小説『ソードアート・オンライン〜Another story〜』
作者:じーく()

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6話 SAO 正式チュートリアル




























「…………。」

リュウキは足元を見る。

違和感を感じた。

この世界で感じることが出来る一種の予知ともいえる彼の感覚。

「……くるッ。」

そう言った時!

「へ?何が…?」「ッ!!」



“キィィィィィン………。”


光が3人をつつみこんだ!











そして……。

次に見た景色は、はじまりの街中央部。

他の……プレイヤーもいた。

いや、強制転移でテレポートさせられて。

「………。」

「強制テレポート?」

キリトも勿論皆が驚いていた。

その場が混乱の渦につつまれるが……。

冷静にものを見ていたリュウキは……。

「始まりに過ぎない。」

そう呟く。

「なんだ?何がおきる?」

キリトは、そう聞く。

「……上……上を見てみろ。」

リュウキが指し示したのは空。

その空を見てみると……。


暫くしての事。





        System Announcement     WARNING





の文字が広がり……。

その境界線から血の様な赤い液体が滴り落ちる。

それは意思を持っているかのように一箇所へと集まって行き……。

最後にはフードで顔が見えない巨大な人間の姿へと変貌した。

「なんだ……ありゃ……?」

「…………。さしずめGMと言ったところか。」

見上げながらそう呟く。  

その場の人間全員が驚いていた。

驚くもの……怖がるもの……楽観視するものと、様々な反応だ。


その巨大な魔法使いのような姿の人間は両手を広げ……。





【プレイヤーの諸君……私の世界へそうこそ……】





話し出した。

キリトは……分らなかった。

「私の世界……?」

その言葉が……。

「……茅場。」

「えっ?」

キリトの疑問は直ぐに答えてくれた。

その巨人がだ。






【私の名前は茅場明彦……いまやこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。】






「!!」

キリトは自分が買っているナーヴギアについての本、そして、ゲーム界の新星と謳われている人物だとすぐに理解した。

場の人間の殆ども知っている存在だ。

そして……ここからが重要だ。





【プレイヤー諸君は……既にメインメニューからログアウトボタンが消滅している事に気づいていると思う……。しかし、これはゲームの不具合では無い……。繰り返す、不具合ではなく≪SAO≫本来の仕様である……。】






「…………何を考えている?お前は。」

リュウキは分らなかった。

確かに、あの時のメッセの時は、違和感を覚えた。

だが、こんな大それたことをするなど……その理由も皆目見当が付かないからだ。

次の言葉も……場をいっそうに混乱させることになる。


【諸君は自発的にログアウトする事は出来ない……。また、外部の人間の手によるナーヴギアの停止……あるいは、解除もありえない。もしそれが試みられた場合、ナーヴギアの信号阻止が発する高出力マイクロウェーブが諸君らの脳を破壊し、生命活動を停止させる。】


そう……。

ログアウトしようものなら……現実世界ででもログアウトするよう設定させられているとのことだった。

だが……暫く考えると皆は、やはり信じられない。

場を盛り上げる演出だろうと……。

だが、混乱するがゆえに……この場を立ち去りたいとも思うのだろう。

何組か立ち去ろうとしたが……。

この空間から出られないのだ。


「………ブロックしているな。この場……半径約100m……って所か。」


行動規制措置だ。

本来ならいけない場所だったり、システム的にそこを通るとゲーム不備が発生する地点に置かれているものだ。

「何言ってんだ?あのGM……頭おかしいんじゃねえか?なぁ?2人とも。」

クラインも信じていないようだった。

「できない事も無い。」

リュウキはそう答える。

「え?」

「信号阻止のマイクロウェーブは、いわば電子レンジと同じだ。リミッターを外せば脳を焼く事も……。」

キリトが答えた。

「……可能だ。間違いない。脳の水分を高速振動……摩擦で一瞬で焼ききれる。」

そう付け加えた。

「じゃ……じゃあよ?電源を切れば……。」

クラインがそう聞くが……。


「内蔵してるだろう?ナーヴギアの重さの三割はバッテリーセルだ。人間の脳を焼くくらい分けない。」

その言葉に……誰も返せない。

「でもよぉ!無茶苦茶だろうが!なんなんだよぉ!」

クラインは怒りそう訴える。

でも、まだ信じられない。

その時だ。




【……より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体のロック解除または分解または破壊の試み――以上の3点だ。これら、いずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。……ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴギアの強制解除を試みた例が少なからずあり、その結果】



茅場は……一呼吸置き…。




【――残念ながら、すでに213名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している。】







この言葉に場は絶句……

「213人も……?」

「信じねえ……オレは絶対に信じねえぞ!」

「………あの男は」

思い出せ……

アイツとの仕事を。

「こういった冗談はやらない。……本気だ。」

その言葉に驚きを隠せない。

「リュウキ……お前、茅場にあったことが……?」

キリトがそう聞くが……

その返事よりも早くに続きが来た。


【諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。】

そう言うと、ウインドウでWEBページを空に出した。





【ご覧の通り……現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ていることも含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴギアが強引に解除される危険はすでに低くなっていると言ってよかろう。今後、諸君の現実の体は、ナーヴギアを装着したまま二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護施設のもとに置かれるはずだ。この世界を作った上で、いきなり全プレイヤーがログアウトするような理不尽はしない。……諸君には、安心して……ゲーム攻略に励んでほしい。】






その言葉に……流石に黙って聞いていたキリトも周り同様叫んだ。


「ふざけるな!そんな状態でゲームをしろだと?これはもうゲームじゃないだろう!」

「そ……そーだ! ふざけんのもいい加減にしろ!さっさとおわれよ!どうせイベントなんかなんだろ!長すぎんだよ!!」

クラインもキリトに続いた。




「…………。」

リュウキだけが……。

唯一この空間で言葉を発せず状況を観察していた。

何の為に?

1つのことを思い出す。

燃え尽き症候群……。

以前に茅場に言った事だ。

世界を作った。

幼少からの夢だとも聞いた。

何に変えてでも実現してみせるとも……。

その姿勢には……執念にも感じたものが見えた。

画面越しであるのにも関わらずだ。


そして、茅場の声は再び響わたる。

まるで、その場の怒声を……逆なでするように冷やかで……

いや、穏やかで冷血な……。

性質の悪い悪魔の様なものだった。








【ここからも十分重要である為聞いてもらいたい。充分に留意してもらいたい点だ。諸君にとって、(ソードアート・オンライン)は、すでにただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ。……今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に】






ここから先の言葉。

「現実でも死ぬか。」

リュウキはそう続けた。

「「!!」」

キリトとクラインも……

リュウキの言葉を信じていないわけじゃないが……

どこかで、意識していたんだろう。

そう言う表情だった。

それに答えるように茅場は……。








【諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される……。】








そう答えていた。

「…………。」

視線の上に存在する緑色のバー。

そのHP……ヒットポイントは403/403.

これが文字通り命の数字となる……か。


「そんなの……信じられるか。馬鹿馬鹿しい……。」

キリトは拳を握り締めていた。

キリトの感情は最もだ。

そもそもオンラインでのゲームで死なない事の難しさは皆が知っていることだ。

簡単に攻略できるものなら、直ぐに全てを攻略され……

人々は……ユーザーは、はなれていくだろう。

そういったことにならないように……

運営はゲームバランスを考え、大型アップデート。難易度の高め等の措置をとる。

長きに渡ってゲームをプレイしてもらう為。

悪く言えば利益にする為に。

それがオンラインゲームと言うものだ。

そしてその後も続いた。






【諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べたとおり、アインクラッド最上部、第100層まで辿り着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。以前のテスターとは違い……誰か1人でも、倒すことが出来ればその瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう。】





 し……ん、と約1万人のプレイヤーが沈黙した。

一瞬だが……場が本当に静まり返ったのだ。

この城の頂までたどり着くという言葉の真意を……皆が理解したのだろう。

この城とは……。

僕たちを最下層に飲み込み、さらに頭上に99もの層を重ね空に浮かび続ける巨大な浮遊城。

【アインクラッド】を指していたのだ。


「クリア……第100層だとぉ!?」

クラインが……叫んだ。


「で、できるわきゃねぇだろうが!!ベータじゃろくに上がれなかったんだろうが!!」

クラインは……そう叫ぶ。

自分が知っているだけで、最大まで攻略できたと聞いているのが、

リュウキの16層。

自分が聞いてたのでは、2〜4層だった。

そして、キリトの8層がリュウキに続く。


βテスターの際は、そのフロアのBOSSを倒せば、上に誰もが上がれるのだが……。

誰もが挑戦したいと言う思いもあるだろうとのことで、倒したBOSSにも再戦できると言う仕様だった。

仮に凄腕プレイヤー達がいて、彼らがあっという間にBOSSを倒して自分は何も出来なかった。

気が付いたら攻略されていてた。テスターとして選ばれたのに味気ない。

と言うトラブルを回避する為のものだった。

全員が戦ってみて、そのデータを取るのにも効果的だとも判断していた。

そして、その代わり、初回のBOSS戦でLAした者には相応のものが送られる。

それは再戦では発生しない仕組みになっているのだ。

だからだ。

大部分が上がれないのだ。

リュウキが相当な腕前だったとしても……。

ソロでは限界がある。

それはキリトの言葉だが、誰しもが知っている。

勿論クラインも……。







【それでは、最後に諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え。】






 それを聞くと、自然の動作で、ほとんどのプレイヤーが右手の指二本揃えて真下に向けて振った。

当然だ。皆が茅場の説明に頭がいっぱいなのだ。

そして、誰かが開けば次に自分もと混乱してはいても、連鎖的に続いていった。

それにより、広場いっぱいに電子的な鈴の音のサウンドエフェクトが鳴り響く……。

そして出現したメインメニューから、アイテム欄のタブを叩くと、

……表示された所持品リストに1つだけアイテムがあった。

そのアイテムの名前は(手鏡)

皆が手に取ったが……。


「これは………。」

リュウキにとっては思いがけない事が起こる。

いや、起こってほしくなかった……が本音だろう。


突然、周りのアバターを白い光が包んだのだ。

それは時間にして数秒だったが……混乱させるには十分すぎる時間だった。

そして……光がやむと……。

「お前……誰だ?」

「いやおめーこそ?」

クラインとキリトがそう言い合う。

そして……

「?お前も誰だ?」

傍から聞けば滑稽な光景だが……。

当然訳はある。

姿かたちが変わっているのだ。

そう……


本当の姿に……。

持ってる手鏡を見て唖然とする。

「ッ!!」

周りには性別を偽ったり、若く見せたりしているものもいる。

更に場が混乱したがそれどころでは無い。

「ッッ!!」

今日一番……動揺した。

いや、一生で最もかもしれない。

自身の15年の……。


キリトとクラインは互いに状況を理解したようだ。

「お前が「キリトか!?」「クラインか!?」」

そう指をさしあって…。

「……………。」

リュウキはすぐに表情を元に戻す。

「お前が……リュウキか。」

「へ?いやいや、変わりすぎだろ?さっきまでオレ年上だって思ってたぜ?」

顔はまだ、あどけなさが残る少年。

目の前のキリトもそうだったが、それ以上の変貌だった。

鮮やかな銀髪。

それに、顔立ちも整っている。

美少年と言っても差し支えないだろう。

男にも女にも言い寄られそうだ。

「………よかった。」

自身のことを明らかにしなくて……

購入時から、様々な所を経由し、誰が購入したか分らなくして本当に良かったと今日ほど思ったことはない。

実を言うと… 彼はそこまでしていた。

それほど、晒したくないのだ。

だから心から安堵していた。

「何が?」

クラインがそう聞くが……。

「なんでもない……。」

そう返した

それよりも……。

「そうだ!それより何でこうなったんだ!?かってに!」

そのことだった。

「……スキャンだ。ナーヴギアは、高密度の信号素子で頭から顔全体をすっぽり覆っている。つまり、脳だけじゃなくて、顔の表面の形も精細に把握できる……。……考えてはいたことだが、まさか本当になるなんてな……。」

リュウキがそう説明した。

「で、でもよ。身長とか……体格はどうなんだよ」


クラインがそう聞いた。


「それなら、ナーヴギアの本体を買って装着した時にキャリブレーションで体を触っただろう?あれは装着者の体表感覚を再現するためのものだから、自分のリアルな体格をナーヴギア内にデータ化することができる筈だ。」

キリトが変わりに答えた。

「説明の手間が省けるな。キリトがいると。」

本当にそう思っていた。

「これくらい……知ってたさ。なんでもない。」

「オレはしらねえって!確かにそんなことしてたなーくらいでよ!」

どうやらクラインは、ゲームやる時は説明書読まないタイプらしいな。


「つまりはこう言う事…だろう。現実。あいつはさっきそう言った。これは現実だと。このポリゴンのアバターと数値化されたヒットポイントは、両方本物の体であり、命なんだと……な。……それを強制的に認識させるために、茅場は俺たちの現実そのままの顔と体を再現したんだ……。自身の姿で攻撃を受ければ、自分が傷ついている。……そう錯覚する。そして、自分の体が砕ければ?……刷り込みを行うのにもってこいと言うわけだ。」
リュウキは想像上ではあるが……恐らく間違いないとそう言う。

誰しも自分の姿で切り付けられたりしたら……?

HPゲージが消えたら?

これによって安易な行動は控えるようになるだろう。

「なんでだ!?そもそも、なんでこんなことを………!?」

「オレの回答が正しいとは限らないし、……アイツに聞くべきことだな。」

リュウキはクラインの言葉にそう返した。

まだ、巨大な茅場は健在なのだ。

その言葉に反応したのか……話を続けた。







【諸君は今、なぜ、と思っているだろう。なぜ、ソードアート・オンラインおよびナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか?……私の目的はすでに達せられている。この世界を創り出し、鑑賞するために私はソードアート・オンラインを作った…】






何に変えてでも作りたかったもの。

それを実現させ……そして その世界に自分自身のリアルを築きたかった……。

「そう言うところ……か。」

リュウキはそう解釈する。

茅場は作るのだけじゃ飽き足らず……その場所に本物の人間を連れてくることで更なるリアル感を求めた。

よりいっそう……自分の理想世界に近づける為に。






【……以上で≪ソードアート・オンライン≫正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る。】






最後の一言で、残響を引き消えた。その巨大なローブ姿が音もなく上昇……。

フードの先端から空を埋めるシステムメッセージに溶け込むように同化していくように消えてゆく……。肩・胸、そして両手と足が血の色をした天の水面に沈み、最後にひとつだけ波紋が広がった。


その波紋が消えると殆ど同時に……空一面に並ぶメッセージも現れた時と同じ様に唐突に消滅した。











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