも詳しい事までは分からないんだな」

 俺はこいつなら何でも知っているように思えたがその認識を外しておくか

「私でも分からないことぐらいあるよ」

「そうですか」

 こいつの話し方はイライラする。

 話が終わり俺は知識の蛇から出る。

「あー何でアイツの話し方がイライラするんだよ」

 こうなったら適当にエリアに行って狩りまくる。

「俺が外に出てドームに向かったら」

「あっ、アスノ」

 呼び止められて後ろを向くと

「久しぶりだなシラバス」

 本当に久しぶりであった

「イヤー元気だった」

 シラバスは久しぶりにも関わらず交友的に話しかけてくれる。

「シラバス、アリーナには興味ないか?」

 俺はあと一人のメンバーを聞きたかったんだ。

「もしかして出るのかい」

 俺はその言葉に頷く。

「うーん、僕は見る方が専門だからごめんね」

 あっさり断られた

「いや、こっちも久しぶりに会って聞くことじゃなかったな」

「誘ってくれたのは嬉しいけど僕にはムリだから」

 さて、どうしようかな

「それならこれからダンジョンに行くんだけど一緒に行かないか?」

 そう言ったが

「アスノのジョブって錬金術だよね」

 どうしたんだ?

「どうしたんだ?」

 その言葉にシラバスは驚いた。

「もしかしてジョブエクステンド知らないのかい」

 何だそれ?

「詳しく教えてくれないか?」

「いいよ」

 俺の言葉に頷いて説明してくれるようだ

「今、クエスト屋にイベントクエストで出されているんだけどそれをクリアするともう一つ武器が使えるようになるんだよ」

 そうだったのか、知らなく使っていたがそんなイベントがあったんだな。

「最初のジョブエクステンドが単一クエストだから一緒に行けないんだ」

「そのクエストは何時でも行けるんじゃないんだな」

「限定クエストだから期間限定だよ」

 俺は考えて

「なら、クエスト屋にでも行ってくるよ」

「ありがとな、シラバス」

 お礼を言ってから俺はクエスト屋に走り出す。

-7-
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